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パタゴニア・アンデスとフィヨルドの風 - Puerto Natales, Chile

アルゼンチンを出国してからバスに再び乗り込み、坂を下ること5分ほどでチリのイミグレーション・オフィスへと到着する。

オフィスには、荷物検査に関する大きなポスター、先ほどと同じ行方不明者のポスター、現大統領のポスターやUNHCRのポスター、それに1991年から2009年の間を生きたColmilloという犬の写真が額縁に飾られ、わきにはテレビも置いてある。

入国審査は先ほどバスで書いておいた書類を提出するだけで終了し、そこから前回チリに入ったときと同じように今回もまた荷物検査がある。バスから一度大きな鞄を下ろし、各自検査台へと載せる。

わたしたちの鞄の検査が終わると同時に、背後から、誰かが、わたしたちがバスの中に置いてきた手提げ袋を差し出す。バスの中で食べる食料などを入れていたものだった。

パンやらチーズやらを入れていたものの、手提げ袋から検査員は林檎とバナナを取りだして、これはチリには持ち込めない、といい、それらの重さを計った後ゴミ箱にそれをポイと捨てた。

林檎とバナナをなくした袋を抱えてバスに乗り込み、失わずに済んだパンにチーズをのせたり、キャラメル味のペーストDulce de Lecheをつけて、ほおばる。

イミグレーション・オフィスから坂道を下り、約30分ほどで、海沿いにあるプエルト・ナタレスの町が見えてくる。

以前に勧めてもらっていた宿、Hostal Melindaのオーナーであるお母さんが、バスを降りたときにちょうど客引きに来ていたので、そのままそこに部屋をとることにする。

日本の民宿と似たようなつくりで、玄関を入ると何やらごちゃごちゃと色々な私有物が積まれている。わたしたちとお父さんが会話をしていると、部屋の中からお母さんが口をはさむ。

プエルト・ナタレスは、海に面しており、パタゴニア・アンデスとフィヨルドの冷たく強い風が吹きつけ、身体の芯から冷やしていく。そのさみしげな町の雰囲気とは裏腹に一度建物の中に入ると暖かく、人々は優しい。

明日から3日間、パイネ国立公園のトレッキングに行くことにする。さまざまなトレッキングルートをもつ公園の中のルートの一つ、Wを描くトレッキングルートを基本的にとっていくことにする。

明日からの食料と、今日の夕食の食材を買いにスーパーマーケット、UNIMARCに出向く。このスーパーにはパイネ公園に出向く支度をする旅人で、賑わいをみせている。

夕食は、炒めた玉ねぎ、コーンとソーセージに茹でたパスタを入れたミルクスープパスタとパン、トマトと人参とゆで卵にチーズのサラダにゴルフソースのドレッシングをかけ、紅茶とともにいただく。

この宿も熱いシャワーがきちんと出るもので、身体はようやく温かさを取り戻す。パタゴニアの宿は、見事に暖かい。