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さかいめ – Jerusalem, Israel & the Palestinian Territories

朝はたまねぎの炒め物にパンやコーヒー、それにお気に入りのアーモンドジュースをいただく。

昨日、ラマラという街の近くで、モスクがユダヤ人過激派によって放火されたという。

今日も、家の近くを通るUNのマークをでかでかとつけた車や、ファック・イスラエルと書かれたごみ箱を横目に、オリーブ山を下り、旧市街へと歩いていく。

岩のドームを出たところのムスリム地区で、イスラム教徒だという男性二人にイスラムに関する本を突然に手渡される。ピザ屋には、メッカの画像が流れている。

そんなムスリム地区で、ユダヤ人のおじさんがユダヤグッズ店を営んでいた。水色のポロシャツを着ている、笑顔のやわらかいおじさんだ。店頭にはイスラエルの国旗が並べられ、トーラを幾言語にも翻訳した小冊子などを土産物として売っている。

ユダヤ教徒であるその男性も、悲しみを表す黒い服を着て黒い帽子をかぶる超正統派の人々は、自分の文化とは違った考えをもっている、と言った。それでも同時に、神殿の丘にあった第一、第ニ神殿が破壊されたことを嘆き、そこに第三の神殿がいつの日にか建てられることを信じている。

日本からも新宗教、幕屋の人々がエルサレムに団体で訪ねて来るんだと言った。ユダヤ人を選ばれた民族だと信じて、特別な服を着て来てくれるんだ、と嬉しそうだ。

ムスリム地区にユダヤの店を開くというと、なにやら危ないような気がするが、その男性は、キリスト人街の半分くらいはイスラム教徒だったりするものだから、明確な区分けはないんだよ、と言った。土産物屋の品物は確かにどうにも混ざっていて、ダビデの星をあしらった帽子やユダヤのろうそく立ての横に十字架が売られていたりする。

そして猫は地区の境目をするりと抜けて出没する。

ユダヤ人地区にある、4つのシナゴーグが地下に建てられた集合体や女性トーラー協会を訪ねる。ユダヤ人地区は比較的もの静かなようすだった。でも、フルヴァ・シナゴーグの前に腰掛けていると、若い男性4人グループが黒スーツに黒帽子のいでたちでラップ風の音楽のPV撮影をし始めた。ノリノリにジャンプをして、手を前にかざしてカメラに寄っていく。そのうちに太鼓をたたいて歌を歌うユダヤ人の別の集団が通り過ぎて行った。

キリスト教アルメニア人地区の教会から鳴る鐘を聞き、カラフルなアルメニアの陶磁器、キリスト教用品を眺めつつ、西のヤッフォ門から城壁を抜ける。

辺りは静かな高級住宅地が広がり、赤や紫、オレンジ色の花が咲き乱れ、シナゴーグがある。

米国人がオーナーであるJerusalem Global Management,LLCは、その物件を貸し出してもいる。1軒家には、広々としたキッチンやリビング、ダイニングルームが備えられ、たいていテラスがついている。その上、ゴージャスな浴槽やビジネスルームが備えられていたりする家や、ガラスケースにトーラーが納められた家もあり、一日500ドルから1000ドル以上でレンタルしている。インドや中国、それからドイツなどのヨーロッパの家族などが借りることが多いという。

その他、エルサレムには、個人宅を改造して各部屋にキッチンをつけたような宿泊場所もある。向かいに旧市街のダビデの塔を望めたりする。

明日、エルサレムではJerusalem hug 2012というイベントが行われる。国籍や宗教を超えて人々がハグをし合い、手をつなぎ合う、というイベントだ。イブラヒムさんも主催者の一人として携わっていて、その前夜祭にお誘いをもらう。

一度イブラヒムさんの家に帰って、バナナストロベリージュースとピラフをいただいてから、会場へ向かう。手配をしてもらったワゴン車に乗り込み、30分ほど、一軒の家に到着する。イブラヒムさんは、携帯の着信音を消すにはどうしたら良いのかと3台の携帯をわたしたちに差し出す。

その家は、広くて清潔な家だった。部屋の真ん中に大きなグランドピアノが置かれ、ダライ・ラマの「Never Give Up」が壁にかかっている。庭の草むらにはプラスチックの椅子が並べられ、既に50人ほどの人々が集まっていた。前に立っている女性がパソコンをいじりながら、ゆったりとした音楽を流す。

ワン・トゥー・ワン・トゥー・ワン・トゥー。
チャクラを感じてください。
ジーザス。

女性のわきには車いすに座る男性がいる。音楽が進むにつれ、男性はある時は音楽に合わせて首を動かし、ある時は顔をゆがめ、ある時は笑いだす。そのうちに辺りが声をあげて大きな笑い声に包まれていく。

草の香りがして、風が吹き抜ける。

両手を上に挙げる人もいれば、口を大きく開けて空を見上げる人も、あー、あーと声を漏らす人もいて、それぞれに快楽状態に入っていく。イブラヒムさんは、時折首を動かしながら、観客席でそれを静かに眺めている。曲が終わるころ、前に座っていた女性は抱えられるように退場する。

最後に車いすに座った男性がイブラヒムさんを呼んで言う。彼にはお金の面で支援をしてもらっているんです。

そして、みなで手をつなぎ、そこここでハグが始まる。後は庭のわきにクッキーなどのスイーツやフルーツが広げられ、お茶を飲みながらの軽食時間になる。

22時を過ぎたころ、バンに乗って家に帰る。旧市街の空に花火があがった。