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プーノの夜 – Isla Taquile / Puno, Peru

5時半ころ、既に雨は止み、外は明るくなり始めていた。

地元の人々は、実際にはもうトトラ舟ではなく、木でできたボートに乗っている。あるボートは手漕ぎで、あるボートはモーターボートである。

雲から明るい太陽が顔を出し、それが湖に反射して、二つの太陽が眩しく輝いている。徐々に太陽はあがり、暗かった湖の向こうのプーノの町や山を明るく照らし始め、ぽかぽかと暖かくなっていく。

どこかの島に停められていた観光用のトトラ舟が、どんぶらこと湖をどこかへ流れていく。
青く晴れ渡った空に飛行機雲が一本の線を引いていく。

朝食は、朝に練られたタクテの揚げパンと、水鳥の卵のオムレツにフライドポテト、ライスが盛られている。そしてインスタントコーヒーに、缶に入ったミルクを入れて、温かなミルクコーヒーを作る。

食事をしていると、このTupirmarka島にガソリンを買いに来て、そのまま今日はボートで漁をしにいくという男性に話しかけられる。カラチやペペレイといった魚を捕り、16時には戻ってくるという。

今日は、この島のある、ウロス島の南側が観光客を受け入れる日なので、朝からジョバンナさんもルイスさんも、子どもたちもそわそわと慌ただしい様子である。

この島から更に東へいった湖の中ほどにあるタキーレ島へ出る舟が迎えに来る。ルイスさんやジョバンナさんに礼を言って、舟に乗る。

甲板に出て、湖を眺める。風が強く、まだ寒い。すると、アルゼンチンから来たというカップルに、マテ茶をどうぞといただく。苦味のあるマテ茶が身体をじんわりと温めてくれる。

ウロス島もプーノの町も徐々に小さくなっていく。

晴れているところもあれば、局地的に雨の降っている場所もある。
湖は茶色からやがて深い緑、そして明るい緑色へと変化していく。
右手には、チュキート半島、左手にはアマンタニ島をみながら、舟は進む。
湖で洗濯をしている女性もいる。
こうして3時間ほどでタキーレ島に到着する。

この島はユネスコの世界無形遺産に登録されるほどの織物で知られる島である。ただ、近年に入ってから50年ほど前まで政治犯の島流しの地になっていたそうで、今もインカ時代の名残であるシステムが根付く伝統的な生活が守られている。

既婚の男性は赤い帽子、未婚の男性は白と赤の帽子、権力者は黒やカラフルな帽子を頭に載せ、既婚の女性は黒や茶といった落ち着いた色のスカートを、未婚の女性は明るい色のスカートを身につけている。

農業をもとにしたカレンダーの刺繍がほどこされたベルトも身につけている。既婚の男性は、特別な日には奥さんの髪の毛で編んだベルトを巻きつけるのだという。

ボートが桟橋に着いて、そのまま島の頂上まで500段ほど、45分くらいをかけて、のんびりと歩く。石は新しくなっているものの、かつてのインカ道の石畳をなぞって歩く。

女性たちが手先を使って、糸車を回し、じょうずに地面に落下させながら、糸を糸車に巻いていく。辺りにはプレインカの石の土台が残り、薄紫のじゃがいもの花やとうもろこしが湖に向かう段々畑に植えられ、羊がのんびりと暮している。

ひょいひょいと糸車を回しながら歩く年配の女性を追いながら、教会もある頂上へと辿り着く。

昼食は、頂上付近のレストランMy Houseで、湖を眺めながらいただく。ウロス島と同じように、メニューは「マスかオムレツか」ということで、再びマスをいただくことにする。これもいつもと同じく、フライドポテトにライスにサラダがついている。そして、キヌアのスープにコカとミントを合わせたお茶がついてくる。

島の人々が守ってきた伝統は、観光業にとっても魅力のあるものであり、観光業によって伝統がより保護されるようになったのだという。収入源ともなる観光客の訪問は、多くの島の人々に歓迎されていると聞く。

昼食の後は、島の反対側にある桟橋へと階段を下っていく。

この島では、お手洗いは各家に一つ小屋のようにしてある。ウロス島の人々はシャワーにティティカカ湖の水を使っているのに対し、このタキーレ島では湧き出る水を溜めて1週間に1度浴びるのだという。

各家庭はソーラーパネルを使った電気を使っている。かつての政府が各島に10つずつ寄付をした以降、各家庭は自分でパネルを購入しなければならず、それは大変に厳しいのだという。

桟橋に乗りつけていたボートに乗り、プーノへと向かう。昨晩泊まったTupirmarka島近くを通る。もう見えないルイスさんやジョバンナさんたちを想う。プーノに近づくにつれて、底が浅くなり、ボートはときどき止まり、添乗員の男性が底をつついて進む。

豚は変わらず、草を食べ続けている。
徐々に雲が暗くなり、ぱらぱらと雨が降り始める。
もうウロス島もタキーレ島も、見えない。

旅行会社のバンで、バス会社Pan Americano社のオフィスまで連れて行ってもらい、明日のボリビア、ラパス行きのチケットを購入する。

夕食は、メインストリートであるリマ通りのDon Pieroでいただくことにする。茹でたじゃがいもにチーズソースをかけて、ゆで卵やレタス、トマト、オリーブを添えたワンカーヨ・スタイル・ポテト、炭火焼のチキンやバナナフライ、トーストにアボガド、サラダ、目玉焼きにライスまで盛られたボリュームたっぷりのチキン・ア・ラ・ドン・ピエロをオーダーする。それに、ぶどうの蒸留酒ピスコに卵白とレモンを入れてシェイクしたピスコ・サワーを合わせる。

その後、ケーキを食べに、近くのカフェSweet Cafe Restaurantに立ち寄る。ブルーベリーソースのかかったチーズケーキと、チョコレートケーキにカモミールティーを合わせる。

外は冷えているものの、ぽかぽかと心温まるペルー最後の夜だった。