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まだ着かなかったカリ – Armenia / Cali, Colombia

朝目覚めてみると、バスはぴたりと停まっていて、前にはずらりと車が並んでいる。

しんと静まり返っているバスがそのうちに再びエンジンをかけてゆっくりと動き出した。
山にはところどころに広がるコーヒー畑が朝日に照らされているかと思えば、とたんに辺りが霧に包まれる。

そうこうしながらも、予定到着時刻の9時を1時間ほど過ぎたころ、山のはざまにぱっと町がひらけてみえてきた。目的地の、カリにもうすぐ着く。

近くに見える町を手前に、バスは大きな曲線を描いてゆっくりと町に近づき、濁った川を渡り、バスターミナルに到着した。

そわそわとバスを降りる支度をしていると、横に座った乗客から、ここはカリではなく、道半ばほどのアルメニアであることを伝えられる。どうりでコーヒー畑が広がっていたわけなのである。

アルメニアの町を過ぎてからも、道ばたではコーヒーの苗が植えられ、プールをそなえた大きな建物が並んでいる。そのうちに再び丘がゆるやかに続く景色へと戻っていく。

バスに乗り込んできた男性が、薬草や美容にきく食事についての小冊子4冊セットについて流暢に大声で演説しながら乗客に売り歩き、それを買って熱心に読みだす男性がいる。

ようやく実際にカリに着いた時には14時になろうとしていた。バスを降りると、ボゴタと違ってむわりと暑い。

バスターミナルを眺めるレストラン、El MiradorでArepaチョコとチーズを注文する。とうもろこしをすりつぶしたほんのりと甘いチョコレートの味のするArepaにチーズをはさんだものをレンジで温めてくれる。

レストランに併設されたビリヤードでは、昼間から男性たちが台を囲んで熱中している。

カリはサルサで有名な町であり、カリ川をはさんで北側にサルサ街や洒落たレストランがあり、南側に歴史地区、その西側は落ち着いた住宅街、東側は治安が比較的よくない地域になっている。

南西の丘のふもとにある宿に部屋をとるため、近くのメイン通りCalle5行きのバスに乗り込む。入口扉には、「歳御歳暮見舞」と漢字が貼られている。ここでも席をゆずられる。そして、またここでも貴重品には気をつけなさい、と忠告を受ける。

街には肌の色の濃い人、薄い人、東洋系の人々などが入り混じって歩いている。リーさんに聞いていた、白い肌にぽってりとした唇をもつ人、はまだ見当たらない。

一階に落ち着いた雰囲気のカフェを併設しているLa Casa Cafeに部屋をとる。オーナーのPaulaさんは、わたしたちの名前をまず尋ねてそれを復唱した。そしていつもここにいるから、いつでも呼んでくださいという。宿はできて5年、彼女が不在のときは常駐の友だちが代わりに宿をみている。

この仕事が楽しくてたまらないの、とPaulaさんは言った。

宿に泊まっていたフランス人の男性は、コロンビアは、人が優しくて明るくて大好きなんだと口に手をあてて言う。

「フランスではみんなしかめっ面をして歩いてる。でも、ここでは、みな人懐っこくて明るくて幸せに暮らしているんだ。」

支度をしてから、街の北側にあるサルサテカの集まるエリアへ歩いていくことにする。18時半ころのMerced教会前では、ミサを終えた、きちんとした身なりやスーツ姿の人々が会話を楽しんでいる。

街にはカジノもカラオケもGane Serviciosの窓口もある。カリ川を渡り、公園に面した明るく光る市庁舎ビルを通り過ぎ、メイン通りのAv 6Nをまっすぐに進んでいく。

San Judas Tadeo教会を過ぎた辺りからサルサテカが並んで見えてくる。それでも、カリのサルサテカは木金土曜日に盛り上がりをみせるので、水曜日の今日は踊る人は少なく、人々は備え付けの大画面でサッカーの試合をみながらビールを飲んでいる。

リキュール屋でPokerのビール瓶を購入していると、隣でビールを飲んでいた医者であるカルロス先生に話しかけられる。1987年から95年まで中国に住んでいて、上海中医薬大学で中国医療を勉強し、今はカリの病院で針治療を中心として診療しているという。

今でも流暢な中国語を話し、すらすらと漢字を書く先生は、ストライプのシャツをぴしりときれいに着こなしている。いかにも品がある。

コロンビアのメデジンは政府の政策が功を奏しているが、ボゴタやカリではまだ犯罪も多く、カリは依然とほとんど変わっていないと口をまげた。でもカリ川の北側で生活しているから、南にはあまり行かないんだよ、と言った。

果てにはClub Colombiaビールまでごちそうになり、明日カルロス先生の病院へうかがうことを約束してわかれる。

先生はその後もビールをあけている。

近くのPit Burguer Parrillaで、豚肉、鶏肉、牛肉のぶつ切りやチョリソーにポテトフライやトマト、レタスが鉄板にのってソースがかけられたPicadasを注文する。店の女性もにこやかに、洋服に描かれたセクシーな女性の顔をゆらしながら、働いている。

夜遅くなっても、サルサテカは緑や赤、青といった光線を照らすばかりで、がらりとしている。サッカー観戦をしながらビールを飲む人ばかりが増えていく。

夜のカリは歩かない方が良いというPaulaさんのアドバイスを受けて、タクシーに乗って5分ほどで宿にたどり着く。