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澄んだ海にパステルカラーの家々、ギリシャ料理にビール – Meis Island, Greece

フェリーはいかにものんびりとした雰囲気で、時には赤ちゃんが脚でフェリーを操縦する。途中で船にギリシャの国旗を掲げて50分ほど進めば、ギリシャ領メイス島が近づいてくる。岸にはパステルカラーの四角い家がちょこりちょこりと並んでいる。

フェリーが到着すると、似つかわしくない迷彩服の軍人が銃をもって港にいる。船からは果物や野菜などが積み下ろされる。

そこから小さなボートに乗りついで、島の裏側にある青の洞窟に向かう。イタリアだけではなく、この小さな島にも青の洞窟が存在するのだという。ボートはぴょんぴょんと飛び跳ねながら勢いよく進んでいく。一緒に乗り込んだ赤ちゃんもぐったりとしている。

洞窟の入り口はとても狭い。水面が高いときにはボートが入れず泳いで入るときもあるくらいだ。今日もボートの床に寝ころがるように船長から指示がある。乗客一同ごろりと横になると、目の上すぐを岩肌が通っていく。「どこにも手を触れないでください」という合図とともに、船長はボートに勢いをつけてぐっと洞穴の中へと入る。

思わずつぶった目をそろりと開けてみると、頭上の岩に青い海を反射した光が映し出されていた。すくっと起きあがると、海は穴の向こうから差し込む明かりによって、深い青色に輝いていた。

今日は洞窟の中は潮が高くて泳げないというので、船長はその後すぐそばのセント・ジョージ島へと連れて行ってくれる。真っ白な教会がぽつりとたたずみ、ギリシャの国旗がたっているばかりの島だ。

島の周辺は、エメラルドグリーンから徐々に深い青色へと変わっていく。波はほとんどなく、海に入ると足の先やその下の海の底まで見ることができる。すいすいと泳いでいくと、藻が徐々に増え、足はすぐにつかなくなり、深みを増していくのが分かる。

1時間半ほどで船長が迎えに来て、メイス島へと戻る。小さなその島の海沿いにはいくつかの洒落たレストランが並んでいる。そのうちの一軒のレストラン、To Paragadiに入り、ギリシャふうムサカとフィッシュ・アンド・チップスをオーダーする。

ムサカは、トルコの煮汁に浸されたそれとは違って、なすやひき肉、じゃがいもやチーズ、ホワイトソースを重ねてオーブンで焼いたものだ。フィッシュ・アンド・チップスの皿にはトマトやきゅうりものっていて、添えてあったレモンをぎゅっと絞っていただく。スライスされたパンがバスケットに盛られ、久しぶりにオリーブオイルにつけて口に放り込む。どちらも、シンプルな味付けで素材の味が生かされている。

島に並ぶ家々は、クリーム色や薄いピンク、水色といった淡い色の壁面に、赤い扉や緑の窓が色を加えている。合間に咲く桃色や白の鮮やかな花がいっそう街を明るくする中、歩いて丘の上にある城の跡と教会を見に行く。猫がするりと歩いていく。

城の上からは、海の色が幾重にも重なり合い、小さな島がぽつりぽつりと点在している。その間をボートが行き交い、ウミガメがのっそりと泳いでいく。

この島の地面にも青い目のお守り、ナザール・ボンジュウが埋められている。その上を飛び跳ねるように歩いて、海沿いの時計のついた教会へと向かう。教会から鳴る鐘が町に響き渡る。

日帰りフェリーの帰りの便は16時発。その時間が近づいてくると、徐々に町は静かになっていく。それでも海岸のカフェのテラス席でビールを飲む人々はいて、それに倣ってRemezzoというカフェバーでアルファビールを買い求め、飲み歩きながらフェリー乗り場へと向かう。イスラム国ではなかなかこうはいかない。ビールは味がしっかりとしている。

こうして、つかの間のギリシャの小島訪問は終わりを告げる。澄んだ海にパステルカラーの家々、ギリシャ料理にビール。ギリシャという国の今を見るには、この小島の時間はあまりにのどかなふうに過ぎていった。