Top > ブログ

キリマンジャロ山ふもとの街へバスで行く – Dar es Salaam / Moshi, Tanzania

冷房ががんがんと効いた船内は、最初快適だったものの、やがて寒さで目が覚めるようになっていく。時折波にのって大きく揺れる。

ダル・エス・サラームに「5時に必ず到着する」と聞いていたフェリーは、6時ころに港へと戻ってきた。そんなわけで、6時15分発モシ行きのバスチケットを予約していたものだから、タクシーをつかまえてターミナルへと向かう。

タクシー運転手のおじさんは、かつて東アフリカを中心に各国をトラックで走っていた。夜にトラックを走らせていれば、ワゴン車に乗った若者の男性が、銃でタイヤをパンクさせ、テレビなど積んであった貨物を半分ほど盗んでいったという。だから、おじさんは夜は極力走らないようにした。一番きれいな国は、ザンビアだった、と言う。ダル・エス・サラームに自分のタクシー会社を持って17年、おじさんは幸せそうだ。

バスの予約はMtei Express社で取ったものの、ターミナルに停車していたのはキリマンジャロ・エクスプレス社であった。Mtei社の職員が、「このバスでウブンゴ・バスターミナルに行っていただき、そこでバスを乗り換えていただければ良いので問題ありません」と言う。

朝の街は既に活気が出てきていた。「園児募集」と大きく日本語で赤くうたうバス、「米パラダイス」と書かれた車も走る。イスラム帽をかぶった人々や子どもたちがバスを待っている。

ターミナルまで約20分、到着すればMtei社の職員がまた言う。「弊社のバスは、今朝故障してしまったので、メトロ・エクスプレス社のバスに乗ってください。」

結局Mtei社で予約をしながら、一度もそのバスに乗ることはなかった。

メトロ社のバスは、しっかりとした座席にややクッションもあり、リクライニングもできる、中国製宇通客車のバスである。バスターミナルに停車しているバスもたいていこうした大型のバスだ。

窓を開けていれば、パイナップルや焼とうもろこし、クッキー、ナッツ、ペットボトル飲料、果ては木の櫛やしゃもじ、籠バック、椅子まで、手いっぱいに抱えた人々が窓の外からわいわいと寄せてくる。

田んぼや畑が広がり、人々が鍬でそれを耕している。頭に物を乗せて運んでいる人もいる。

警察がこちらのバスを撮影してくる。

オレンジを入れて長細くした網を、お決まりかのように男性たちが運んでくる。一面に、ぴんぴんとした葉を上に向けたパイナップル畑が広がり、やしの木がはえている。

窓の外から買った、牛肉に玉ねぎのつまったサモサや揚げパンをほおばりながら、進む。車内には、マイケル・ジャクソンはじめ、ノリノリ欧米音楽がかけられている。

木の棒をはりめぐらせ、土で固めてトタンか藁ぶきの屋根をかぶせた家々が点在している。
牛がのそのそと歩いている。炭が袋に詰められて、道ばたに置かれている。

コカコーラ社のラックに入った瓶を添乗員が運んでくる。好きなものを選んでください、無料です。ラックには、コカコーラやペプシ、Spar-lettaなどが入っている。Spar-lettaを選ぶ。コカコーラ社の看板はこの国でもあちらこちらに見られる。

途中停車したターミナルも真新しい。ガラスケースに入れられたハンバーガーと卵揚げを買い求める。ハンバーガーには、ひき肉にトマトやピーマン、玉ねぎがふんわりとしたパンにはさまれ、ケチャップのような優しい味のトマトソースとマヨネーズをかけている。卵揚げは、卵のまわりに肉を巻き、揚げられたものだ。

線路を越えながら、進んでいく。大雨期にあたる今、先ほどまで晴れていた空が急に曇り、雨が降りはじめたかと思えば、また雨が止む。

「小川の湯」のバンが通り過ぎる。青い制服の子どもたちがこちらに手をふる。傘をさしている人は、いない。

大きな木の下で、火を焚いて料理をしている女性たちがいる。

16時半ころ、キリマンジャロ山のふもとにある街、モシに到着する。バスターミナルにいた警察の制服を着た女性が、困ったことがあったら連絡をください、付近で声をかけてくる人には注意してください、鞄を渡してはいけません、と言って、電話番号とメールアドレスのメモをくれる。

この街からキリマンジャロに登る人も多く、街を歩けば、あちらこちらから声がかかる。

キリマンジャロ登山のツアー会社の経営者とそこに勤めるガイドが、ぴたりとついてくる。話をしながら、宿を探しに歩く。

キリマンジャロ登山は、政府が環境保護のために登山者の数を減らそうとして、3年ほど前に値上げをしたんだ。それで、登山料金パックが700ドルくらいから900ドルくらいまで値上がったんだよ。

長年ツアー会社をやってきて、亡くなったのはイタリア人一人、石が当たって転がり落ちて亡くなったという。高山病で亡くなった人は今まで一人もいないよ。登頂率は80%、無理だとガイドが判断した人は下山をしてもらうんだ。

ローシーズンだから、こうやって一緒に街を歩くことができるんだよ、と言いながら、わたしたちの宿探しを手伝ってくれる。

ここから、宿には必ず蚊帳がつくようになる。サイズがあっていなかったり、蚊帳に穴があいていることも少なくないので、蚊取り線香を同時に焚いたりする。

モシの街はとっぷりと日が暮れると、道を歩く人があまりない。宿の近くで勧められたThe Taj Mahalで夕食をいただくことにする。

ココナッツライスにエチオピアほうれん草の炒めもの、牛肉のトマト煮、にんじんとグリーンピースの煮込み、それに豆のマハラグウェが一つの皿にのっている。イスラム教の影響が強く、ここでもやはりアルコール飲料はないので、代わりにStoney Tangawizaをオーダーする。風合いのあるガラス瓶に入ったジンジャー飲料は、きりりとして良い。