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Chile

虹と風の大地 – Parque Nacional Torres del Paine / Puerto Natales, Chile

朝起きてみると、テントの外の森の木々は、太い幹さえゆさゆさと揺らしながら、大きな音をたてている。それでも木が風をいくぶんか和らげてくれている。葉のすれるざわざわという音に囲まれて、ヨガをしている男性もいる。

今日は、イタリアーノ・キャンプ場に張ったテントの中に大きな荷物を残し、フランセス谷に沿ってMirador Britanicoまで往復をする。朝食は、歩きながら林檎やパンを齧る。

途中分かりづらい道もあるというので、朱色や日ノ丸のような目印を探しながら、進んでいくことになる。

山道を上がっていくと、青い色の雪氷をのせた大きなパイネ・グランデ山が目の前に見えてくる。冷たい色をしたフランセス氷河が眼下に広がる。

川を渡り、砂利道を越え、森を抜けていく。辺りの木々は赤や黄色に葉を染めて、あるいは葉を落とした白い幹を空に向けている。

最後に急な岩場を上がると、歩きはじめてから約2時間ほどで、一方は峻険な山々に囲まれ、もう一方は谷の続くMirador Britanicoに到達する。

岩に腰掛けて山々を眺める。パイネ・グランデ山、コタ峰、カテドラル山、トロノ・ブランコ山、カベサ・デル・インディオ山、フォルタレーサ峰、パイネの角の岩峰がぐるりと囲んでいる。霧がかかり、小雨が降ったかと思えば、途端に晴れ間が見えてくる。

紅葉をした木々の上に虹が二重にかかる。山の向こうにも虹が色を重ねる。苺のクッキーをかじりながら、いつまでも消えない虹を眺める。

帰りは下り道なので、ぴょんぴょんと岩を跳ねながら下っていく。

イタリアーノ・キャンプ場に戻ってきて、キッチンと呼ばれる小屋で昼食をいただく。皿にパンとチーズとソーセージをあけるものの、風で舞いあがった土が入り込む。

昼食を終え、大きな鞄を背負って、レフヒオ・パイネ・グランデまでの7.6kmの道を行く。太陽の光に照らされたパイネの角を背に、炭色をした葉のない木々の合間を歩み進める。

風が吹き、スコッツバーグ湖の湖面には無数の白い波がたっている。風によってしぶきが巻き起こり、そこにちらちらと虹が浮かぶ。そうして、虹がまた波によって運ばれていく。

更に進んでいくと、前方に淡い緑色をしたペオエ湖が見えてくる。ここにもまた強い風が吹き、大きな鞄を背負いながら、倒れこむ。風はさまざまな方向から吹いてきて、赤い葉をつけた木々を揺らし、湖面に波を立てる。強風で頭の中からじんじんとして、身体を浄化していく。

ミルクの板チョコをぽきぽきと割りながら口に入れて前に進んでいくと、右手に日本の旅館のような造りのレフヒオ・パイネ・グランデが見えてきた。

他のレフヒオと変わらず、チリの国旗、そしてマガジャネス州の青と黄色に白い星のついた旗がはためている。ここが、わたしたちのパイネのトレッキングの終点だ。

レフヒオ・パイネ・グランデもまた整った造りで、豚肉とポテトのセットといった日替わりメニューも提供している。

ここから18時半に来る船に乗り、ペオエ湖を東へ渡る。半島に沿って船は進み、最後に光を浴びて白いしぶきをあげる大きな滝、サルト・グランデを眺めながら40分ほどで、Pudetoの船着き場に到着する。

そこからバンに乗って公園入り口に向かい、バスに乗り換えて、プエルト・ナタレスの町まで戻る。

既に空は夕日で染まりはじめている。行きにも見たアマルガ湖の色が違って見える。やがて窓の外にAlmirante Nieto山やトーレス・デル・パイネが赤い空に黒く染まっていく。

バスの中で、この3日間と変わらずに、パンとチーズとソーセージを取りだし、変わらずにマヨネーズやDulce de lecheにつけてほおばる。

こうして2時間ほどでプエルト・ナタレスに到着する。宿のオーナー夫婦もまた今日も変わらずに夜遅くまで元気だった。

ヒトの道とウマの道 – Parque Nacional Torres del Paine, Chile

寒い中朝起きると、テントは結露をしていた。テントの入り口から顔をひょこりと出してみると、目の前の雪をかぶったAlmirante Nieto山が朝日に照らされている。濡れたテントを片しているうちに、手がかじかんでいく。

Hosteria Las Torresで朝食をとりにいく。マテ茶をつくり、パンとチーズ、それに青リンゴをかじる。

今日は、食料やテントなどを担いで11km離れたレフヒオ、Cuernosを通過し、その5.5km先のイタリアーノ・キャンプ場まで向かう。

馬のいるゆったりとした丘を上がる。道には馬のふんもあちらこちらに仕掛けられている。丘を上がりきると、右手に湖が見え、見えていなかった山々が先のほうに見えてくる。

馬に乗った人々と時折すれ違う。道ばたには、ヒト用の道はこちら、ウマ用はこちらと矢印が分かれている。

昨日大きな荷物をホテルに置いてトレッキングに出かけた時とは違って、今日は全ての荷物を背負っているものだから、動きも遅い。てくてくとロバのように歩き、時折岩を見つけては座って休み、クラッカーをかじる。

飛行機がまっすぐな雲をつくって、山の中へと線を描いていく。

ノルデンフェールド湖に沿って歩くCuernoまでの11kmが思いのほか遠く感じられたものだから、小屋が見えたときには足取りも思わず軽快になる。

この避難所もまた快適な山小屋で、靴を脱いで上がる。予定よりもずいぶんと遅い16時半ころになっていたものの、遅めの昼食をここでとることにする。小屋はピスコ・サワーもワインも提供しているところだったけれど、とりあえずの我慢をして、いつものパンにチーズとソーセージを皿に広げる。空いたお腹に、食事がじっくりと入っていく。

そこから今日テントを張るイタリアーノ・キャンプ場まではあと2時間ほど、日の沈む前になんとか辿り着きたい。夏のパタゴニアは日が長いのがありがたい。夜は20時半ころまで日が沈まない。

道を進んでいくと、土を掘り返して石を埋めるスタッフの男性たちがいたので、何をしているのか尋ねると「貧しいから、金を探しているんだ」と真顔で答える。

湖畔の砂利道を歩く。白い木が横たわっている。キャラメルを口にほおりいれながら、湖にに沿って多少のアップダウンを繰り返しながら歩いていくと、前方に氷河をたたえた大きなパイネ・グランデ山と、角のかたちをした「パイネの角」Cuernos del Paineが見えてくる。

徐々に暗くなりつつある中、草原を通り抜け、川を渡ると、ようやくイタリアーノ・キャンプ場にたどり着いた。20時になるころだった。

イタリアーノ・キャンプ場は、園内にあるいくつかの無料のキャンプ場の一つである。昨晩のようなホテルやレフヒオは併設されておらず、ただキャンプ場があるだけ、というからどれほどの場所だろうと思っていたら、管理棟も、キッチンという名の木造の小屋も、清潔なお手洗いも、川からパイプでひいてきた水のタンクもある、立派なキャンプ場だった。

こうして、日の暮れる直前によたよたと辿り着くと、管理棟の前にいた男性があたたかく迎え入れてくれ、キャンプ場について丁寧に説明をしてくれ、氏名と国籍、職業をノートに書くように言われる。緊急のときのために医者や看護婦がいるか記しておくのだという。

夕食は、テントの中でツナの缶詰をあけてマヨネーズと和え、丸パンとチーズとソーセージとともにつまむ。

テントの外から時折、雷のなるようなごーん、ごろごろと氷河の崩落する音がする。

ラグジュアリーなアウトドア空間 – Puerto Natales / Parque Nacional Torres del Paine, Chile

今日からパイネ国立公園のトレッキングである。鞄の中に、テントや昨晩用意をしておいた3日間分の食料をつめこむ。朝は宿で出してもらったコーヒーを少しすすり、甘いチョコレートパンやフランスパンを袋に入れて、パイネへ向かう7時半のバスに乗り込む。

プエルト・ナタレスから2時間ほど、窓の外に淡い緑色をしたアマルガ湖、その向こうに白い雪をかぶったAlmirante Nieto山や岩峰トーレス・デル・パイネが見えてくる。辺りにはパタゴニアにしかいないというラクダ科のグアナコの群れが歩いている。

公園の入り口でバスが停まると、公園のスタッフがバスに乗り込み、園内での注意事項を説明する。

キャンプは所定の場所以外で行ってはいけない、決められたトレイル以外を歩いてはいけない、ゴミは持ち帰らなくてはならない、焚火をしてはならない、キャンプストーブを使用する際にはキャンプエリアでのみ使うこと。

そういった内容は一枚の用紙にも書かれており、滞在日数やパスポート番号などとともにバスで事前にサインをしておく。そして入り口で入園料とさきほどサインした用紙の1部を渡す。

入り口からミニバスに乗り換えて、30分ほどで今日の拠点となるホテル、Hosteria Las Torresに到着する。大きな荷物はそこに置き、トーレス・デル・パイネを望むMirador Las Torresまで往復8時間ほどのトレッキングに出かけることにする。ホテルを出るとぱらぱらと小さな雨が降り、歩く小道に大きな虹がかかっている。

虹を追いかけるように丘をあがっていく。同じ高さにあった湖が徐々に下のほうに小さくなっていき、2.5kmほど歩いたところで、川沿いの崖に到達する。

強い風が吹きつけ、立っていられない。風が身体を崖のほうに押していくものだから、飛ばされて崖の下へ落ちないように岩にしがみつく。

こうして風に耐えながら、砂利道を少し下がり、橋を渡ったところに、園内に数ヶ所ある避難小屋レフヒオの一つ、Chilenoにたどり着く。

靴を脱いでよれよれと逃げ込んだ小屋の中はまったく風をさえぎり、部屋の片隅に暖炉が焚かれている。木の椅子に腰掛け、その暖かな部屋で、持ってきた昼食、パンにチーズ、トマトにニンジンを広げる。

こうしてしばらく休んだ後、小屋のそばで静かにしている馬のそばを通り過ぎ、また目的地へと向かっていく。

いくつかの川を越え、森を抜けていくうちに、空は次第に晴れてきた。時折川の水をボトルに汲みながら、進む。川の水はたっぷりと森の空気を吸いこんでいる。

最後、480mほどの標高差の砂利道を上がっていく。青い空には大きな筆でさっと描かれたような白く太い雲の線がひかれている。

到達したトーレス・デル・パイネは、デ・アゴスティーニ塔、セントラル塔、モンツィーノ塔の3本の花崗岩の岩山から成り、切り立った峰がすっと空に向かっている。麓には氷河があり、更に下には、淡い緑がかった湖が広がっている。

ここにもまた強い風が吹き荒れ、湖畔の砂は高い渦を巻いて湖に落ちていき、湖面には水しぶきがあがって小さな波を作り出している。激しい速度でうごく雲が湖になびくように影を落とし、軽快なリズムで音楽を奏でている。

そこに初老の男性が一人、もそもそと服を脱ぎだし、じゃぶりと湖に入る。極寒のその湖から、男性はそのままくるりと向きを変えてそそくさと畔にあがり、寒い寒いと笑った。

チョコレートクッキーをかじって、同じ道をHosteria Las Torresまで引き返す。強い風に辺りの木々はひっくり返っている。木や岩に塗られた朱色のマークを目印に日の入り前に戻れるよう、道を急ぐ。

17時半過ぎ、先ほど昼食をとったレフヒオChilenoにたどり着き、外にそえられた木のテーブルに腰掛けて、クラッカーをかじる。そばに立てられた風車はぐるぐると勢いよく回っている。

変わらずに風の強い砂利道を抜け、山道を下っていく。空にはのっぺりとした、クジラのかたちの雲が浮かんでいる。最後に再びボトルに川の水を汲み、木のはしごを渡れば、Hosteria Las Torresのあるエリアに戻ってくる。

日の暮れないうちにホテルHosteria Las Torresのキャンプエリアにテントをたてる。見上げれば、Almirante Nieto山や岩峰、トーレス・デル・パイネが赤い夕陽に照らされている。テントを張り終えたら、ホテルに行き、シャワーを浴び、夕食を食べることにする。

ホテル内にはあたたかな暖炉も灯され、木で作られた床でヨガをしている初老の女性もいる。温度調整も抜群のシャワーと暖炉で身体をあたためた後、洒落た音楽の流れるレストランで、鞄につめてきたパンやチーズ、ゆでた卵にソーセージを取り出す。それにマヨネーズやらキャラメル味のDulce de lecheをつける。ホテルのスタッフも一様に愛想が良い。

ここは、豊かな自然の中でアウトドアを満喫しながらも、快適な場所を提供するラグジュアリーなアウトドア空間だった。

夜の23時、規定通りにホテル内のあらゆる電気が突然ぱちりと消えた。懐中電灯を照らしながら、テントまで戻る。月のない真っ暗な空には、星がしきつめられている。星がすっと流れていく。

冷え込んだ大地の中でテントにもそもそと入り、眠りにつく。隣の大きなテントからは、笑い声が聞こえてくる。

パタゴニア・アンデスとフィヨルドの風 - Puerto Natales, Chile

アルゼンチンを出国してからバスに再び乗り込み、坂を下ること5分ほどでチリのイミグレーション・オフィスへと到着する。

オフィスには、荷物検査に関する大きなポスター、先ほどと同じ行方不明者のポスター、現大統領のポスターやUNHCRのポスター、それに1991年から2009年の間を生きたColmilloという犬の写真が額縁に飾られ、わきにはテレビも置いてある。

入国審査は先ほどバスで書いておいた書類を提出するだけで終了し、そこから前回チリに入ったときと同じように今回もまた荷物検査がある。バスから一度大きな鞄を下ろし、各自検査台へと載せる。

わたしたちの鞄の検査が終わると同時に、背後から、誰かが、わたしたちがバスの中に置いてきた手提げ袋を差し出す。バスの中で食べる食料などを入れていたものだった。

パンやらチーズやらを入れていたものの、手提げ袋から検査員は林檎とバナナを取りだして、これはチリには持ち込めない、といい、それらの重さを計った後ゴミ箱にそれをポイと捨てた。

林檎とバナナをなくした袋を抱えてバスに乗り込み、失わずに済んだパンにチーズをのせたり、キャラメル味のペーストDulce de Lecheをつけて、ほおばる。

イミグレーション・オフィスから坂道を下り、約30分ほどで、海沿いにあるプエルト・ナタレスの町が見えてくる。

以前に勧めてもらっていた宿、Hostal Melindaのオーナーであるお母さんが、バスを降りたときにちょうど客引きに来ていたので、そのままそこに部屋をとることにする。

日本の民宿と似たようなつくりで、玄関を入ると何やらごちゃごちゃと色々な私有物が積まれている。わたしたちとお父さんが会話をしていると、部屋の中からお母さんが口をはさむ。

プエルト・ナタレスは、海に面しており、パタゴニア・アンデスとフィヨルドの冷たく強い風が吹きつけ、身体の芯から冷やしていく。そのさみしげな町の雰囲気とは裏腹に一度建物の中に入ると暖かく、人々は優しい。

明日から3日間、パイネ国立公園のトレッキングに行くことにする。さまざまなトレッキングルートをもつ公園の中のルートの一つ、Wを描くトレッキングルートを基本的にとっていくことにする。

明日からの食料と、今日の夕食の食材を買いにスーパーマーケット、UNIMARCに出向く。このスーパーにはパイネ公園に出向く支度をする旅人で、賑わいをみせている。

夕食は、炒めた玉ねぎ、コーンとソーセージに茹でたパスタを入れたミルクスープパスタとパン、トマトと人参とゆで卵にチーズのサラダにゴルフソースのドレッシングをかけ、紅茶とともにいただく。

この宿も熱いシャワーがきちんと出るもので、身体はようやく温かさを取り戻す。パタゴニアの宿は、見事に暖かい。

アルゼンチン―チリ国境情報(エル・カラファテ~プエルト・ナターレス)

アルゼンチンのエル・カラファテから、チリのプエルト・ナターレスへのルートです。

1.エル・カラファテのバスターミナルで、プエルト・ナターレス行き国際バスのチケットを買う。
(4社ほどあるようです。A$100.00)
2.プエルト・ナターレス行きのバスに乗車。
3.アルゼンチン側の国境で、パスポート及び入国の際に受け取ったツーリストカードを提出。
(バスは手続が終わるまで待っていてくれます。)
4.チリ側国境で、パスポート及びバスの中で受け取ったツーリストカードを提出。
5.4と同じ建物内で荷物検査
(バスの中に預けてある荷物も、一度バスから降ろしてX線に通します。
 ※チリへは、牛乳・果物等は持ち込めないので、事前に食べてしまってください。
  バスの中に置いておいても、バスの中も調べられてしまいます。)
6.プエルト・ナターレスへ到着
 ※全部で6時間程度です。

◎両替
 国境付近には、両替する場所はありません。
 プエルト・ナターレスに到着後、両替する必要があります。