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Panama

パナマ―コロンビア国境情報

ボートでパナマからコロンビアのカルタヘナへ入国する国境情報です。

①ボートの船長にパスポートを預ける。
②船長がサンブラス諸島で、パナマの出国手続。
③船長がカルタヘナでコロンビアの入国手続。
(90日滞在の入国許可にしてもらうよう、船長に確認してください。)
④船長からパスポートを返してもらう。
(手続上、翌日に返してもらうことがあります。)

いるかとよたりよたり。 - Sailing to Colombia, Panama

夜中の2時から6時はわたしたちのシフトである。ふらふらと操縦席につき、4時間。

大きな波とともに、ボートは上へ下へとゆらりゆらりと進んでいく。帆がぎしぎしと音を立て、波はガタンゴトンと船底にあたりつづける。

眠気とたたかいながら、他の船が視界にないか確認をしながら、風の向きをみて、時折舵の向きを変える。

朝の6時にシフトを終えるころ、前方の東の空がほんのりと明るくなっていった。
同時に暗い海の色にもほんの少し明るい青色がさしこんでくる。

そして、あちらこちらに、いるかがぴょんぴょんと飛び出した。
多くのいるかがあちらこちらで頭を出し、円を描いて海面にまた潜る。2頭、3頭が横並びに泳いでいるものもいれば、縦に並んで次々と頭を出すものもいる。

そして、それでも、また眠りにつく、しかない。

16時過ぎによたりよたりとデッキに出る。風が強く、常時5ノット以上出ている。
用意されていたシーチキンとコーンをパンに乗せて口に入れる。

「あと10時間くらいでカルタヘナに着きます。」

18時ころ再びシフトにつくものの、30分ほど経ったころに船長が言う。
「ここからは運転が難しいから、わたしが代わります。もっと運転したいですか?大丈夫ですか?」

わたしたちがシフトで回している間は足を投げ出してそれを見ている船長も、一番大変なときに操縦をするのだ。

酔い止め薬を飲まなければ酔ってしまうこともあるという、がはがは笑う、大きなお腹の船長。

こうしてまた船長が操縦席につく。
デッキには操縦席の船長と、煙草をくゆらせているクラウディアとわたしたちしかいない。
暗い海をざぶりざぶりとボートは大きな曲線を描きながら、前へ前へと進んでいく。

揺れるノンストップ航海 - Coco Bandero Cays / Sailing to Colombia, Panama

夜中に雨がぱらりと降って船内の窓を閉めたものの、朝になれば目の前に白い砂浜の島と幾層にも青い色の重なる海が目の前に広がっていた。

船の後ろ側のテーブルで、スクランブルエッグやチーズとハム、トマトにパン、そしてコーヒーとパパイヤをいただく。

今朝もいつもの朝と同じように、タンクに水を入れて、砂糖とタマリンドの塊を入れてかき混ぜ、ライムを切って絞ったものを入れる。それから海水に塩をのぞいて凍らせておいたものを入れて、ドリンクとする。

クラウディアがいつものようにボートの前に移動して錨を見ながら、手で合図をして船長とそれを巻き上げる。

「これから、コロンビアのカルタヘナに向けて40時間のノンストップ航海を始めます。」

白にオレンジ色のふちのついた大きな帆がバサリバサリと音を立てながら二つ立てられた。

小さな砂の島が徐々に遠く小さく消えて行き、次第に海は深い青色へと色を変えていく。

決められたシフト制で操縦席に座り、監視をする。
時折別の船が視界に見えると、船長を呼びに行き、指示を仰ぐ。

操縦席には深度や風向き、速度、航海時間などを表示するメーターがあり、その下にエンジン機器が並んでいる。シフト担当者は風の向きを表示する数字を見て、舵の角度を変えるボタンを「+1」を押してみたり「-1」と押したりする。

速度はおよそ5ノットで進むが、あまりに遅くなったときには風だけに頼らずエンジンをかけて進む。

お昼には、じゃがいもや卵にバジルをかけたもの、夜にはそれは美味しいローストチキンがふるまわれるが、そのころにはボートはどこかをつかまらなければ席を立てないほどになっていて、食事をするのもままならない。

それぞれが酔い止め薬がきれる時間を気にかけ、キャビンから外へ出るのも、キャビンへ入っていくのも大変な状態だ。

外の風に吹かれたり、操縦席にいて水平線を見ているとまだ気持ちは楽だが、キャビンの部屋の戻ろうとすると、ヨタヨタとして途端に酔ってしまう。ベッドになだれ込むようにたどり着き、ぴょんぴょんと動くものとともに、とりあえず眠ってみる。

というより、眠るしか、ない。

船底が波にあたり、下から突き上げるようにガタンゴトンと爆音をたてる。
こわれるんじゃないかと思うほどだ。

星になった犬 - San Blas / Isla de Perro / Coco Bandero Cays, Panama

朝からフランク船長がクレープを焼いてくれている。チーズやハム、トマトをのせたり、バターやジャム、クリームチーズをたっぷりと塗って、口に入れる。グレープフルーツが並べられ、みなナイフとフォークを器用に使って、種と皮をとっていく。

10時には30分ほど先へのペロ島へと向かう。海底が砂浜の部分は海がエメラルドグリーン色にそまり、輪を描いて濃い藍色へとつながっていく。

犬の島という名のペロ島は一つの商店と、サトウキビの茎を並べてできた家が佇んでいるだけの島である。1家族がココナッツの管理をするために住んでいる。

近くにはかつての大型船が1950年代に沈んだ沈没船があり、さびれた先の部分だけが海の上に出ている。船体は沈み込み、海藻がついている。船体の半分ほどは原型をとどめていない。黄色や赤と茶色の格子、輝く青色の魚などがそのヨットのまわりに住み着いている。

昼はフルーツの入ったパスタにパンだ。食事をしていると、この辺りでは一番質の高い色鮮やかなモラを作るというクナ族であり、ゲイでもあるというVenencioさんが仲間と緑の木のボートに乗って、モラを売りにきた。プラスチックの容器に一枚ずつ重ねていた布を一枚ずつ取り出して広げて見せて、また一枚ずつ戻す。

その後、また2時間ほどボートは走りCoco Bandero Caysへと向かう。航海中は船長も眠ったり、食事をつくったりしなければならない。その間は乗船者一人一人がもちまわりで運転席に着いて、監視をする。他の船が地平線の内側に来て視界に入っているということはおよそ7マイル以内にいるということで、20分以内に接近すると考えられるので注意をしなければならないのだという。

このCoco Bandero CaysにあるOrduptarboatの小さな島には名前もついていない。5本のヤシの木が生えているだけだ。周りにもヤシの木がぴょこぴょこと生えているだけの島が点々としている。

そこまでシュノーケリングで泳いでいく。水面に広がる珊瑚の周りに魚が集まっている。そこに突然砂が集まり盛りがっているのが、そのまま島になっている。

サッカーをしたり、椰子の実を木でつついて落としたりする。その椰子の実をそれぞれヨットへ持ち帰る。

夕ご飯はミートソーススパゲティをいただく。ジューシーな肉の旨みがつまったミートソースだった。持ち帰ったココナッツに穴をあけて、それを用いたCoco Locoに似たココロコ・スペシャルカクテルを船長がふるまってくれる。船長は、Romeo y Julietaのシガーをくゆらせる。

この辺りには他のボートが停まっておらず、夜はただ月と星だけになる。月がまだ上がる前には辺り一面多くの星が瞬く。

このボートの名前になっているCleoは、かつて船長が15年生活を共にした犬の名前である。父親の名前をシーザーといい、クレオパトラの名前にちなんでCleoと名付けたのだという。スペインで亡くなった後、ドイツの親のお墓とともに埋葬したのだという。

みな、誰でも死ぬんだ。でも、また生き返る。Cleoは星になって、見てくれていると思うよ。

大きな身体をして、日に焼けた赤い顔の船長は、そう言った。

船長と奥さん - San Blas / El Porvenir / West Lemmon Cays, Panama

朝起きてみるとボートは既に静かにサン・ブラス諸島のポルベニール島近くに停泊していた。幾隻かのボートもとまっており、日差しを浴びている。

朝ご飯は2種類のハムにチーズ、オリーブオイルとバジルのかかったトマト、スクランブルエッグにパン、コーヒーが並べられている。

食事を終えて船長とともに、ゴムボートに乗りかえて、ポルベニール島へと行く。スペイン語でのポルベニール島は、クナ語ではGaigirgordup島と呼ばれており、イミグレーション、クナ国博物館、小さなホテル、再建設中の小さな空港があるだけの小さな島である。

パナマのポルトベーロで船に乗る前に、パスポートはフランク船長に渡している。船長がみなのパスポートを持ち、このポルベニール島で代表としてパナマのイミグレーションオフィスに行くのである。

あるときは10分で終わるが、あるときは1時間ほどかかることがあるという。
船長が1時間程イミグレーションでねばっている間、わたしたちは島を廻る。

Cabana’s Nan Gabayaiと名付けられた、数部屋にベッドが置かれている建物は、ひっそりとしていて管理者もおらず、人気のない部屋には、部屋の鍵さえ置かれていた。

外の椅子に腰かけていた男性は、ここで月の半分仕事をし、残りの半分は別の島で仕事をしているという。外でイワシの鱗を削いでいる男性がいる。商店が一つあり、ビールは本島の約2倍、1瓶1.5ドルで販売されている。再建設中の空港の片隅では、男性5人が身を寄せ合い、真剣に話し合いを行っている。小さな宿であるエル・ポルベニールの前には家族が商売気もなく、おしゃべりをしながらクナ族のグッズを販売している。

島には他に船を待つフランス人2人のバックパッカーがいた。
1時間の手続きを終えた船長は、イミグレーションの人々にフランス人2人を乗せて行ってあげられないか、と頼まれたという。良い人たちだと、いうのである。

船長は、断った。フランク船長は、通常船のチャーター客しか乗せず、今回のようにバックパッカーを乗せるというのは珍しいのだという。途中から見ず知らずのバックパッカーを乗せて船を汚されたらたまらない、そう言って、断った。船長にとってのCleo’s Angelは、彼の家そのものなのだ。

ゴムボートに乗ってCleo’s Angelに戻り、ゴムボートを力いっぱいCleo’s Angelに巻き上げる。

40分程走ったところにあるWest Lemmon Caysのエレファント島の近くへと移動する。上から見るとゾウの形をしているから、この名前がつけられたのだという。島の周りには茶色や緑色の海草があり、それが水の色へ浮かびあがり、海は茶色や水色、その奥の深い紺色へと層になって色を変えていく。海岸に沿って一周する。

それぞれにシュノーケリングをする。
黄色や水色の魚が珊瑚礁や海草の間を泳いでいる。
黄色く大きなヒトデが、海底にところどころついている。 
マイケルはマンタを見たと目を見開いた。

お昼ご飯はキノコや野菜のチーズリゾット。手作りのパンも香ばしい。食べ終わった後は真水で洗う銀のカトラリーはそのままキッチンへと運び、磁器の器は一度塩水でざっと洗ってから、キッチンへ運んで洗う。       

その後、日差しを浴びながら、トランポリンの上で、眠る。

夜ご飯はフランク船長が、さきほど木のボートに乗った人々から買ったおおぶりの蛸と船長とクラウディアがボートで買いに行ったロブスターを使ってパエリアを作るという。生きた蛸とロブスターをさばく。冷蔵庫もミキサーも、レンジも、スパイスも揃っているキッチンで、汗をかきかき、手慣れた調子で作ってくれる。

船長はかつてスペインなどヨーロッパ各地でいくつかのレストランを経営していたのだという。奥さんであるクラウディアとは、以前互いが別のパートナーと結婚をしていた際に子どものサッカーの試合を観に行っていた時に知り合ったのだという。

その後、フランク船長はスペインと行き来し、ドイツに戻ったときにEメールで「朝食でもどうですか」と誘ったのだという。そのうちにクラウディアさんから、また食事をしましょうと続く誘いがあり、結婚をして9年もの間こうして船暮しをしているのだという。かつてエンジニアリングを勉強していたフランク船長は、80万ドル、南アフリカ製のこのボートに乗って11年になる。クライアントはたいていドイツ語を話すヨーロッパ人だという。

船長は、その太い指を使って、パエリアを作ってくれた。ぷりぷりとした蛸と、身がたっぷりのロブスター、じっくりと味がしみこんだライスに、きゅっとライムを絞ったものだ。

食卓ではたいてい船長がドイツ語で話をするので、スティーブンとわたしたちはきょとんとそれを聞いている。音響システムが優れていると自負するパイオニアのスピーカーから、iTunesに入れた音楽を流していく。

月が今日も海を照らし始め、近くに浮かぶ数隻の船の中から灯りが漏れ出て、笑い声が聞こえてくる。

トランポリンに横になり、月を眺め、星を見上げる。