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トルコのトラブゾンでとるイランビザ – Trabzon / Border with Georgia, Turkey

朝に目を覚ますと、左手の黒海に朝日が反射している。

しばらくすると、サービスエリアに停まり、休憩に入る。トルコ長距離バスの休憩時間はなかなかに長い、そして乗客ほとんどが降りる。深夜だろうが、早朝だろうが、ほとんどが降りて休憩をしにいく。その間にきれいなバスが更に洗浄されたりする。

乗客みなさんがお戻りになれば、今度はお水のサービス。トルコのバスは南米並みに快適なのだ。

黒海に沿うようにバスは進んでいく。海岸にはベンチが並び、町が見えてくる。船を漕ぐ人がいる。黒海という名前から想像していたのとは違って、きれいに青く澄んだ海だ。

そのうちにビスケットとコーヒーが配られる。トラブゾンに近づくころには、出発時に満席だったバスもすっかりがらりとしている。こうして予定より2時間半ほど遅れた10時半前、黒海沿いの街トラブゾンの街へと到着する。

トラブゾンに来た大きな目的は、イランビザを取得することだ。イランビザというと、どうにも厄介なイメージ。

でもトラブゾンだと同日に取得できると聞いて、遠路はるばるやって来たのである。バスを降りたバスターミナルからUlsoy社のセルヴィスに乗り換え、街の中心にあるメイダン公園付近のUlsoy社オフィスまで向かう。乗客はわたしたちだけだ。

トルコのバス会社はその快適さとともに、鞄を保管してくれるというとてもありがたいサービスを提供してくれている。これは、大きな鞄をいつもえっちらおっちらとカメのように運ぶわたしたちにとって、とってもありがたいこと。こうしてここでもまずはUlsoy社オフィスに荷物を置かせていただき、まずはイラン領事館へと向かう。街の柱に、ヨーロピアン・ユース・オリンピック・フェスティバル、トラブゾン2011と書かれた絵が鮮やかに描かれている。

その途中で、ビザ申請のための写真を撮りに写真屋へと入る。イランは、厳格なイスラム教国であり、トラブゾンのイラン領事館でビザを申請する際には髪や胸元をくるりとスカーフで巻いた写真を提出しなければならないのである。

領事館付近の写真屋は慣れているふうで、イランビザね、はいはい大丈夫といったぐあいで、レンタル用のスカーフも奥からもってきて、頭にかぶせ、くるりと胸元で巻いてくれる。こうして本格的なスタジオでぱしゃぱしゃと数枚写真を撮り、そのあとMacで光の具合なんかも調整してくれてそのまま印刷ボタンをぽちりと押せば、できあがり、である。

ぱぱぱとつくってもらった写真を手に、そばのイラン領事館へ向かう。重い鉄の扉をかしゃりと開けると、手荷物はそこに置いたまま中に入ってくださいと、扉のところを指さしながら言われる。既にビザ申請に来ていた二人の旅行者がいた。

二枚の紙を渡され、それを記入するように言われる。基本的な情報に父親の名前、職業、日本の住所、今まで訪ねた国、訪問目的、入国と出国ゲート、入国予定日、イランで訪ねる予定の個人や団体名、イランでの滞在費を誰が支払うか、所持金の金額、イランに来たことがあるか、ビザ申請が今まで拒否されたことがあるか、一緒に旅行をしている人の名前と関係、など。

今まで訪ねた国、という質問には、どきりとさせられる。でも「トルコなど」と書けばそれで良いらしい。どう答えるべきか戸惑う質問について領事館員に尋ねると、ああ、その項目はとばしちゃっていいですよ、とジェスチャーで教えてくれる。思いのほか、ゆるい。

それぞれの質問に答え、先ほどの写真を2枚、パスポートとともに手渡す。すると、左の親指の指紋をここに押してください、とジェスチャーをされる。ぽんと押す。次、左の人差し指、中指、薬指、小指。じゃ、次は右手の親指、人差し指、中指、薬指、小指。

はい、そしたら裏面の左手親指、次左手の人差し指から小指まで揃えてここにぽんとね。
それから右手の親指と残りの指ね。

おかげで指先は真っ赤に変わっていく。

なにやら手ごわいイラン領事館を想像していたものの、指紋をとるときは、若干恐縮しているようすですらあって、最後にはありがとうございます、とお礼まで言われる。あとは指定銀行で60ユーロを振り込んできてくれれば15時には受け取れます、と銀行の名前と口座番号、料金が書かれた細長い紙を手渡される。

その紙を手に、メイダン公園からマクドナルドのわきをまっすぐに歩いていった銀行が並ぶ中のTurkiye is Bankasi銀行に入る。この銀行を探すのもなかなかに一苦労で、メイダン公園に面している別のTurkiye is Bankasi銀行に入って場所を聞くと、イランビザね、はいはい、別の場所です、と指で示してくれる。

ようやくたどり着いた銀行の窓口もはいはいイランビザね、といった具合であっという間に振込手続きが完了する。

メイダン公園には太陽の光がふりそそぎ、のんびりと人々はそこに腰かけている。公園に面したレストラン、ムラトに入り、イワシ、ハムスィのフライをいただく。しっかりと揚げられたイワシにレモンをかけていただくが、やや塩からい。添えられた生たまねぎも焼いたペッパーも、バケットやトマトを口に思わず運んでしまう辛さだ。

ビザの受け取りが可能な15時を過ぎてまた領事館へと戻り、呼び鈴を鳴らす。かちりと解錠音が鳴る。重い扉を開けて中へと入ると、振込レシートの提示を求められ、入口のところで待っててください、と言われる。

銀行のレシートを出すと、すぐに奥からビザの貼られたパスポートが返却された。ほっかむりをつけた画質のよくない白黒写真が載っている。スムーズな手続きだ。イランビザ取得は他の国の旅行者にとってもうれしいようで、フランス人の自転車でイランまで行くという旅人も、取得を隣で喜んでいる。

近くの商店でカシスジュースを買い求めてそれを飲みながら、トラブゾンの街と黒海が眺められる丘、ボズテペを上がってみることにする。途中には民家があり、子どもたちはハローハローとボールを持ちながら声をかけてくる。

トラブゾンで有名な大きなパンがあちらこちらで売られ、女性たちはパンを買っていく。スカーフを巻いた女性たちは、一緒に写真を撮ってください、と列をつくって肩をくみ、右手にはピースをつくってみせる。道を聞く男性たちはにこりと笑顔で行き先を指し示してくれる。おじさんたちはいたるところにあるチャイ屋の店先でのんびりとチャイを飲み、おしゃべりをしている。

白い壁に赤い屋根。モスクのミナレットがところどころに高くそびえ、黒海という名前の淡い色の海には船が浮かんでいる。そして空には飛行機が飛んでいく。

人々は丘の上に並べられたアイスクリーム屋のパラソルの下で、Semaverという蛇口のついた容器に入った紅茶を飲んだり、水たばこを楽しんだりしている。

トルコ料理は種類もたくさんあるうえ、郷土料理も豊かなものだから、いろいろと手を出しているうちに、トルコ最後の日の今日にいたってもまだ有名なシシ・ケバブを食べていなかったという事態になっていた。シシ・ケバブを食べるべく、そそくさと丘を下りてメイダン公園に面した洒落たレストラン、Ozgur Sefに入ってオーダーする。炭火でじっくりと焼き上げられたケバブは香ばしい。それにそっと薄いピタがのせられ、レタスやトマト、それにパンがついている。店の人も陽気だ。

イランビザもとれたので、今夜のバスでグルジアのトビリシまで向かうことにする。トルコのメトロ社が直行便を出していた。メイダン公園近くのメトロ社オフィス前からセルヴィスに乗りターミナルへ、そこからバスに乗り換える。黒海には太陽が沈んでいく。

グルジアは、どうもガラが悪いらしいと聞いていた。人の優しい国が続いていたので、どきどきだ。

快適バス国のトルコの会社でもグルジア行きとなると、一体どんなバスがやってくるのだろうか。ターミナルでバスを待っていると、定刻の20時を15分ほど過ぎたころ、トビリシ行きはこちらです、と声がかかった。ターミナルから出て幹線道路の脇を指さし、「あと2分でバスが来ます。」と言う。

グルジア行きとなると、ターミナルからも外れている。

それでもしばらくすると、いつもどおりの真新しいふうメルセデス・ベンツ製バスがやってきた。車体にはMETROと大きく書かれ「We are the best」とうたっている。すばらしい。心おどらせながらバスに乗りこみ、指定された席を探すと、そこには一人の女性が座っていた。添乗員がわたしたちのチケットを見て、座っていた女性と大きな声で、グルジア語の言い合いを始めた。なかなかにこわい。座席に座ってみると、リクライニングが壊れている。

それでも今までと同じように座席には各自にモニターがつき、冷房だって無事についている。

少しでもバスが停車すると、グルジア出身と思われるおじさんがさささと降りて、大きなパンを土産にと買っていく。

23時半ころにグルジアとの国境に到着する。乗客はみな手慣れたふうにどどどと降りて行く。ちょうど同じ時間に到着したバス会社が他にもあり、イミグレーション・オフィスの前には行列ができていて、そのほとんどがグルジア出身ふうの男性たちだ。

おじさんたちは陽気で明るく話しかけてくるが、若者男子たちはどうにもガラが悪そうだ。肩を揺らして歩き、ちらりとこちらに視線を投げかけてまたふいとよそを向く。

トルコのイミグレーション・オフィスではウェルカムと笑顔で声をかけられ、いくぶん気持ちが和む。そして何も聞かれないまま出国スタンプがぽんと押される。

さらに奥に入っていくとトルコの大きな国旗がゆらりゆらりとはためいている。近くにはDuty Freeやレストラン、アウトレットなどが入った施設があり、そこを抜けるとパスポートチェックが一度ある。

こうして快適トルコを離れることになる。