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被災地を巡る 4

今回宿泊をした、かどや旅館の女将さんは、言っていた。

坂の下のところまでは水が来ていたんですよ、でもこの宿は坂の上にあるから、水は来なかったんです。

気仙沼駅から陸前高田まで
BRTに乗っていく。

便数は多くはなく、
セブンアップに、クッキーにごませんべいをほおばり、待つ。











BRTがちょうど奇跡の一本松を通るので、
一度下車をする。

たくさんの人々が松の近くで車を降りて、
松のほうを向いていく。

りくxトモの灯が松までの道を示している。












高田松原を失った陸前高田に残された一本松。
この松も、海水の傷みによって枯死してしまったというが、
保存をされることになった。

アスファルトの道は途中で途切れ、
橋はひしゃげ、
地面はべろりと剥がれ、
たくさんの鳥が空を飛んでいく。

再び、BRTに乗りこみ、
陸前高田駅まで向かう。





かつてあった列車の駅は今は無く、
BRTの駅も、山を切り崩してつくられ、
隣には仮設の観光案内所と市役所くらいしかない。
通りを歩く人はほとんどない。
もともと人が住んでいた場所ではないのだ。

観光案内所で、最寄りの食事処を尋ねると、
10分ほど歩いたところに未来商店街があると聞き、
そこまで訪ねることにする。



カラフルな仮設の商店街には、
カフェレストランや
整骨院、食事と本と酒の店、
鮨屋などが並ぶが、
他の街の仮設商店街が
観光客で賑わっているのと比べると、
どうにもひっそりとしている。






寿司が食べたいとなって、鶴亀鮨に入る。
いくらや蟹や海老、サーモンや卵ののった
上チラシを注文する。

仮設店舗の二階に通されるも、
その中は、新調された座敷で立派だ。
木の扉を開けて、入る。

二階の注文は、一階の厨房から、
からころと木の箱に食事がのせられて、
運ばれてくる。

醤油がなかったので、一階に電話をかけてそのことを伝えると、
どこから来たの、東京、
東京では醤油を使うの!
とおじさんが言って、電話を切った。

すると、すぐに下からからころと木の箱に醤油瓶がのせられて
運ばれてきた。

そこに手紙も入れられていた。

「ごめんね
高田も
しょう油
つかいます」




美味しく平らげた後、一階に降りて行くと、
にこにことした大将がいた。

ごめんねえ。

大将は、今、文章を書いているのだという。
できあがったら、送るからさ、住所を書いてよ。

送られてこなかったら、できてないってことでさ、
と言ってまた笑った。

そこから、走ってBRTのバス停へと戻る。
なにしろ本数はそれほどない。

ぜいぜいとして、気仙沼行きのバスに間に合う。
今日は平泉まで行きたいが、気仙沼から先のJRには
ぎりぎり間に合わなかった。

さて、どうしたものかと思っていたら、
一関までのバスはあるらしく、
それに乗って、一関まで行き、
そこからローカルバスに乗り換えて、
平泉に向かうことにした。

一関までの道中、
川沿いで花火大会が開催されるというので、
浴衣の人々が集まり始めている。
一関に到着してからも、浴衣の人が多い。

わたしたちはその花火大会とは逆の方向にある
平泉にバスで向かうも、乗客は二人のみ。













無事に平泉に到着し、観光案内所で案内をしてもらった
志羅山旅館に宿をとる。

宿からほど近い毛越寺では、
法灯会が行われていて、
灯篭で蓮の花や星などが形作られていた。













浄土庭園大泉が池には、
お坊さんが並び、お経を唱え、
池には木の筏にのった二人が、
灯篭を一つずつ池へと置いていく。

辺りにはお経が響き、
灯がゆらりゆらりと揺れる。

この日は大文字もあると聞いたので、
よく見えると言われた橋まで歩いて行く。

世界遺産であるはずのお盆の平泉の街は、
なぜかとても静かで、人通りがほとんどない。

人気もなく、静かなもので、道があっているのかわからないまま、真っ暗な道を歩きつつ、頼りになるのは、通りの街灯と、道の隅に置かれた灯篭だった。

ようやくたどり着いた橋からは、
大文字だけではなく、さきほどの花火大会の花火も見える、
素晴らしいスポットだった。

それでも、見に来ているのは30人程度だった。
それから数十分、橋の上で花火を見ながら、
大の字の火がつき、そして消えかけるまで眺めていた。

そして、ふと後ろを振り返ると、周りにはもう誰もいなくなっていた。
大文字はまだ全て消えたわけでもないし、
花火大会もまだ終わっていないのに、
誰も、いない。

そして、さきほどの道へと戻ると、今度は
道の隅に置かれていた灯篭が
きれいさっぱりになくなっている。

なんともあっさりとしている。

こうして、開いている食堂は韓国料理店だけとなり、
ソウル食堂へと入り、
ビールと冷麺をいただくことにする。

隣のおじさんが酔っ払い、明るく話しかけてくるのを、
きれいな奥さんが止めに入る。

この旅最後の街、平泉の夜は更けていく。