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大通りの向こうが、遠い。 – Buenos Aires, Argentina

無事にアルゼンチンへの入国スタンプも押され、乗船場まで向かっていると、雷がぴかりと空に線を描き、そのうちに大雨が降りはじめた。

船内のカフェバーの女性も仕事をしている。20時45分の出発を席に座って待つ。ウルグアイの土産物などを手にした乗客たちでにぎやかな船が出発をしたのは、結局21時半を回ったころだった。

ブエノス・アイレスに向かう間に降っていた大雨も、到着するころには止んだ。港の向こうにあるCASINOの文字が赤や緑に点滅し、時計は23時を指している。

ターミナルが面している大通りは既に静まり返り、車はほとんど通っておらず、タクシーはさらにまれにしか通らない。

船を降りた乗客で、タクシーを待つ長蛇の列ができた。バスの乗り場は、大通りを渡った向かい側にある。そこで焚火をして暖をとる男性たちがいる。通りの向かいは薄暗く、雰囲気は殺伐としている。

それでもタクシーを待っていればそのまま朝を迎えそうだったので、向かい側にバスが停まったときに急ぎ足で走って寄っていき、行き先を伝える。

無事に乗ることができた。運転手の男性は今日は17時から24時までの担当で、交代勤務制だという。近くて遠かった大通りの向こう側で、男性は日々働いている。

ちょっと滞在のウルグアイ – Colonia del Sacramento, Uruguay

Duty Freeの店舗も構えた船は、ほぼ満席だ。前方のスクリーンに、ペンギンやアシカなどの映像を流し、海らしさを演出している。

大きな船も停泊している港を横切り、チョコレートクッキーをかじりながら、1時間半ほどで川を渡り終え、コロニア・デル・サクラメントに到着する。

船を降りると、爽やかな風が吹いていて、ターミナルも白く真新しい。ここはアルゼンチンからの観光客も多く、アルゼンチン・ペソがおおよその場所で使えるので、両替も必要ない。

ゲートにはウルグアイの国旗とともに「ようこそ」と書かれている。川に沿って、フロリダ通りを歩く。道の途中にある洗練されたインフォメーション・センターに立ち寄る。

ウルグアイは小国なので、どこの国とも仲良くしないといけないんです、と女性は肩をすくめた。アルゼンチンとブラジルは仲が良くないんです、二つとも大きな国ですから、と続けた。

かつての鉄道の走っていた線路の上には草が生え、古い石造りのCOLONIAと書かれた看板が、プラットフォームの上にたたずんでいる。

木造の橋を渡り、石の城門をくぐる。この街は、かつてポルトガルの貿易港として発展し、その後1777年にスペインの植民地支配におかれた。

石畳の道を歩いていくと、Los Susupiros通りやポルトガル博物館、ナカレリョの家、タイル博物館、地域資料館、サクラメント大聖堂など、主に石を使ったポルトガル様式の建物や道が残されている。

そばには1795年に建設された後スペイン人によって改築された市立博物館がある。1880年に建てられた糊や石鹸などの工場もある。

道ばたには洒落たカフェやレストランも多く、テラスに腰をかけてビールやワインを片手に人々が食事を楽しんでいる。古びた石畳にクラシック・カーがひっそりと停まっている。

かつて軍事演習場として使用されていたMayor広場をさらに先に行くと、サン・フランシスコ修道院跡地に併設された灯台にたどり着く。白くそびえ立つ灯台は1845年から建設が開始された。

狭い緑の階段をてくてくと登りきると、灯台のてっぺんから街や川を眺めることができる。川は茶色く濁り、風に吹かれて波打っている。灯台には1938年当初の灯も残されている。

空は淡く水色に染まり、淡い茶色の川の色と、まっすぐな境界線を描いている。港には、釣りをする人々がいたり、のんびりと座っている人々がいたりする。

やがて空は徐々にピンクに色を変え、、白くて丸い月がぽっかりとまだ明るい空に浮かびはじめる。

夕食をとりに、メイン通りのFlores通りに面したレストラン、MERCOSURに入る。パンに、テンダーロインステーキとレタス、トマトにマヨネーズをはさみ、オリーブをさしたChivito al Panとフライドポテトをオーダーする。それに、ウルグアイのビール、ピルセンの生ジョッキと、レストランの自家製ワインを合わせる。ビールは、かすかに白ワインのようだ。

近くの商店でバニラと苺とチョコレートをはさんだアイスサンドを買って、それをかじりながら、ターミナルへと向かう。既に街は人気が少なく、ぽつりぽつりと灯がともっているばかりだ。

出国の時も、真新しいターミナルでチェックインを済ませ、イミグレーションでウルグアイの出国スタンプを押してもらった後、隣の担当者がアルゼンチンの入国スタンプを押すだけだ。その後に荷物検査を終えると、もう出国だ。

ブエノス・アイレスの対岸に、これほど静かで落ち着いた街があった。

アルゼンチンから午後ウルグアイに行き、日帰りで帰る。 – Buenos Aires, Argentina

ウルグアイのコロニア・デル・サクラメントという街は、ブエノス・アイレスからラ・プラタ川をはさんだ対岸にある。つまり、川を渡れば、ウルグアイ、である。ウルグアイについて聞いたことがあるのは「ウルグアイ・ラウンド」くらいしかなく、ブエノス・アイレスからこんなに近いことも知らなかった。

昨日まだ席のあった船は13時50分ブエノス・アイレス発の船、帰りは20時45分コロニア・デル・サクラメント発の船で、それで往復する。つまり、午後から出て、夜には戻ってこれる場所にある。

朝は宿でいつものフランスパンやらごまパン、甘いパンにミルクコーヒーを合わせてゆっくりといただく。

13時には船着き場であるTerminal Puerto Madero Surに来るようにということだった。洗練されたプエルト・マデーロ地区をぬけ、やや錆びれた倉庫のそばにあるターミナルへと向かう。

ターミナルは真新しく、入口でチェックインをすると、氏名、パスポート番号や生年月日、性別や国籍の印刷された紙がタタタと印字されて渡される。

その横にある通路を入るとすぐにX線の荷物検査がある。横には、ぼんやりとした茶色い麻薬犬が座っている。いかにも麻薬に興味がなさそうなその犬の鼻に、係の男性は次々と鞄を押しつけていく。犬は、あくびをする。背後にもう一匹の黒い犬がスタンバイをしているが、こちらも仰向けに寝ているばかりである。

イミグレーションは、そのすぐ脇にあり、アルゼンチンの出国スタンプを押したら、隣の担当がウルグアイの入国スタンプを押す、といった具合だ。わたしたちがパスポートを渡した際に、担当の女性が携帯電話を片手に誰かと話し始めて、何か問題でもあったのかと思ったが、結局何の問題もない。

楽ちんなこと極まりない。

こうして一度アルゼンチンを出国する。