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被災地を巡る 3

石巻の街はあちらこちらに、
石ノ森章太郎さんのキャラクターが
じっと立っている。

市役所に入れば、”高校生が作るいしのまきカフェ”があったり、
復興ふれあい商店街に入れば、
ボランティアの人たちがペンキを塗った
カラフルな自転車のレンタルをしていたりする。



自転車を貸してくれた親父さんも、震災当時のことを話してくれた。
店は破壊されたものの、
残った宝物をこの仮設の店でも高くに掲げている。

自転車を2台を借りて、マンガロードの商店街を走る。
商店街はお盆だからか、
閉まっているところがほとんどで、
ひっそりとしている。



それでも、
日和アートセンターとかわいらしく書かれた店の中では
若い女の子が絵を描いていたり、
老舗の尾張屋は、シャッター一面に手書きのペンキで
書いている。

「全国のみなさん
本当にありがとうね
石巻人も頑張ります」


昼前の時間になると、終戦記念日の黙とうを促す町内放送が
流れてくる。

丘の上にある、日和山公園まで上がっていく。
自転車ではあがりきれず、自転車を手で押しながら、あがる。

ひーひーしながら、ようやくたどりついた公園からは、
街の様子が一望できる。



押し流された舟が道の上に放置されているところもあれば、
雑草が生えるばかりの場所もある。
震災前の写真と見比べても、
その違いに呆然とする。

目前に見える、橋のうえで、一晩明かした人もいるという。
真っ暗な波が足元に幾度も押し寄せてくるのは、
それは怖いものだろう。

公園には、鹿島御児神社がそびえ、
紫色の朝顔も、あじさいも咲いている。





喉の渇きを癒しにファンタを飲んだ後、
再び自転車にまたがり、
坂を駆け下る。

仮設の石巻市立女子高等学校や
石巻市立女子商業高等学校、
墓石が散乱したままの墓地、
「すこやかに育て心と体」と掲げたまま、
布に覆われた門脇小学校。



雑草の広がる土地の向こうには、
製紙工場の煙があがっている。

草むらに近寄ってよく見てみると、
陶器やガラスの破片、倒れた家電、
家のコンクリート土台。

そこに「お地蔵さんプロジェクト」による
仮建立の真新しいお地蔵さんが現れる。












残された大木、
一階部分の破損している家、
大破している車、
橋にかけられた折り鶴、
鉄パイプのひしゃげた駐車場、
ゆがんだ道、
身体の半分を失った自由の女神像。






























どこを向いても、まだあの日の続きだ。

石巻まちなか復興マルシェに立ち寄り、
石巻うまいもん屋に行く。

行列ができていて、その繁盛ぶりが分かる。
石巻産のぶり、かつお、たこ、くじらに、
北海道産のほたてや生海老ののった、
豪快海鮮丼。
それから、石巻やきそば。
麺を二度蒸しすることで麺が茶色く、
そして、魚介だしで焼き上げる。
あっさりとしていて、ぺろりといける。

復興ふれあい商店街で
自転車を返却してから、
同じ商店街にある、
手造りパン工房パオに立ち寄り、
甘食、を買い求める。

そこの女将さんもまた、
当時の様子を語ってくれた。
逃げた時の様子をありありと語った。

そして、何度も繰り返す。
ここでお店をやり直せているのも
ボランティアの人のおかげ。

ボランティアの人たちが
口コミで広げてくれたの。

近所の方々と助け合って生きている。

このあたりは、
電車の便もずいぶんと悪くなっている。
気仙沼の先の陸前高田まで行きたかったが、
石巻からローカル線でまずは前谷地、
そこから乗り換えて、田んぼの中を走り、
柳津駅まで行くと、代行バスに乗り換えなければならない。

バスを待っている間に、徐々に日が暮れていく。
同じ待ち人のおじいさんが、
バス会社のおじさんの携帯電話を借りて、
話しこむ。

その後、10円玉だけ受け取ったというバス会社のおじさんは、
「まったく、普通の電話と違って
携帯の通話料は高いってことを知らないんだから、
やんなっちゃうよ」と
ぶつぶつと言っている。

そうこうしている間に気仙沼に着いたころには21時ころになっていた。
陸前高田までは終電バスもあるようだったが、
陸前高田は、街全体が破壊され、
駅にたどり着いても近くに宿がないようだった。

今夜は先を急ぐよりも、
気仙沼で一泊しよう。

いくつか宿にあたるも、どこも一杯だというが、
かどや旅館は、空いていたもので、
部屋に通してもらう。

そこからひっそりとした町並みに夕食を求めに行く。
街にはほとんど店がなく、
特に被害の大きかった、坂を下ったところは、
街灯も暗く、仮設商店街のほうにだけ、
光が灯っていた。

光のある方向へと歩き、気仙沼横町に入り、
にぎわいのある居酒屋を見つけるも、いっぱいだという。

そこの客の一人の青年が、
じゃあ、開いているお店に連れて行ってあげるよ、
と言った。

言われるままに、ついていく。

近くの別の仮設商店街に行くも、
やはり夜も遅く、閉まっている。

そこで、同級生がやっているという
とんかつ勝子に通され、
まあ、どうぞ座ってくださいと
店主の男性が言う。

よく来たね、
飲んでいったら、
とジョッキにサワーを入れて、
差し出してくれた。

ごくりごくりといただく。
旨い。

明るい奥さんと、
過去にイロイロあった、優しさ満点旦那さんと、
その後もわたしたちを素敵なバー、カプリコンに連れて行ってくれた
酔っ払いぎみの素晴らしき男性。

気仙沼での思いがけない
夜更かしトーク。
バーは満席でわいわいがやがや、
互いの会話の声さえ聞きづらい。
でもこのお店にいる時間が、
人と人とをつないでいく。

ピザにカルパッチョ。
仕上げは今夜もセブンイレブンでアイス。