Top > ブログ

ティカル遺跡の、ルイス先生講座 – Tikal / Flores, Guatemala

将来結婚をするなら、奥さんとティカル遺跡の日の出を見たい – とメキシコで会った旅人キムさんが言っていたので、日の出を見ようと思っていた。

マヤ最大の神殿都市遺跡であるティカル遺跡の通常営業時間は6時から18時までだが、日の出を見るためには6時前に入らないとならない。昨晩暗闇のキャンプ場を歩いていたわたしたちにルイス・ラミレスさんが声をかけてきた。

ルイスさんから、6時前に遺跡に入るにはガイドをつけなければならない。ぼくは明日ガイドをするので、良かったら一緒にどうですか。ブラジル人の3人が既に一緒に行くことになっています、とお誘いを受ける。お願いを、する。

ルイスさんはUniversidad Rural de Guatemalaで環境エンジニアリングを学びながら、フランス語、ドイツ語、英語を教える先生でもある。そんなルイス先生と、朝の4時に待ち合わせをした。

4時。外は大雨が降っている。日の出を見るのは無理だろう。ルイス先生が寝ている蚊帳のはられたハンモックでも、先生が起きている気配がない。諦めかけた4時半頃、ルイス先生が突如わたしたちのテントへやって来て、朝に雨が降っているのは普通のこと。日の出は必ず見られる、と断言した。

わたしたちはブラジル人3人と、雨の降り続ける暗闇のティカル遺跡をルイス先生の引率にしたがって、ジャングルの中に入っていく。

コンプレッホと呼ばれる4つの建物が一組になっているプラットフォームで、ルイス先生の熱心にこやかマヤ講座を受けながら、ジャングルの中を懐中電灯と月の明かりを頼りに進んでいると、ルイス先生の言ったとおりに雨がやみ、そして、辺りが明るくなっていった。

こうして、キムさん絶賛日の出は、天候というより、ルイス先生の熱心にこやかマヤ講義によって、あえなく見逃すこととなった。

それでも、コロンブス以前のアメリカ大陸では最も高い建築物であったⅣ号神殿にのぼると、ジャングルの中にうもれた遺跡が霧に包まれているのを見渡すことができる。そして次第に霧がうすれ、Ⅰ号、Ⅱ号、Ⅲ号神殿がぼんやりと浮かび上がってくるのである。オオハシやオウムがビービービービーと鳴いている。

ジャングルの中にある遺跡、とティカル遺跡が説明されるが、ティカルが大都市であった当時はジャングルはなかった。ジャングルは、まだ若いんだよとルイス先生は言う。

先生は、博学であった。マヤ語の分類や分布について、マヤ語と日本語には複数形や冠詞の用いられ方に共通する点があるということについて、マヤ文字である象形文字を書きながら説明をしてくれる。モパン川の「モ」は鳥を意味し、パンは「山」を意味するという。

ハナグマの群れが現れた。プクプクと音を立てながら、食べることに熱中しているが、相当に凶暴らしく、しっぽが切れているものや、ひっかき傷を負っているものも多い。喧嘩をしているハナグマもいる。

「しろありを食べます」。ルイス先生はそう言う。途中、ギーという大きな叫び声が聞こえ、一匹のハナグマが疾走していった。「へびに噛まれたのかもしれません。」ルイス先生が付け加える。

Old Spiceという名の香り高い葉をちぎって、頭痛や虫さされに効果的であることを教えてくれる。

続けて、ルイス先生は、教えてくれる。端がこうもりに噛まれたヤシの葉を拾い上げ、こうもりが「テント・ビルダー」と呼ばれていること。こうもりがヤシを使って家を作る様子をマヤの人々が見て、その曲線を真似てマヤ・アーチを作り出したこと。

Breadnutという木にTree Earと呼ばれるキノコがはえていること。マヤの人々は赤い石を水銀として加工していたこと。石を採掘した後は、その穴を貯水池や貯蓄所、お手洗いなどとして利用していたこと。

加えて、参考文献を教えてくれた。
*”Breaking the Mayan Code” by Michael D. Coe
*”The Mexican Dream: Or, The Interrupted Thought of Amerindian Civilizations” by J. M. G. Le Clezio

そして言う。「Nature does everything. You just have to find it.」

約16平方キロメートルに80のプラザ、3000もの建築物がある巨大なティカル遺跡を見て回り、Comedor Tikalで、焼いた鶏に玉葱をのせたものにライスとフライドポテトを合わせたものを食べてから、最寄りの街、フローレスへ向かう。

16時に発つバスが見つかったので、それに乗り込む。

フローレスはペテン・イツァ湖に浮かぶフローレス島を中心とした町である。グアテマラ・シティに向かう夜行バスが、23時に出るので、それまで夕食を食べにいくことにする。

既に日が暮れたバスターミナルからトゥクトゥクに乗って、湖に向かう。暗い湖の向こうに橙色の灯りがぽつりぽつりと見え、ほとりにはおしゃれなレストランが並んでいる。

わたしたちはその内の一軒、San Telmo Bar & Restaurantに入り、「Crazy Brritos Chapin」という名の野菜と牛肉にのブリトーをオーダーする。飲み物はGalloビールと、Dorada Draft。店の奥では誕生日会が行われているのか、ノリノリ音楽に合わせてキャーキャー、ホイホイと大賑わいである。

トゥクトゥクは20時までしか走っていないので、食事を終えたらタクシーでターミナルに向かう。

グアテマラでは、治安上の問題から、バスはプルマンと呼ばれる1等車を使ったほうが良い。ルイス先生も普段使いしているというプルマン、Rapidos Del Surバスは、内装がシック、かつご丁寧に極度に車内を冷やして、グアテマラ・シティへと向かうのである。