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アブ・シンベル神殿と、すきまなく眠る人々 – From Wadi Halfa to Aswan, Egypt

やがて日は暮れ、ぽつりぽつりとした明かりが両側に点々としている。船のちょっとしたスペースを見つけては、イスラム教徒の信者が絨毯を敷いて祈り始める。

22時を回ったころ、遠くのほうに赤く大きな岩がどっしりとしているのが見えてくる。アブ・シンベル神殿だ。

ライトアップされた神殿は、橙色に光を放ち、高さ20mもあるという4体のラメセス2世像は無言のうちに船のほうを見ている。

船は進み続け、やがて、その巨大な神殿は小さく姿を変えていく。暗闇の中で、神殿の辺りだけは、町の光が線を成している。

食事券を手に食堂部屋へと行く。ここには冷房がきちんと効いている。食事券を出すと、夕食が運ばれてきた。赤い豆の煮たもの、ピリ辛の瓜、ゆで卵にチーズ、パン、あんずのジャムである。食堂部屋は、23時を過ぎてもまだおしゃべりを楽しむ男性たちで賑わっている。

そして、甲板に戻ると、そこは眠る人で足の踏み場もないほどになっていた。人を踏むことのないようにおそるおそる足を進めて、甲板の角にようやく広いスペースを見つける。

風は涼しく申し分ない。マットを広げて、そのまま眠りにつくことにする。