Top > ブログ

ペンギンとアシカとカモメとイルカ – Punta Arenas / Islas Magdalena & Marta, Chile

今朝は、宿でテーブルに並べられた食パンや丸パンにバターやスモモのジャムをたっぷりとつけて、ミルクコーヒーとともにいただく。

朝の10時に出るプンタ・アレーナス行きのBus Sur社のバスに乗り込む。さすがチリのバス会社、遅れることなく定刻に発車する。グレーの雲に覆われた平坦な大地で牛や馬、羊がのんびりとしている。枯れ木が積まれている大地、高い緑の木々が生えた大地、あるいは幹にまで黄緑色の草を生やした木々を眺めながら、バスは更に南へと進んでいく。

車内では、日本語で聖闘士星矢のナレーションが流れている。そして赤と白の風力発電がくるくると回っている。

空港を通り、13時15分ころにはマゼラン海峡に面したプンタ・アレーナスに到着する。夏の短いこの町は、人々が歩いているのにもかかわらず、ひっそりともの静かで、どこかさみしげに見える。聞いたところによると2週間前に大きな洪水があり、町の中心が破壊されて、いまだ閉まっている店も多いというから、それが理由の一つなのかもしれない。ところどころ工事中の場所がある。

アルマス広場にあったインフォメーション・センターも、若者の放火によってパソコンや書類が燃やされ、別の建物に最近移転をしたという。

こうして、グレーがかったこの町は、かつてマゼラン海峡が発見されて繁栄したものの、パナマ運河の開通に伴ってまた静かな町に戻ったのだそう。プンタ・アレーナスが州都であるマガジャネス州は、チリから独立したいと願う人々も一部にいるとも聞く。

それでも、町の中心のアルマス広場の中心にはマゼラン像が立ち、その足元にいる先住民族のアラカルフ族の足は「無事に航海を終えられる=幸福になる」と言い伝えられ、数多くの人々が集まり、次々と既に色の変わった足の先を触っていく。

この町の近くには、野生のペンギンやアシカなどが数多く住んでいるMagdalena島とMarta島があるというので、今日船を出しているというSolo Expedicionesのオフィスへ行き、島へと向かうことにする。

バンに乗り込み、マゼラン海峡の港へと向かう。30分走ると、海軍基地や物流の港が見えてくる。潮の香りのする海岸には、チリの国旗を掲げた錆びれたボートが置かれている。

小さなボートに乗り込んで、黄色のライフジャケットを羽織る。クラッカーをかじりながら、勢いよく揺れるボートが進むこと40分ほど、ペンギンが住むMagdalena島に到着する。今の時期、既に子どものペンギンは北のほうへと移動していて、ここに残っているのは大人のペンギンだけだというが、それでもおよそ100,000頭のペンギンが島中に生活をしている。島はぴぴぴ、ぐわぐわとペンギンの鳴く声で包まれている。

あちらこちらに穴を掘り、あるペンギンは羽をばたつかせ、あるペンギンは対で寄り添いあい、あるペンギンは喉を大きく震わせて、口を空高く向けて、くわくわくわと鳴く。

てくてくと歩きまわるペンギンもいれば、寝そべっているペンギンも、嘴でつつきあうペンギンもいる。
地面にはトウゾクカモメが食い散らかした鳥の死骸が残されている。

島の頂上にはペンギンに関する小さな博物館があり、十字架と、現大統領の額縁が併せて飾られている。

そこから近くのMarta島へ向かう間に、いるかが海面に次々と飛び跳ねる。時にボートの下をくぐり、深い海の上につるりとした黒い背中をのぞかせる。

Marta島には上陸することはできない。そこにはペンギンと似た姿をしたウミウがぎっしりと立っており、島の反対側の岸には、ぐあぐあと無数のオタリア(アシカ科)が鳴き、その上をまた果てしない数のかもめがぴーぴーと空を舞っている。島中から鳴き声が響き渡り、かもめの影が島に黒い点を作りだしている。

こうして、人間の降りることのできない島は、数えきれない野生の動物の鳴き声で包まれ、独自の世界を作っていた。

ガタンガタンとスピードを上げて進むボートは19時過ぎにプンタ・アレーナスに戻ってくる。日がとっぷりと暮れた町は、数店舗のレストランや商店、バー、ビリヤード場や女性のいるナイトクラブ以外は閉まり、ひっそりとしている。

商店を2軒立ち寄って夕食の食材を買う。1軒目は開業30年目という商店で、さして愛想のない初老の女性が、それでもクリスマスのイルミネーションがほどこされた店内で食材を売っている。もう1軒は男性二人が店頭にたち、飴をくれると差し出された。

宿に戻って、ツナとじゃがいもとたまねぎを炒め、こんがりと焼いたパンと紅茶と合わせていただくことにする。身体が芯から冷える夜だ。