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暑さと砂埃と検問とアラビア世界のスーダン。- Gallabat / Gedaref / Khartoum, Sudan

橋を渡れば、もうスーダンである。スーダンは、南や西は危険だと言われているが、北のほうはそんなことはなく、むしろその逆で、国境もまたなにやらのんびりとした雰囲気である。

食堂が何軒か並び、ろばがものを運んでいく。スーダンに入り、途端に辺りは乾燥をし、気温が高いように感じる。

イミグレーション付近も数名の軍人が銃を持ってうろうろとしているものの、ウェルカムウェルカム、と他の国ではなかなかに見られない歓迎ぶりである。オフィスでは、携帯で話をしている担当もいれば、短くてくるくるの黒髪を櫛で丁寧にとかす男性担当者もいる。

既にアディスアベバで取得していたビザを見せ、入国書類に記入する。記入するペンも、どうぞと差し出されるくらいのウェルカムぶりなのである。入国後3日以内に「滞在届」を出してください、と言う。

その後、近くのオフィスで「税関」審査を受ける。昼休み中だから待つようにと言われ、近くの食堂で、Venoというブランドの、ピーチ味の炭酸飲料を飲みながら、待つ。

税関と言っても、荷物を持っていくのではなく、パスポートを見せると、ぶ厚い冊子にアラビア語で1行ごにょごにょと何かを記入したら、終わりの作業である。

国をまたぐというのは面白いもので、スーダン側の国境の町、Gallabatには、もうインジェラは、ない。

男性同士が手をつないで歩くのは変わらないが、ふいにアラブ系雰囲気がただよってくる。

国境から首都ハルツームまでは、Gedarefという町を経由していく。Gadaref行きバンがいっぱいになるのを待つ間、近くで売られていた豆のフライ、Ta’amiyaをほおばる。フライは既に冷めていて、ハエがまわりを飛んでいる。

1時間ほど待った後、バンはGedarefに向けて出発すると思われるも、少し走ればパスポートチェックのために停車させられる。そしてまた少し走ると、今度はバンを下車して、看板のない建物に入室を求められ、氏名と行き先を尋ねられる。2分たてば、また停車し、外国人であるわたしたちに「パスポート」と、パスポートの提示を求める。

ただ、こう何度も検問が入るわりに、雰囲気が和やかなことはあまり変わらない。

ほかのスーダン人の乗客たちは、それをあたたかく待つ。

ようやくまた発車したと思ったら、元いた場所に戻ってきてまた客を乗せ、そしてまた出発したところで、外国人わたしたちはパスポートチェック、スーダン人は身体検査といった具合で、一向に前に進まない。

乾燥した土地に牛がのんびりしている風景を眺めながら、3時間半ほど走ったところで、Gedarefに到着する。

むわりとした砂に包まれた街で、全く英語が通じない。アラビア語の世界だ。ハルツーム行きのバスはあるとかないとか、だれもが違った答えをしてくる。

どうにかこうにか、ハルツーム行きのバスはやや離れたバス停から出ているらしい、かもしれない、ということが分かり、そこまでトゥクトゥクで向かうことにする。

真新しいトゥクトゥクは、きれいな身なりをした若い男性が運転している。

ターミナルに到着すると、1台のバスと1台のミニバンが停まっていた。ミニバンは、どうやらこれからハルツームに行くらしい。トゥクトゥクを降りると、すかさず現れた人々が、警察署に来てパスポートを見せなさい、と手招きする。再び、パスポートを提示する。

共にバンに乗り込んだ女性は元々エチオピアのゴンダール出身だが、難民としてスーダンに移り住んだという。エチオピアは良い国だが、スーダンはダメ、でも身内もいるから仕方がないのと、顔をしかめて言った。

甘いビスケットとクリームのはさまったクッキーを買ってほおばっていると、乗客の一人の女性が水のペットボトルを差し出してくれた。

もうすぐに出発だというときに、運転手が、座席が埋まらなかったから、一人プラス10ポンド支払ってください、と言う。みな、仕方がないことと割り切って、10ポンドを支払う。

出発直後、バンは検問を繰り返した。そのたびに外国人であるわたしたちは、パスポートの提出を求められた。そうこうしているうちにバンはいつの間にか多くの乗客を乗せて、満席となった。

気温は高いままだが、窓を開けると砂埃が入ってくるので、みな窓を閉める。バン内にぎゅうぎゅうに座る乗客たちは、暑い気温にぐったりとなっていく。

国境の町、Gedarefからハルツームまでは舗装道が続く。それでも、エチオピアとスーダンをつなぐその道は交通量も少なくないようで、古くなった舗装道は傷んでいると聞いた。確かにときおりがたりと窪みを抜けながら、走っていく。

22時半を過ぎたころになり、バンは夕食のために、停車した。豆のオイル煮とサラダにパンがついたものをほおばる。

バンは満席になったので、乗客がさきほど追加で支払った10ポンドの返金を求める。運転手はなかなかに応じず、そのうちにお金をもって走り逃げ出した。それでも、返金を求めていると、そのうちに笑いがおきはじめ、周りの人々がなんだなんだと集まりはじめ、やがて運転手は、返金をした。

憎めない人たちである。

それからも二度ほどの「パスポート」を受け、結局、ハルツームに到着したころには夜中の1時半を回っていた。街は暗くて、アラビア語ばかりの看板に、どちらに向かって良いものかもわからない。英語が通じる者など、いない。

バスの到着した辺りには、幾人もの人たちが簡易の鉄のベッドを置いて寝そべっている。わたしたちも、テントをはって夜が明けるまで待つことにする。

辺りは強い風が吹き始め、砂埃と破れたビニール袋やごみが舞いあがる。人々は構わず、簡易ベッドで眠り続ける。

テントの外にあたる砂埃を感じながら、浅い眠りにつく。