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湖のほとりのチョコレートの街 - San Carlos de Bariloche, Argentina

チリのイミグレーションを過ぎてから、バスは森の中をぐんぐんと上がり、川や池を越えていく。

50分ほどしてようやくアルゼンチン側のイミグレーション・オフィスに到着する。こちらも小屋のような造りで、中には中国製の荷物検査機が置かれている。先ほど記入をした書類を手渡して「日本ですか」と軽やかにつぶやかれるほかは、スムーズにスタンプが押される。

やや乾いた砂山を通った後、レストランやアイスクリーム屋なども集まるVilla de Angosturaが見えてきて、バスは更に進んでいく。

再び緑が多くなっていき、右手に大きなナウエル・ウアピ湖が広がり、その向こうには氷河に削られた峰々が尖るカテドラル山が見え、湖は深い青から岸に近づくにつれエメラルドグリーンへと色の層を重ねていく。

辺りにはキャンプ場や洗練されたロッジがところどころにある。バリローチェはアルゼンチンの誇るリゾート地なのである。湖をぐるりと廻った向こう側の雪山のふもとに小さな街が見えてくる。

15時過ぎにはそのサン・カルロス・デ・バリローチェのターミナルに到着する。今回の最終目的地、南部パタゴニアのエル・チャルテンまで再びバスを乗り換える。

Marga社でチケットを購入し、バスの出発までほんの少し時間があったので、バスに乗って町の中心地へ行くことにする。

バスに乗っていると、カルフールやトヨタのディーラーが見えてくる。バスは坂の上を走っていて、教会や建物の後ろに深い青色をしたナウエル・ウアピ湖が見える。

街にはバリローチェの陶器屋や洒落た雑貨屋やマクドナルド、名物であるチョコレートの店も並んでいる。

先ほどターミナルでバスを待っていたときに話をしていた地元の男性に勧められたRapanuiというチョコレート店に入り、コニャックと胡桃のトリュフとアーモンドのホワイトチョコを買い求める。紫色のパッケージ袋に入れてもらったチョコレートをつまみながら、タクシーに乗って、ターミナルへと戻る。

バリローチェもパタゴニアの領域にはあるものの、バスは18時過ぎにより南に位置する南部パタゴニア、エル・チャルテンへと出発する。

チリでは当たり前のようにあったバスの大きなフットレストももうない。太陽がさんさんと降り注ぐ湖が右手に見える。  

やがて夕日が険しい山を赤く染め、そのうちに、山は暗く色を変えて空に赤い色をわずかに残すだけとなる。

夜の8時半を過ぎたころ、バス会社の男性たちが道端の小屋に立ち寄り、食料を詰めた段ボールをもって戻ってくる。それが夕食となる。

ぷよぷよとしたチーズパスタにリゾット、チーズ・エンパナーダ、卵にツナ、かぼちゃの天ぷら風にブルスケッタ、小麦粉をかためたようなものにオレンジのゼリーなどが各自に配られる。

夕食配布後10分ほどでバスの添乗員の男性は黙々とごみの回収を始め、回収が終わるとぱちりと車内の電気を消す。

ほとんどの乗客はまだ食べ終わっていないので、黙々と各自頭上のライトをつける。