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ちょこんとした口をこちらに向けたモルモット – Otavalo / Quito, Ecuador

オタバロの土曜市は、食料品、衣料品、手工芸品の他、動物マーケットもあり、朝の6時ころからお昼ころまで盛り上がりをみせるようなのである。

まだ夜が明けて間もない6時半ころ、既に宿の前の道にも店を組み立てる人々が集まり始めている。まずはTejar川を渡って1kmほど歩いた丘の上の広場で開かれている、朝の早い動物マーケットを見に行く。

小さな食堂ではすでに軒先で湯気をたて、人々が朝食をとっている。

7時をまわるころに丘の上に到着すると、そこには既に人と動物が大勢集まり、ぶひぶひ、めえめえ、ぐほぐほ、とさまざまな鳴き声が入り乱れていた。

ある女性は、何羽もの鶏の脚を束ねて両手にぶらさげ、ある女性は羊をひき、ある女性は豚をひく。ある男性はアルパカの値段交渉に励み、ある男の子は大人同様の取引をし、ある女の子は手慣れたふうに動物をひいていく。檻の中には、犬も猫も兎もひよこもモルモットもいる。

それぞれの動物の初めの言い値はこんな具合なのだ。

赤ちゃん牛:75ドル
子牛:150~160ドル
牛:250~380ドル

赤ちゃん豚:15ドル
子豚:35~40ドル
大黒豚、大茶豚、大白豚:100~210ドル

子羊:40ドル
羊:60~100ドル
子山羊:40ドル

ひよこ:1.3ドル
鶏:9.5~18ドル

鳩:2ドル
あひる:20ドル

子犬:2~7ドル
大犬:25~30ドル
子猫:2ドル
子うさぎ:25ドル

アルパカ:85ドル
モルモット:5~7ドル

先住民族であるオタバロ族の人々は色鮮やかなブルーの羽織りをはおったり、黒い布を頭に巻いたり、黒髪を三つ編みにしたり、金のネックレスを巻いたりしている。

ある豚は死んでいるかのように地面に寝そべり、ある豚は狂ったように暴れ出し、ある豚は震え、ある数匹の豚は耳を同時にそばだて、ある豚は他の豚に覆いかぶさり、ある豚は高台にある屋台で丸焼けにされて食べられていく。豚それぞれなのである。

広場では動物をつなげる色鮮やかな練り紐も、動物を入れる布袋も売られている。牛や羊などを購入した人々は、地元政府に税金を納めるための手続をしに、丘の上に動物を連れて行く。列に並んだ後、売り手、買い手の名前と購入した動物や種類と値段、次にどこに連れて行くのかなどを申し出る。

ぱらぱらと雨が降ってきたので、屋台に腰かけ、ごろりとしたじゃがいもの入った出汁のきいたチキンスープに、香草の入ったぴりりと辛い赤いソースをぽとりとかけて、揚げパンに砂糖をふりかけた朝食を食べる。動物をみながら、それをいただくのである。

その内にざあざあと本降りになるものの、傘をさしているのは一組だけ、他は、雨も気にならない様子である。市場にはSound of Silenceが流れている。

ポンチョス広場に戻る道にも、多くの露天が並び、衣服や靴、貝や食料用の虫、コカの飴、手工芸品や食料品などが売られている。

オタバロのインフォメーションセンターで働くJosueくんは、現在石油エンジニアリングをキトで学んでおり、卒業後はCoca近くで就職するのだという。メスティソである彼は、洋服を着ている。

ポンチョス広場に面したパイの有名店Shenandoah Pie Shopで、木いちごのパイをオーダーする。さして愛想のない店員が、それでも大きく切り分けられたパイを皿にのせて運んでくる。中には木いちごがたっぷりと入っていて、甘すぎずに素材の味がぎゅっと詰まっている。ぱくりぱくりとたいらげてしまう。

ボリバール広場に面したサンルイス教会や、そばの24 de Mayo市場、サンフランシスコ教会を見て回る。

道端で、コーンにふんわりとしたメレンゲをのっけて、アイスクリームのように見立てているものが所々で売られている。木いちご、ココナッツ、マンゴーなどある味の中から、木いちごとココナッツを選ぶものの、そもそもが甘い甘いメレンゲなので、二つの味に違いはほとんど、ない。

台車に山積みになって売られていたGuabasというフルーツも買ってみる。細くて太い緑の皮は固く、割いてみると、中にはふわふわと白い毛のついた粒がならんでいる。さながら、うさぎのようだ。

おそるおそる口の放り込んでみると、ふわりと毛の触感がして、ぞわりとするものの、中にはココナッツのような実があり、その中には大きくつるりとした種が入っている。

オタバロで泊っている宿のTAMIA TAKIという名はケチュア語で「雨踊り」を意味するのだという。そこで働いているパトリシオくんは、大学でコンピューターサイエンスを勉強中だという。この辺りの平均月収は300ドルでとても低いのだと、それでもさほど大変ではなさそうに、言った。

宿から荷物を取り、エクアドルの首都キトへと向かう16時ころには、多くの露天が店をたたみはじめていた。ターミナルに着くと、キト、キトと大声をかける男性がいて、さあさあとバスの方へと誘導される。

キトへ向かうバスは、大きな山々の連なる道を駆け抜けていく。山の上の平らな部分には家々が整列して並び、ゆるやかな丘には木が直線上に植えられ、山肌のみえる谷には霧がかかっている。

18時半ころにバスは新しいCarcelenバスターミナルに到着し、そのまま誘導されたバスに乗り換えてEstacion La “Y”にたどり着き、そこからトロリーバスに乗り換えて町の中心へと向かう。バスに乗るたびに運転手やチケット売りの女性に尋ね、あちらだこちらだと親切に教えてもらうのである。

宿をとった旧市街は、夜になると一律にそのシャッターを閉じて、ひっそりとしている。開いているレストランがあるか尋ねたところ、Rondaという通りでは、夜もレストランが開いているという。

雨の降る中訪ねてみると、確かに石のゲートをくぐると途端に音楽のなり響くレストランが軒を並べ、灯のともった一本の石畳の通りに、多くの人が集まっている。

レストラン、Lena Quitenaに入り、勧められたモルモットの炭火焼をオーダーする。頭をとられてこんがり焼かれたモルモットには、ピーナツソースのかかったじゃがいもに、アボガド、トマトとレタスのサラダがそえられている。

こちらは今朝市場で見たモルモットがちらりと頭によぎるのを消し去るのに必死だ。ちょこんとした口をこちらに向けて、首のうしろをむぎゅりと捕まれて連れられていった。皮はもっちりとしていて、肉はやわらかく、まるで良質のチキンだ。骨は細くて、繊細なのである。

標高2850mの雨降るキトは肌寒く、宿に戻る道すがら、Canaのブランデーをほんの少しとシナモンの入ったナランヒージャのCanelazoというお酒をいただいて身体を温める。

Avenida 24 de Mayoでは、黒のスカートに色鮮やかな布を身体に巻いた女性と毛の長いパンツをはき、ストライプ模様の布を上半身にかけた男性によるフォルクローレのダンスや、白いドレスに青や緑、赤といった布を腰に巻いた女性によるボンバ・ダンスが披露され、はだしで踊っている女性もいる。

丘に灯る家々の灯りが霧にぼんやりと浮かんでいる。夜12時を過ぎても辺りは音楽が鳴り響いていた。