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廃墟ときらきらブランドの街 – Beirut, Lebanon

朝に宿でコーヒーをいただいてから、ベイルートの町へと歩き出す。この街は1975年から15年間にわたる内戦で街は破壊されて無人地帯となり、その後もイスラエルの空爆などが続いている。

れんが造りの聖ジョセフ教会を訪ねた後、すぐそばの、丸いドームが明るい水色に輝くムハンマド・アミーン・モスクを眺める。内戦当時、街はイスラム教徒の西部とキリスト教徒の東部に分かれ、戦っていた。

ムハンマド・アミーン・モスクの隣には白いテントで設置されたハリーリ前首相の霊廟がある。ここで、ハリーリ前首相は2005年に暗殺された。ハリーリ前首相の大きく引きのばされた写真が壁にずらりと並んでいる。同じように犠牲になった人々もそこに祀られている。

復興によって作られたようなその街並みは、新しくて整然としている。フェラーリ、シャネル、アルマーニ、エルメス、Bang & Olufsenといった名ブランドがずらりと並び、そのうえバージン・メガストアやダンキンドーナツまで新しい店舗を構えてみせる。

携帯片手に髪の毛をぴしりとまとめて黒いスーツをさらりと着て歩く男性のそばを、迷彩服の軍人が通り過ぎていく。真新しい建物にきらきらした店が並ぶ道を進み、そのままWaygand、Bab Idriss通りを西に進みハムラ地区へと進んでいく。

すると、内戦時の空爆で廃墟と化したホリデイ・インの高層建築が、真新しい建物の背後にどんと現れる。新しい建物と廃墟となった建物が入り混じる。

街の壁には色とりどりの落書きがほどこされ、「I love war」「暴動を尊重しろ」「レバノン無政府主義者連合」「レイプと戦え」「私の作る壁がパレスチナ人を殺している」「イスラエルをボイコットせよ」「ベイルートを占拠しろ」といった過激な言葉がおどる。

それでも、街ではピザ屋に人々は並び、チーズやオレガノ、トマトなどののったピザをくるりと巻いてかじりつく。道ばたにはいかにも美味しそうな小ぶりのパンが並べられている。明るくWelcome to Lebanonと声をかけられ、ハムラ地区のコスタ・コーヒーやThe Coffee Bean & Tea Leafといったコーヒー屋にはのんびりとカップを手にする人々がいる。

街の店にはART in IRAQ TODAYと書かれた展示会の洗練されたポスターが貼り出され、昨日からはベイルート・デザイン・ウィーク2012も始まっている。そのシンプルでモダンな構成のオフィスでは、持続可能な消費活動、教育や都市空間、交通機関、性や移民、資産管理、障害といった問題とさらりとデザインと結びつけているようすが展示されている。そこでは洒落た服を着た若者が活動し、海外の旅行者も惹きつけている。

バスに乗ってジェマイゼ通りまで戻り、レバノン家庭料理がいただけるというレストラン、ル・シェフを訪ねる。場所を聞くとたいていの人があっちだと指をさしてくれる。松の実とパンの入った濃厚なチーズのようなヨーグルト、ファッテ、それになすのペーストをオーダーする。ラディッシュにバジルの葉、小葱にオリーブと薄いパンがついてくる。にんにくやスパイスがしっかり効いているわりにまろやかに仕立て上げられている。

欧米のメディアでもとりあげられるほどの有名店だというが、地元の初老の男性が一人静かに食事をしたりしている。ゆったりとご飯とお肉を食べてから、最後にコーヒーでしめ、店員としばらく談笑してから、店を出て行った。

こうしてトルコへのフライト時間が近づいてきた。今日26日、シリアの首都ダマスカス郊外で、昨年の反政府デモの開始以来、最も大きな規模の衝突が政府軍と反体制派によって発生したという。

そんな日に、シリアをとばしてトルコへと渡る。

バスをつかまえて空港に向かう。バスには迷彩服を着た軍人が数名乗りこむ。道中でも、新しいビルの合間にふいに疲れ果てた廃墟が現れ、そのまた隣にはクレーン車がにょきにょきとそびえている。

空港は新しく、明るかった。麻薬犬がくんくんと嗅ぎまわっている。大きな荷物の荷物確認をした後、チェックインカウンターへと進む。ミドル・イースト航空というなかなか知られていない会社だが、レバノンのれっきとしたフラッグキャリアなもので、カウンターにはレバノン杉をあしらったそのロゴがずらりと並んでいる。

チェックインを終えて、出国カードを埋めてイミグレーションに進む。レバノンが初めての訪問か、訪問の目的は観光かを尋ねられる。それに答えれば、無事に出国だ。

そして搭乗口の近くで再度手荷物検査がある。この空港には、女性専用の通路は、ない。

空港には化粧品やらレバノンスイーツ屋やらがあり、Wifiがとんでいるほどの洗練ぐあいだ。そんな壁には、「ベイルートの記憶」と題して、廃墟と化していたかつてのベイルートの町の写真と、その場所の現在の写真が並べて展示されていた。

定時の17時40分ころに離陸すれば、すぐに海の上に出る。

夕食に、卵やツナのはさまったサンドイッチにきゅうりやプチトマト、オリーブ、甘いレバノンスイーツ、それにクッキーが配られる。それをオレンジジュースやコーラとともにいただき、最後はコーヒーをいただく。