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2012年05月

アスワンハイダムと、ルクソールまでの道 – High Dam / Aswan / Luxor, Egypt

朝は、暑いのと子どもたちがはしゃいで身体の上にのっかったので、目が覚める。目を開けてみれば、そこには女性の足の裏があった。

眠っていた間にパスポート返却のために呼び出されていたらしい。預けていたパスポートを受け取りに、オフィスへ向かう。

2段ベッドがしつらえてあるオフィスは涼しく、中に入ると職員が食事をしているところで、食べていきなさい、パスポートの手続きはそのあとで良いから、と言う。

パンにチーズ、それに豆を揚げたターメイヤをじゃがいもやにんじんと煮たもの、大根や人参のピクルス、フライドポテトなど、職員用だという食事をいただく。食堂車で売られている食事よりもずいぶんと贅沢な食事である。

その後エジプトの入国カードを記入して、誘われた別室に行く。すると、エチオピアのアディスアベバで取得しておいたビザの上に、入国スタンプが押される。

同じ船に乗っていた女性にいただいた西瓜をかじり、買い求めたりんごジュースを飲む。

フェリーは、巨大なアスワンハイダムに近付いた後、アスワンよりやや手前のハイ・ダムで停泊し、人々は下船していく。船から降りると、暑さが身体にこたえてくる。国境を超えて自由な国に入ろうとも、気温の高さは変わりがない。

行列のできる荷物検査は、先に先にと急ぐ人たちで混沌としている。身体検査のゲートに何人も入ろうとするものだから、余計に時間がかかるのである。それでも、わたしたちはどうぞどうぞと行列を飛ばすようになぜか手招きされ、どうにも緩い荷物検査を終えるのだった。

そこから、大きなハイ・ダム駅を通りぬけ、アスワン駅のある街の中心部までワゴン車に乗る。白い服を着た男性ばかりの乗るそのワゴン車では、運転手と乗客がどなりあっている。30分ほど渇いてごつごつとした岩山を窓の外に眺めていれば、アスワン駅の前に到着する。

駅の横にはツーリスト・インフォメーション・オフィスもある。旅行客対象のはずなのに探すのも一苦労する場所にあるスーダンのオフィスとは、違う。

辺りには建物が立ち並び、マクドナルドさえある。暑さに耐えかね、ジューススタンドに駆けこみ、さとうきびジュースをジョッキにぐびぐびとする。

このままルクソールまで向かうため、駅のチケット売り場に並ぶ。そこには混沌が待っていた。窓口には、並ぶことをしない人たちが手を伸ばし、声を張り上げる。後ろから押される人の力に耐えしのび、なんとか15時出発のルクソール行きチケットを手に入れる。

冷房がやや効いた快適な2等車に乗り込む。座席にはまだ空席もあり、ゆとりがある。

3時発の列車は、4時半を過ぎてようやくがたりと動き出した。ナイル川に沿うように列車は走っていく。川沿いには緑があり、畑も見られる。淡い水色やピンクに塗られた四角い家々のわきを、列車はけっこうなスピードで走っていく。

スーダンとエジプトは似た文化をもっているのだと、スーダン人は言った。それでも、エジプトの電車はスーダンと比べてすごいんだ、とその人は付け加えた。

やがてナイル川に真っ赤な夕日が沈んでいく。

21時前に、列車はルクソールの駅へと到着した。ルクソールの町は、夜も賑やかに、男性たちはカフェの前で水たばこを吸い、鼓笛隊が繰り出している。イルミネーションが街を包み、明るい月が浮かんでいる。

同じ宿に泊まっていた中国出身の男の子に連れられて、一緒に夕食を取りに行く。レストランに入って、ソーセージとレタス、トマトのはさまったサンドイッチと、ピリ辛のピクルスをオーダーする。サンドイッチには、ケチャップの袋さえついてきた。 ― 洗練されている。

宿への帰りがけ、ジューススタンドでさとうきびジュースをジョッキに入れてもらい、ごくごくとする。

スーダンとアスワンに比べれば、やや暑さがやわらかい。

アブ・シンベル神殿と、すきまなく眠る人々 – From Wadi Halfa to Aswan, Egypt

やがて日は暮れ、ぽつりぽつりとした明かりが両側に点々としている。船のちょっとしたスペースを見つけては、イスラム教徒の信者が絨毯を敷いて祈り始める。

22時を回ったころ、遠くのほうに赤く大きな岩がどっしりとしているのが見えてくる。アブ・シンベル神殿だ。

ライトアップされた神殿は、橙色に光を放ち、高さ20mもあるという4体のラメセス2世像は無言のうちに船のほうを見ている。

船は進み続け、やがて、その巨大な神殿は小さく姿を変えていく。暗闇の中で、神殿の辺りだけは、町の光が線を成している。

食事券を手に食堂部屋へと行く。ここには冷房がきちんと効いている。食事券を出すと、夕食が運ばれてきた。赤い豆の煮たもの、ピリ辛の瓜、ゆで卵にチーズ、パン、あんずのジャムである。食堂部屋は、23時を過ぎてもまだおしゃべりを楽しむ男性たちで賑わっている。

そして、甲板に戻ると、そこは眠る人で足の踏み場もないほどになっていた。人を踏むことのないようにおそるおそる足を進めて、甲板の角にようやく広いスペースを見つける。

風は涼しく申し分ない。マットを広げて、そのまま眠りにつくことにする。

スーダン(ハルツーム)各種申請、エジプトへのフェリーチケット

◎滞在登録(REGISTRATION) 
 場 所:”Aliens Affairs Department”(※金曜日休み。土曜日は窓口は開いている。)
 行き方:アラビバスターミナルからバス。
 (※所要30分、スーダン大学の近く。緑の大きな建物。地元の人はみんな知っているようです。)
 必要書類:パスポート、パスポートコピー(顔写真のページ)、顔写真2枚、
      ホテルに書いてもらった滞在証明書
      (※たいていのホテルは、書類を書けるようです。)、
      ホテルの従業員のID(パスポートでも可)のコピー1通
 費 用:SDG 198.00 + 印紙代 SDG 10.00 = SDG 208.00
 +窓口で申請用紙を記入。
 

◎旅行・撮影許可書(TRAVEL PERMISSION)
 場 所:MINISTRY OF TOURIST(※金曜日・土曜日は休み。)
 行き方:アラビバスターミナルから、MESHFER STREET(※現地では有名な通り)行き。
 必要書類:パスポートコピー、顔写真1枚
 +窓口で申請用紙を記入。無料。 
 
◎エジプトへの船のチケット
 場 所:NORTH KHARTOUM駅(カダロフ・アルバリ)。
 行き方:アラビバスターミナルから、NORTH KHARTOUM駅(カダロフ・アルバリ)行きのバス。
     降りて、すぐ右手のNORTH KHARTOUM RAILWAY STATION(黄色い建物)の1階。 
    (※建物はガランとしていて、窓口がポツンとある感じです。)
 費 用:2等 SDG 104.00、毎週水曜日 17時出航
 
◎カラマ行きのバスのチケット売り場
 会社名 Sajana
 アラビバスターミナルから、ミナ・アル・バリ・バスターミナルへ行く途中。
 ターミナルがあるわけではなく、1社が運行している。
 出発前には、ちょっとした茶店が出る。

◎エジプトへの船のチケットのやるべき手続き(ワディ・ハルファ)
 1.船会社Nile Navigation companyで出発当日に確認をもらう(チケットにスタンプを押してくれます)。
 2.イミグレーションで出国手続。(※SDP 20.50)
 3.ナイルホテルNile hotelの前から、バスに乗車。

スーダン-エジプト国境情報

スーダンのワディハルファから、エジプトのアスワンへ、船で入国するルートです。

1.ハルツームの北ハルツーム駅近くのチケットオフィスで、チケットを購入する。
  毎週 水曜日 17時発
2.出発までに、ワディハルファのチケットオフィスで確認をしてもらう。
  (※チケットにスタンプを押してもらいます。)
3.ワディハルファのイミグレーションオフィスで出国手続。パスポート・出国申請用紙を記入して提出。
4.ナイルホテル前から、港行きバスが出ているので、乗る。
5.バスを降りたところにあるオフィスで、パスポート・出国申請用紙を提出。回収される。
6.船まで行くバスが出ているので乗る。
7.客室はほぼ地元の人で埋まっているので、甲板の場所を確保。
8.到着までにパスポートが返却される。
 (※名前が呼ばれます。眠っていて気がつかないと、翌朝船員室に行く必要があります。)
9.港からすぐの鉄道駅のホームを歩いて抜けたところから、
  アスワン市内までのミニバスが出ているので、乗車する。

◎両替
 スーダンのワディハルファで両替ができます。
 イミグレーションオフィスの向かい側の建物。
 SDG 1.00 = EGP 1.05 で両替しました。

スーダンの出国 – Wadi Halfa, Sudan

朝にひょこりとテントから顔を出すと、宿の客たちはすでにホテルから出発しつつあるようすだ。

とにかく朝が早い。午前中は暑さがまだ柔らかなので、そのうちに行動をしたほうが良いのだ。

今日の午後、アスワン・ハイ・ダムによってつくられた人造湖、ナセル湖を北に進んでエジプト、アスワンに向かうフェリーに乗る。

フェリー会社のオフィスに立ち寄り、ハルツームで買ってきたチケットを差し出し、スタンプを押してもらう手続きをする。

国をまたぐフェリーということになるが、英語を話せる人はいない。「ぼくはイスラム教徒だから、アラビア語しか話せないよ。」と優しく笑いながら、係の男性は言う。

その後、町中にあるイミグレーション・オフィスに立ち寄る。そこで、昨日食堂で出くわした英語の達者なスーダン人の男性に再び遭遇する。イミグレーション・オフィスは人々でごったがえしていたものの、その男性の誘導で、出国税を支払い、オフィスの裏のほうから入って出国カードを受け取り、なにやらスタンプを押してもらって、あっさりと手続きが終了する。

近道を知るその男性についていけば、長蛇の列を横にさくさくと手続きが済んでしまう。

こうして一通りの手続きを終え、朝食を取りに、昨日と同じ食堂に入る。同じ宿に泊まっていたスーダン人の男性がそこで食事をしていた。

その男性はかつてスーダン軍で働いた後退職をし、現在は自身の会社を立ち上げているのだという。

幾度もエジプトには行ったことがあるが、いつもは飛行機で行くものだから、フェリーで行くのは初めてだという。2週間のエジプト旅行、新しいルートで行きたかったから、今回はフェリーで行くことにしたんだ、と、このスーダン人男性も珍しく流暢な英語で話す。

ドンゴラで知り合った男性も、また同じ時期にエジプト旅行を予定していた。スーダン人にとって、エジプトというのはメジャーな旅先のようである。

スーダンの主な食事の一つであるfuulは、さまざまな種類があるようで、今日のfuulは、豆に香草とオイルを合わせたものだった。それと共に、スーダンで一種類しかないのかと思えるほどの、いつもの平たいパンを合わせる。食堂のわきで女性が作っていたシャイをオーダーする。

用事を済ませた後に、いつもの平たいパン、にくるくる回る肉の塊を削いでピーマンやトマトなどと合わせたシュワルマをほおばる。両替も済ませ、大きな水のペットボトルも買いこむ。

Alneelホテルの前から、港に向かうバスが出ている。太陽の照りつける中、風が吹いて砂が舞い、頭から砂をかぶる。目を開けるのもやっとなくらいだ。

そこに、杉山幼稚園とでかでかと書かれたミニバスが、やってくる。杉山幼稚園は、ナイル川の港に向かって、ワディ・ハルファの町からまっすぐな道を進んでいく。

15分ほど走ると、イミグレーション・オフィスがある。パスポートやビザ情報など、ほとんど同じ項目を、3度も別の用紙に記入する。一枚は、出国カード、もうあと2枚は、おおざっぱに切られた白い用紙で、何のための用紙なのか知る由もない。それを左から右へと担当者をつなぎながら、渡していく。係員は、ときおり何かを探るかのようにこちらの顔をじっと覗き込む。数秒して、にこりと笑って、スーダンにまた来てください、と言う。

取得をしておいた旅行許可書と撮影許可書を提示することは、結局一度もなかった。

いつものように喉がからからに渇くので、売店でmirindaの炭酸オレンジジュースを買い求め、ぐびぐびとする。

イミグレーション・オフィスから、三菱のトラックの荷台に乗り込んで、船着き場に向けて乾いた道をさらに進んでいく。

フェリーは既にそこに停車をしている。入口で夕食のチケットを手渡されて乗船し、座っていた係員にパスポートを手渡す。すると、係員はパスポートを段ボール箱にひょいとほおりこみ、「明日返します」と言う。

船には1等と2等があり、わたしたちがチケットを購入したときには、既に1等はいっぱいで、2等のチケットを買い求めた。

1等は、冷房の効いた個室があてがわれる。
2等は冷房の効いた共同部屋で、男女分かれた大部屋がある。家族であれば一緒にいていいらしい。この共同部屋は、既にわたしたちがフェリーに乗ったときには混乱を極めていて、満席状態だった。

どこからともなく現れた男性が、こちらに来なさい、と言って、わたしたちを甲板の一角へと連れ出す。甲板が今夜の寝床になる。

出港予定時刻と聞いていた16時を過ぎても、まだ乗客が続々とトヨタの荷台に乗せられて到着してくる。ときどきアラビア語でアナウンスが流れるも、なんのことだかさっぱり分からない。18時を過ぎたころ、ようやくボボーと大きな音を立てて、船が陸から離れた。両わきには渇いた土地が続いていく。

船はほとんど揺れない。

周りには、カイロの大学で学ぶスーダン人の学生、スウェーデンに発つというスーダンの男の子、それに農業関連の貿易をしているというハルツーム在住の男性、リビアに仕事をしに行くスーダン夫婦、かつてハルツームで翻訳を勉強して今は二児の母となった女性などがいる。

女性の中には、ヌビア人ふうに、指先と足先や足の裏に黒い色を塗り、細かな模様を描いている人もいる。

スーダンとエジプトはかつて一つの国だったこともあり、言葉も食べものも似ているのだと言う人もいる。

もうフェリーはエジプトに入ってきているはずだ。