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軍人と黄金 – Bogota, Colombia

バスに乗り込んですぐに、黒い袋が乗客に渡される。
「酔ったときのためです。」
バスはそれなりの曲線を描いていく。

思っていたより車内は寒くない。

夜中の2時半ころ、がさごそという音で目覚める。男性の乗客が、荷物を車内に置いてぞくぞくと降りていく。

長細い銃を背中に抱えた、迷彩服に帽子を被った軍人5人ほどが、男性一人一人をバスの脇に立たせて、ボディチェックをしていくのだった。

そのうちに車内には子どもだけが残り、銃を抱えたままの軍人が荷物置場を入念に手で確認していく。身体の角度を変えるときに、銃口がふとこちらに向けられる。

バス後方のトランクも開けて、黙々と点検していく。それを乗客はただじっと、見る。

15分ほどの確認が終わって、軍人がありがとうございます、と言うと、みな安堵したかのように、声を揃えて、ありがとうございます、とお礼を返す。

こうしてバスはまた暗闇の中をボゴタに向けて進んでいく。6時ころ、辺りが明るくなってきたボゴタにバスは到着した。

「ようこそ、ボゴタへ。警察がお護りします。」と大きく書かれた垂れ幕に、黄色の蛍光色のジャケットを着た男女の警察官の写真が笑顔を浮かべ、掌には赤いハートマークが描かれている。

バスターミナルには、その通り、警察と大きく書かれたジャケットを着ている男性が大勢いる。彼らはバス案内役をかってでる。熱心な警察官や、ぼんやりしている警察官が入り混じっている。

旧市街のペリオディスタス公園へ行く、黒い車体に「20 DE JULIO / GERMANIA」と掲げられたバスの始発が7時だというので、声をかけられた韓国人リーさんと、それを待って乗車する。大きな荷物を抱えたわたしたちを見て、乗客が手を貸してくれたり、席を譲ってくれたりする。

30分ほどでペリオディスタス公園に到着し、満室の宿もある中、リーさんとHostal Aventureros De La Candelariaに部屋をとる。ここでも温かなコーヒーとパンにクリームチーズ、苺ジャムが用意されている。

ボゴタという大都会は、今までに訪れたコロンビアの街とは、違った。あちらこちらでお金が欲しいと掌を差し出され、道のはしで眠っている人々がところどころにいる。

サンタンデール公園近くの黄金博物館は良いというので、見に行くことにする。

道すがら、屋台でホットドッグを注文する。ごまの乗ったパンを開いて、ピンク色のソーセージをはさみ、チーズとフライチップをふりかけ、ケチャップや甘酸っぱいパイナップルソースにピンクソースをかけて、最後に小さな卵をちょこりとのせて、できあがる。

公園のベンチに座って食べていると、お金をください、と言われ、それから犬が近づいてくる。

黄金博物館という大そうな名前から、やや腰がひけていたものの、入ってみると思いがけずシンプルで落ち着いた雰囲気を保っている。2階では、コロンビアの各地の金製品を展示し、歴史と重ねて、解説をする。3階には、国宝でもある精巧な「黄金の筏」がある。

鳥人間の黄金から、宗教儀式にシャーマンが使用していた黄金の品々、死者につける黄金のマスク、愛嬌のある黄金細工、更にはミイラもある。

「黄金の部屋」という場所もあり、アトラクションとして、金製品の数々が壁一面にかけられ、また足元にも金製品が並べられ、そして半ば強引な音響展開が、なんとも楽しい。

2005年に大きく改修されたこの博物館は34,000もの金製品を展示し、各展示物をくるくると回転させて見ることのできるスクリーンや、洗練されたショップまであって、地元の若いカップルもデートをしている。

そこからほど近い1640年設立のサン・フランシスコ教会に入る。中ではミサが行われていたものの、壁には落書きがしてあり、扉に缶をもった男性が座っている。

サンタンデール広場では、映像を使った商品販売に人々が集まり、そこからCarrera7を北に歩いていったLas Nieves教会前の広場では、艶めかしい女性の人形と踊るおじさんの姿があった。

茶色がかったウェーブの髪に白いブラウス、ピンクのニットに茶色に赤い花柄のスカートをはいたその人形の女性の靴をまずおじさんは丁寧に磨く。

そして音楽をかけて観客を集め、それから女性と自身をくくりつけて、ゆっくりとダンスの一歩を踏み出す。時に女性の身体を引き寄せながら、時にキスをしながら、小刻みにステップを踏む。取り巻く観客のところへ時折近づいては女性のお尻を男性にすりよせたり、スカートをめくってみせたりする。その度に、歓声がわく。

その観客の周りで風船が売られ、お菓子売りが練り歩く。

歩道では、針金に写真をクリップで留めた、反戦争、反貧困、反差別、反政府、反グローバリゼーションの写真展も行われている。人々が足を止めて、見入っている。くたびれた服装の男性も、ボブ・マーリーの服を着た男性も、車いすの男性も、じっくりとみていく。

METROPOLの前にはフィンランドのApocalypticaのライブを待つ人々が長い列をつくり、その周りを多くの警察官が囲んでいる。インディペンデンシア公園近くのColpatriaの高層ビルは赤や青や黄色に外観の光の色を変えていく。

ボゴタでは、夜になると、多くのレストランが店を閉め、開いているほとんどがバーやパブといった飲み屋か、ハンバーガー屋といったファストフード屋になる。

地元の人に尋ねて教えてもらった、石畳の小道を抜けた先の、チャペルもあるPlazoleta del Chorro de Quevedoに面したレストラン、Rositaをなんとか見つける。なかなかに雰囲気の良い空間で、店内には暖炉もあり、ソファがそなえられたテーブルには、ランプも灯される。Cazuela de Frijolesというセットを注文し、ドリンクは、コロンビアのCostenaビールにする。

フリホーレスや肉と野菜の煮込みに、チョリソー、アボガドとライスはどれも作りこみすぎず、やさしい。

帰りがけに売店で、アーモンドやナッツの入ったジャンボという名のチョコレートバーを買って、宿であたたかなコーヒーといただく。

朝晩は特に冷え込む大都会、ボゴタの街で、コーヒーが身体を温めてくれる。