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エクアドル入国と、オタバロに住む人々 – Tulcan / Otavalo, Ecuador

コロンビアとエクアドルを隔てる、車が列を成している橋を渡る。細い川は茶色く濁り、緑におおわれ、白やピンク色の家が脇にたっている。

「ようこそエクアドルへ」と書かれた看板をくぐり、そばのイミグレーションオフィスに向かう。裏の山では、牛が草を食んでいる。

入国に時間がかかることもあると聞いていた入国審査では、警察と書かれた蛍光の黄色いジャケットをはおった男性に、エクアドルは初めてですか、と聞かれただけでスムーズに終了する。

イミグレーションオフィスのすぐそばに数台のバンが停まっていて、国内各地に向かうバスのターミナルがあるTulcanへと向かう。ぶつぶつと何かをつぶやいているおじさん運転手に誘われて、バンに乗り込む。次々と人が乗り込みバンが満席になるころ、ふわふわと白い鶏のような動物が、網に入れられて置かれた。犬だった。

運転手は、地元の若者にも、各国の乗客にも、ふと笑われてしまう、愛嬌のあるおじさんだった。ぶっきらぼうに運転するおじさんは、乗客のザックを後ろの地面にひっかけたまま三菱のバンを吹かして前進させようとする。そして、さして用もないのに、掌を広げてクラクションをバンバンと勢いよくふりたたく。やがてぶつぶつと何かをつぶやいたかと思えば、にんまりと笑ってみせる。

国境を越えてからは、ひなびたホテルが一軒あるのみで、山々が続いている。明るい緑の芝生のところどころに、深い色をたたえた緑の木々がすっとラインをつくっている。観覧車もある遊園地を通り過ぎ、褐色の制服や緑のジャージを着た学生たちが町を明るく歩いていくのが見える。

おじさん運転手の様子を乗客は興味深く凝視しながら、それでも20分ほどすると、確かにTulcanに到着した。 

バンを降りるとすぐに目的地であるオタバロの名前を挙げる二人が集まる。
「すぐにバスは発車します。」

コロンビアとエクアドルの国境は治安が悪いはずであるにもかかわらず、手続きはこれほどまでにスムーズに進み、バスの乗継ぎは快適甚だしい。

バスのそばで売っていたチーズにはちみつをかけたものを買って乗り込む。チーズはくせのあるコロンビアのものと違って、あっさりとした味だった。それからバスに乗り込んできたコロンビア人の男性から買ったエンパナーダと合わせて食べることにする。

バスの乗客に、前方から紙切れが回され、名前の記入を求められる。進むこと20分、バスが停車し、わたしたちの荷物を確認するから下車するようにエクアドルの軍人から指示を受ける。

その指示に従い、バスを降りて粛々と荷物確認を受けようとしていたところ、わたしたちの大きな荷物を目の前に面倒だと感じたのか、鞄を開けることもなく、もう良いです、ということになった。

ゆるやかな緑の丘に木々がいくつもの線を描き、家はところどころに点在している。パンアメリカン・ハイウェイ沿いに3時間半ほど揺られて辿り着いたオタバロ近くから、別のバスに乗り換えて、町の中心へと向かう。

乗り換えたバスには、途端に先住民族である肌の色の少し濃く、長い髪を後ろで三つ編みにまとめた男性や、首に金色のネックレスを幾重にも巻き、民族衣装を身につけたオタバロ族の人々がちらりほらりと席に座っている。バスはぴょんぴょんと飛びはね、その勢いにすってんころりんと尻もちをつく。乗客たちは一様に、はっとなる。

10分もたたない内に町の中心に到着する。さほど大きくないオタバロの町の電線には、コケの種子がはりついて、それが電線の上で成長をして、もこもことした影をつくっている。

インターネットカフェにも、黒髪を後ろで三つ編みにしてピンク色の布を巻いたオタバロ族の女性がヘッドフォンをつけながらパソコンに向かっている。金色のネックレスを身につけながらも米国国旗のセーターを着た女性がいる。

オタバロは、先住民族であるオタバロ族が集まる土曜市でその名を知られているものの、町は思いのほか新しく、舗装もされている。Wifiバーやレストランも開いていて、若者たちが通りに出て、楽しげにしている。

夕食は、レストランMi Otavalitoで、トルティージャ・デ・パパス、目玉焼き、チョクロにスパイスの効いた豚肉焼き、アボガドにバナナフライ、マリネのついたLlapingachos a la Otavalitoをオーダーする。レストランの従業員は、白いブラウスに刺繍をほどこした民族衣装を身につけている。

ポンチョス広場には屋台が並び、人々が思い思いに食事を楽しんでいる。この町は、4609mのインバブラ山と、4939mのコタカチ山にはさまれた標高2550mの盆地で、相当に冷え込み、吐く息も白いほどである。

そこで1993年創業とい広場に面したうレストラン、Inty-Huasiに入り、ホットチョコレートをオーダーする。身体を温めて23時頃外に出ると、数軒のバー以外は閉まっており、ひっそりとした町になっていた。