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外は寒く、中は暖かい街 – Ushuaia, Argentina

再びバスに乗り込んで、牛が草を食む平坦な大地を走ること20分ほど、アルゼンチン側のイミグレーション・オフィスに到着する。

行方不明者のポスターが貼られ、ここでもテレビではサッカーの試合を映し出している。荷物検査に関するポスターが貼り出され、中国製の荷物検査台が置かれているもののチリ入国のときのような荷物検査はない。バスの中で記しておいた入国書類を提出すれば「ハロー」と言われるだけである。

再びバスに乗り込む。ウシュアイアまで303kmと表示がある。

子どもたちは紙飛行機を使って遊び始め、隣の座席の男性はサングラスを頭の上にのっけて、持ってきたスピーカーでバラードを聞きながら、窓の外を眺めている。バスのテレビからはのりのりの音楽が流れている。

17時半ころ、リオ・グランデのターミナルで別のバスに乗り換え、またウシュアイアに向けて出発する。

南大西洋に面したリオ・グランデの町には工場が立ち並び、車のディーラーが軒を連ねている。車やトラックが行き交っているものの、人々の姿はあまり見かけない。

黄色く染まった短い草の生えるばかりの大地を走り、左手に海を眺めながら、やがて紅葉した木々が道ばたに植わり、雪をかぶった山々や湖が見えるようになってくる。

20時も過ぎ、すっかり日の暮れた山道を走っていくと、ふいに前方に灯りのともされたガントリークレーンや船、MAERSK社やHAMBURG SUD社のコンテナが見えてくる。

こうして最南端の都市ウシュアイアに21時前に到着する。降りた途端に冷たい風が吹きつけ、ターミナルに集まっていた宿の女性に連れられて、そのまま部屋を確保することにする。

宿の女性は3人とも、ブエノス・アイレス出身だといい、治安の良さや仕事の豊富さに魅せられてウシュアイアにやってきたという。皆、ウシュアイアを心底気に入っているふうで、ウシュアイアは素晴らしいと明るい声で繰り返す。

夕食の食材を買いに、宿から歩いてすぐの小さな商店に行く。宿も、周りの家々も、山小屋ふうの木造であたたかい。

この地方では羊の肉がよく食べられているというので、羊の肉がないかを尋ねると、冷蔵庫から一頭の羊の肉を取り出し、電動カッターで細かく切って包んでくれる。

宿に戻り、羊の肉を焼いて玉ねぎのワイン煮を添え、トマトのスープにパンをつけていただく。そして、アルゼンチンメンドーサの赤ワインCria de Cosechasと紅茶を合わせていただく。羊の肉はミルキーで、それでもたいしてくせがない。

セントラルヒーティングも熱湯のシャワーも完備する山小屋ふうの宿は、いかにもパタゴニアらしく、居心地が良い。