エチオピアのバス旅 – Addis Ababa / Arba Minch, Ethiopia
今日もバスは朝早い。ジンカという町に向かうため、5時にはターミナルに到着するようにホテルを出る。まだ外は暗く、半分の月が白く輝いている。
薄暗いターミナルでは「ジンカ、アルバミンチ、ジンカ、アルバミンチ」と呪文のようにつぶやいて客を集める人々がいる。
バスの出発は、2012年5月11日、5時半。
チケットには、2004年9月3日、11時30分と数字が書かれている。
エチオピアカレンダーの日付とエチオピア時間だ。
文字はアムハラ語で書かれているので、読めない。
目的地のジンカまでは2日かかるため、どこかで一泊するらしい。夜に走らないエチオピアのバスは、1日目の夕方に一度解散し、みなそれぞれ宿泊先を探して一泊し、翌朝早くにまた集合して最終目的地へ向かうという、2日がかりの道のりが少なくない。
外が徐々に明るくなる5時半を過ぎても、同じ出発時刻だろうバスは一台も発車する気配がない。
エチオピアのバスの特徴の一つでもある「かばん持ち上げ人」が今日もいる。エチオピアのバスでは、高級バス以外天井の上に鞄を載せるのだが、どこからともなく現れた「かばん持ち上げ人」たちが、乗客の鞄をひょいひょいとバスの上にのせて、チップちょうだい、と言うのである。
時に、鞄をひったくるかの目つきと勢いで向かってくるかばん持ち上げ人たちもいる。
こうして、かばん持ち上げ人が鞄をバスの上に載せて、乗客の座席も定まり落ち着きを取り戻して、いよいよ発車するころには6時半を回っていた。
バスは、通路をはさんで2席と3席に分かれているつくりで、普通に座っても膝が前の座席にあたるほどのスペースをあてがわれる。
バスの走る窓からは、Child FundやWorld Vision、Mercy Corpsといった団体の看板が見える。
藁でできたとんがり帽子をかぶる、土の家が点々としている。山々には段々畑が広がり、木の棒をひいた牛や、くわをもった女の子が畑を耕している。
牛にひかせる木の棒をひょいひょいともった男性が歩いていき、おばあちゃんと女の子が並んでたくさんの木を背にしょって歩いていく。
ろばは木材や大きな袋をのせた荷台を黙々と運んでいく。
バスの中では、のりのりの音楽が、割れた爆音で繰り返し流れている。
川で洗濯をする女性たちがいれば、川にトラックをつっこんで洗う男性もいる。
途中、朝食休憩でみなが降りる。小さな町の小さな食堂にも、本格的なコーヒーメーカーがあるところがいかにもエチオピアらしい。
マキアートとコーヒーをオーダーすると、当たり前のように砂糖がたっぷりと入ったグラスが運ばれてくる。これが、なんとも美味しい。
隣の店では、みなが木の椅子に腰かけてテレビをみている。その先に入っていくと、コーヒーセレモニーのセットを前に、女性二人がコーヒーをすすっていた。
額に大きな穴が開いて中が見えている男性、腕を途中からなくした男性、膝から足がついている男性、いろいろな人がバスに集まり、物ごいをする。
休み時間を終えて、再びバスは動き出す。
外にチンパンジーが現れても、バスが泥道にはまっても、乗客は一様に興味を持って窓の外を眺める。
山羊が轢かれて死んでいる。バスは舗装道と未舗装道が繰り返される道を進んでいく。おしりは徐々に痛くなる。
そのうちにチャモ湖が見えてきて、15時半過ぎにはアルバ・ミンチに到着する。どうやら、この先のジンカまで今日は行かず、みなこのアルバ・ミンチに一泊して、明日の朝また集合してください、ということらしいことが、雰囲気で伝わってくる。バス会社から、何か説明があるわけでは、ない。
15時半過ぎということもあり、同じバスターミナルで「ジンカ・ジンカ」と客引きをするミニバンの男性たちもいるくらいだが、とにかくわたしたちのバスは今日の営業はおしまいなのである。
今日はアルバ・ミンチに泊まり、明日の朝にまた集合することにする。宿泊することにした宿は断水をしていた。それでも数時間後には復旧するという。街でも、敷地にタンクをもっているところは問題なく過ごせるが、そうでない場合は、水が使えなくなる。
断水にもみな動じず、敷地内に一つ設置された大型水タンクでは男性が身体を洗っている。
宿の前のKibiye Viewカフェ&レストランで夕食をとることにする。このレストランにも、コーヒーセレモニーセットが備え付けられている。2階に位置するレストランからは、向こうのほうにチャモ湖を望むことができる。目の前の道には、スーツを着た人々がなにやら嬉しそうに歩いていく。
エチオピアのカッテージ・チーズ、アイブとキャベツのみじん切り、ゴーマンを合わせたものと、ドライトマトを使ったインジェラ・フルフルをオーダーする。どちらもインジェラに巻いて食べるのだが、これがにんにくの効いたイタリアン風味でなんとも美味しいのである。St.Georgeビールが進む。
アディスアベバは標高2500m程度でマラリアの危険のある2000mを越えていたが、ここアルバ・ミンチは、標高1300m弱。宿には蚊帳がついている地域になった。
かえるが大きな音でぐわぐわとなく中、蚊帳の中で眠りにつく。
2012/05/11 23:53 | カテゴリー:Ethiopia