マルビナス(フォークランド)紛争は、忘れられていない。 – Buenos Aires, Argentina
朝は宿で砂糖やジャムのかかった甘いパンを数種類、ごまパンにフランスパンを、ミルクコーヒーとともにいただく。広い居間に明るいボサ・ノバがかかっている。
バスに乗って、かつてアルゼンチン随一の港として栄え、船乗りや労働者で賑わったボカ地区に向かう。ここにヨーロッパからの船が集まり、男性たちは安い酒場やバーで酒を飲み、労働に励んでいた。タンゴもそうした暗いバーの片隅から生まれたという。
現在、ボカ出身の画家キンケラ・マルティンの提案で、カミニートと呼ばれる一角は、緑やピンク、黄色や水色と、色とりどりに塗られた家が立ち並ぶ。
アルゼンチンの老舗菓子店、Havannaの前では人々がそのカラフルな建物の前でタンゴの衣装を着た女性と写真を撮っていく。
絵画を売る画家、大道芸人があちらこちらにいて、レストランの軒先ではタンゴが踊られている。客はビールを片手にぶ厚い肉を食べながら、それを眺める。
このエリアには、サッカークラブ、ボカ・ジュニアーズのスタジアム、ラ・ボンボネーラもある。近くの「REPUBLICA LA BOCA」と壁に書かれたバスケットコートでも、男の子たちはサッカーボールを蹴っている。
スタジアム近くの商店、El Viejo Almacenに入り、店頭に貼り紙のあった「SUPER PANCHO」をオーダーする。長いホットドッグに、ケチャップとマヨネーズ、マスタードをたっぷりとかける。スタジアム周辺はやはり夜になると治安が良くないというが、やや殺伐としたその街の中にも、こうして明るい店があり、道ばたでは食事を楽しむ人々がいる。
いたるところの壁にマラドーナ選手の若いころの絵などが描かれ、サッカー選手の人形が置かれていたりする。
青と黄色に塗られた四角いスタジアム、ラ・ボンボネーラの壁には、叫ぶ労働者やバンドネオンを演奏する男性たちが描かれている。
スタジアム前にある「MAXIKIOSCO BOCA MANIA」と銘打った、いかにもなボカ・グッズを販売する名前の店では、雑貨類がボカ・グッズよりも目立ってごちゃごちゃと売られている。
少年たちがボールを蹴りながら駆け抜けていく。
ニコラス・アベジャネーダ橋や古びた倉庫を眺めながら、再びバスに乗って、政治、歴史的に中心的な役割をになうモンセラート地区に向かう。
かつてよりピンク色に塗られてきた、スペイン・ロココ調の大統領府がある5月広場でバスを降りる。1810年5月25日、5月広場に面したカビルドでは独立宣言が行われた。その広場には独立1周年を記念して建てられたモニュメントがたっている。
今日4月2日は、マルビナス(フォークランド)紛争における戦没者の日で祝日だ。広場には、戦没者のことを忘れてはならない、マルビナスはずっとアルゼンチンの領土であるといった垂れ幕がいっぱいにかけられ、カーキの軍服に赤いベレーをかぶった男性たちが集まっている。
近くに停車してあった一般の車にも、1982年戦争における戦没者と書かれたシールが貼られていたりするものだから、この紛争は今もまだ強く人々の心に生きている。
広場に面したカテドラルには、南米解放の父、ホセ・マルティン将軍の柩が安置され、復元された独立軍の軍服を身にまとった護衛兵が見守っている。
サン・イグナシオ教会、サン・フランシスコ教会と通り、1773年に建てられたサント・ドミンゴ教会に向かう。ここはイギリス軍が進撃してきたときの戦闘の場ともなった場所で、植民地政府が率いたクリオージョ軍が教会内に立てこもったイギリス軍を取り囲んだ当時の弾痕が、今でも残っている。門には、火が灯され続けている。
近くのブエノス・アイレス博物館で、かつて使われていた木製の扉や、レトロなフォントの鉄製の看板、食器などを見て、5月大通りをぐっと西へと歩いていく。1858年創立の市内最古のコンフィテリア、カフェ・トルトーニには、シャンデリアのつるされた趣のある店内に、客が溢れ、入口には列ができている。
夕食の食材を買いに、カルフールに入る。店内は、イースターに向けたイースターエッグがぎっしりと積まれている。
国会議事堂広場にある、考える人のレプリカや天使とコンドルの記念碑を抜けると、イタリア人ビクトール・メアノによってデザインされた国会議事堂にたどり着く。涼しい風の吹く夜の広場には、犬を連れた人々が集まっている。
7月9日大通りへと戻り、バスに乗って宿へと帰る。肉と砂糖の続く食事から、身体を浄化させるために、さきほどカルフールで買ってきたトマトやきゅうり、にんじんをそのままサラダにし、チーズとパンを添える。グラノーラに苺のヨーグルトもかけて合わせる。身体がすっきりとしていく。
食事をとっているうちに、宿の居間のスペースで、タンゴのレッスンが始まった。
教わってみる。
脚が、なかなかに、からまる。
2012/04/02 23:43 | カテゴリー:Argentina