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コロンビア、コーヒーノキ – San Peregrino / Manizales, Colombia

朝食も、ランチョンマットが敷かれている大きな木のテーブルをみなで囲んでいただく。すりつぶしたとうもろこしを焼いたArepaにチーズ、ハムの入ったスクランブルエッグ、マンゴーにパパイヤ、そしてコーヒーである。

今日は朝からこの地域では珍しく停電しており、エスプレッソマシーンは使えない。宿の壁には「コーヒーをできるかぎり飲むことを忘れずに」と大きくうたわれている。

でも、コロンビアでは朝食にはコーヒーよりもチョコレートを飲むことが多いのだという。

日本の株式会社ニチロがつくる「珈琲園ブラック」は「どこの農園で育ったコーヒー豆かわかるそんな今までになかった缶コーヒーを提案します。」と題して、農園名にここ、ベネチア農園を表記している。そんなわけで、この農園には日本人がビジネスで訪ねてくることがあるのだという。

今日は朝からコーヒーについて学び、農園をぐるりと巡る。ガイドをしてくれるのは、英語とフランス語を勉強していて大学教授を目指している24歳、細身のRuben君である。

コーヒーの歴史、世界のコーヒーについて、アラビカ種やロブスタ種といったコーヒーの種類、質の高いコーヒー豆と虫などに食われたコーヒー豆の選別方法、北から始まったコロンビアのプランテーションの歴史について、次々と語ってくれる。

この農園では、一度ローストすると時間がたつにつれてアロマを失うのでローストせずに輸出すること、UTZの認定を受けていること、赤道の北と南5度の地域で可能な年2度の収穫が可能であること、手作業で収穫を行っていることを、そしてマーケティングが成功した事例としても取り上げられるDDB WorldwideによるCafe de Colombiaのロゴに描かれていたJuan Valdez氏について、丁寧に語る。

収穫された質の高いコーヒー豆はほとんど海外に輸出され、国内で流通するほとんどが比較的低品質の豆なのだという。

それでもここ15年ほどで高品質の豆がずいぶんと国内市場に出回るようになったのだそう。コロンビアのコーヒー豆輸出量はトップ5以内に入る。

コーヒーにもワインと同様に香りがあります、と言って、Ruben君は、木の箱を取り出し、数字の振られたガラス瓶をテーブルの上に並べる。中に入った液体は濃い茶色から薄い黄色まで様々で、鼻を近づけると、キャラメルやチョコレート、バニラやピーナッツ、アーモンドやバター、メープルシロップやペッパー、葉巻、コーヒーの花やレモン、アプリコット、林檎、革などそれぞれの香りがする。

室内講義が終わると、Ruben君はみなを広大な農園と作業場へと連れ出す。

種を植えて50日後芽が伸びて10日で葉が開き、黒い袋に植え替えて10ヶ月間を待ってから、質の良い苗の実を選んで、プランテーションに再び植え替えるのだという。この際に背が伸びすぎているものはコーヒーの実を多くつけないので、はじかれる。

そして、1年半後に初めての収穫が行われ、その後5年間の収穫を経ると、伐採されて、2つのコーヒーの木の間に新たな苗を植える。

収穫は昼間に行われ、夜に作業場の大きなタンクや機械を使って選別や乾燥などが行われる。

農園には、築100年を超す母屋がある。コロンビアの国花であるラン、カトレヤや、蚊を避けるための赤い花々が鉢に植わり、家を飾っている。白い壁に赤色の柱がたつその家はカラフルに色を増し、庭には首の青いくじゃくやピンク色をした七面鳥がいる。

ところどころに見られる竹林は、フェンスや家、ベッドなど使われ、重宝されている。赤に緑の葉をつけるヘリコニアが、木々の中で鮮やかに垂れ下がっている。

昼食は宿に戻り、じゃがいもやとうもろこしにチキンのスープ、Ajiacoと、とうもろこしとアボガド、Arepa、パッションフルーツのジュースにバニラアイスクリームとuchuvaの実をいただく。

Ruben君と昼食後に話をしていると、見せたい景色があると言って、わたしたちをまた広大な農園へと連れ出してくれる。今度はわたしたちだけなので険しいところも歩けると山にぎっしりと植わるコーヒーの木の間を登り、辺りを見渡せる場所へと向かう。

Hacienda Veneciaでは年間を通じて50人から70人が働き、収穫時には400人が働く。1年に2度の収穫時期があるため、収穫時期が1度の他の農園から人を集めたりするのだという。

敷地内には9軒の家がコーヒーの植わる山に点々と建てられ、9人のマネージャーの家族がそれぞれに住み、その一帯を管理している。マネージャーはオーナーから支払いを受け、更に各マネージャーが一帯の農園を管理する。

労働者は収穫時期には1kgで400ペソといった具合に重量で収入が決まり、収穫の時期以外には1日8時間8ドルの給料が支払われている。

コロンビア国立コーヒー生産者連合会が農家から買い取る平均金額は80kgでおよそ150ドルだという。

鳥がグアバやマンゴー、マンダリンやプラタノの種をつばみ、それをあちらこちらにばらまくため、農園内には意図しない木々が生えている。歩きながらグアバを木からとって食べたり、Corozoという名の実を砕いてナッツをつまむ。

黒いコンドルが木に遠くとまっている。

オーナー息子さんの1949年製ジープで宿に戻る。18時ころ、Hacienda Venecia近くの橋からManizales行きの公共ジープにぎゅうぎゅうと乗りこんで、砂利道を越えて、山間に広がるコーヒー農園を眺めていると、30分ほどで突如目の前に町が広がり、Manizalesの町に着く。

この町はメイン通りが峰の上に位置しており、両側が長い下り坂になっている。ボリバール広場にある、Catedral de Manizalesという106mで国内で最も高さのある教会を通り、次の目的地であるボゴタへのバスが出るバスターミナルまで、新しいケーブルカーに乗っていく。

同じ車両で一緒になった男性が、クリームの入ったチョコレートバー、Gansitoをわたしたちに差し出して、辺りの魅力を熱弁してくれる。

大きく新しいバスターミナルで入ったレストラン、Criollitaでは、店員のおじさんがあれやこれやと教えてくれ、コロンビア人は良い人たちでしょう?と言う。

確かに、この国では、立ち止まると、誰かが声をかけてくる。そして、驚くほど、優しいのだ。

サンドイッチとチーズ風味のBanueloをオーダーして、10時のバスを待つ。
ボゴタは標高が2640mで寒いと聞いたので、あたたかな格好をして、乗り込む。定刻を10分ほど遅れて、バスは出発する。