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鐘と花火と爆竹の年明け – San Jose / Palmar Norte / Sierpe, Costa Rica

文化広場にある時計に「1-01 0:00 +21C」と表示される。
そして人気のないサン・ホセの街の真ん中が、鳴りやまない鐘と花火や爆竹の音に包まれた。

次の目的地であるコルコバード国立公園への入り口の町シエルペまでの経由地点、パルマル・ノルテの始発まで、時間を過ごせるレストランを探そうと、サン・ホセの街をそぞろ歩く。

歩いても開いている店らしきものはなく、歩いている人さえわずかだ。それでも、そのわずかな人たちは、明けましておめでとう、と挨拶を互いに交わす。

中心街の東側の民主広場の裏手に、イルミネーションのついた中国語の文字が見えた。行ってみると、2時まで開いているという中華料理店、皇朝だった。

中に入り、年越しそばの代わりに海老のワンタンスープ麺を注文し、餅の代わりにチャーシューの入ったCrepa Blancaを注文する。香港系の人々がそこで料理を作っていることもあり、味は本場のものだった。最後にはメロンとパパイヤがふるまわれる。久しぶりの中華料理は、味がやわらかく、繊細だった。

それでもやがて閉店時間が来て、わたしたちは路頭に迷うはずだった。

ちょうどお会計をとったアルフレドくんが、同僚であるルイス・フェルナンドさんがバスターミナルまで車で送るから、バスの時間を見てくるといい、と言った。バスがないなら、また車で送り戻してあげるから、と付け加える。

くるくるとした髪の毛、大きな身体に大声で笑いながら話すルイスさんは、街にあるいくつものバスターミナルを回り、そしてあちらこちらの人々に突如「アミーゴ(友だち)!」と話しかけながら、どのターミナルに行けばよいのかを尋ねる。

あるときは車の窓を開けて隣の車の運転手に、あるときはわたしたちを車内に残したまま下車してターミナルの中にずんずんと歩いて行き、始発のバスを尋ねる。

バスは、朝の7時までなかった。

バスの始発時間が分かってからも、ルイスさんはわたしたちにつき合い、同性愛者が多いという道を通りながら、24時間開いているディスコテカ併設のカフェに連れて行ってくれた。

そこで、ルイスさんは今日6杯目だというインペリア・ビールを、氷を入れたグラスにトクトクと注ぎ込む。
わたしたちには、温かなコーヒーミルクをごちそうしてくれた。

ルイスさんは現在42歳、二人のお子さんはすでに独立しているという。奥さんが家で待っているけれど、大丈夫、大丈夫、と変わらない様子で大きな口で豪快に笑いながら、言う。

時折、コスタリカはPura Vida(Pure Life)だと手を左右に動かしながら、訴える。それでも、最近は麻薬や窃盗が増えていると眉をひそめながら、言う。プンタレスの出身であり、近くのモンテベルデと同様に、プンタレスは人も優しいし、場所もすばらしいと、また笑う。

奥のディスコテカでは、若い女性も年上の男性も、腰をふって踊っている。ルイスさんも左胸に手をあてて、時に目をつむって陶酔した様子で踊る。

始発の時間が近づくと、車を見張るように頼んでいた交通整理のおじさんにコインを握らせ、再びわたしたちをバスターミナルに送ってくれた。

こうして、新しい1年が始まった。

ターミナルでは、テレビでドラえもんが流れている。「空中シューズ」という日本語字幕が流れ、ドラえもんものび太も、流暢なスペイン語を話している。

Tracopa社のバスは定刻に出発し、快適な走りをみせる。途中ブエノス・アイレスで林檎と洋梨を齧り、再び眠りにおちるわたしたちを、パルマル・ノルテまで川を越え、山を眺めながら、運んでいく。

5時間程でパルマル・ノルテに到着する。ここからシエルペまでのバスは明日にならないと来ないという。フィンランドからのカップルが同じようにシエルペに向かおうとしていたので、タクシーをシェアすることにする。

フィンランドとコスタリカの気候などについて話をしていたら、 20分程でシエルペに到着する。今日はここで宿をとり、明日コルコバード国立公園に向かう。

夕食は、川の見えるレストラン・ラスベガスで、チキンとサラダ、ライス、フリホーレス、フライドポテトのセット、Casado con Polloをいただく。ビールは、お気に入りのインペリアル・ビールにする。

オーナーのJorge Uribeさんは、コロンビア出身らしい。シエルペという町で、コルコバード国立公園へのツアーから、ホテル紹介、レストランの経営など、この町の商売の多くをつかさどっている。レストランは繁盛していて、他のレストランは、それに到底及ばない。

宿を探していたわたしたちに幾つかの適した宿の情報を提供したうえで、宿マルガリータまで、車を出して運んでくれた。

期待を上回るサービスを常に提供し続ける。シンプルだ。
シエルペに来て既に10年以上というコロンビア人Jorgeさんは、地元の人には見えなかったものを、この地に見出したのかもしれない。

鳥のなく声が聞こえるだけの、静かな町の夜を迎える。