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歌い踊る聖職者たち – Lalibela / Gashema / Wereta / Bahir Dar / Gondar, Ethiopia

まだ外も暗い朝の5時半、さるが街を徘徊している。

今日は、聖ガブリエル・聖ラファエル教会でミサが行われるとMesfinさんが言っていたので、朝早くに起きて教会に向かう。

エチオピアでは、時間だけでなくカレンダーもまだ独自のものを使っているので、コミュニケーションをとるときに、なにやら複雑なことになる。

今日も、Mesfinさん以外の誰もが、今日は特別な日じゃないから教会でミサはない、と口を揃えていた。聞く質問に、それぞれの人がそれぞれ別の回答をしてくるので、一体何を信じていいのか分からなくなるのだ。

でも、Mesfinさんを信じて行ってみることにした。

聖ガブリエル・聖ラファエル教会に近づくにつれ、幾人かの白い服を着た人々が教会から出てきて、また幾人かは教会に向かっていく。

訪ねてきている信者は昨日と比べるとぐっと少ないが、ひっそりと、でも確かにミサが行われていた。

教会の外で、信者たちが裸足で佇んでいる。じんわりと身体が冷えていっているはずだが、額と口を交互に地面や教会の柱につけ、ある人はそのまま中へと入り、ある人はそのまま外でじっと杖を持って、佇んでいる。

ある人は聖書をじっと読み、それを口の中でぼそぼそとつぶやいている。時折額を聖書にこすりつけるものだから、あるページのある部分は、じっとりと茶色に変化している。

そして、教会の柱もまた、人々の長く繰り返されてきた額と口づけにより、黒く色を変えている。

中では、ゆるやかな旋律で祈りが捧げられ、ときおりしゃんしゃんと鈴の音がなり、お香を焚いた鈴を司祭がふりまいていく。あでやかな傘や聖書を手にしている司祭もいる。

そして、鐘を時折鳴らす。
信者は、司祭に傾けられた聖書に口づけをし、聖なる水を飲む。

わたしたちは教会の外に立ち、時折垣間見える様子を眺め、あとは耳を澄ませて想像するばかりだったものの、1時間ほど経ったところでふいに中へと誘われる。

白い布を身にまとった聖職者たちがスティックを片手に上下に動かし、鈴をしゃりしゃりと鳴らして歌い始める。そしてまたしばらくすると赤や緑の派手な装飾をほどこした衣装を身にまとった司祭が別の小部屋から入ってきて、それに交わる。

手拍子をし、太鼓をならし、やがてみなが輪になって、身体をゆさゆさと揺らして踊り始める。踊りが終われば、司祭たちはまた部屋に戻り、白い布へと着替える。

小さな儀式は、なんだか楽しそうに行われていた。

そこからほど近い聖マルコリオス、聖エマニュエル教会にも立ち寄り、昨日見ることのできなかった内部を拝見する。

どの教会でも、中に入ると、司祭たちが奥から正装用の衣装をもってきて、それを羽織ってみせる。

色あせた絵画には、どことなく愛嬌のある絵が描かれている。

ミニバスに乗り、Gashema、バハルダール経由でゴンダールへと向かう。Gashemaまでの道のりは舗装がなされておらず、乾燥したその道を爆走するミニバスは、埃まみれになる。前方を走るトラックの荷台にも、人々が埃にまみれて立っている。

それでも行きにバスで3時間かかったところを、帰りのミニバスでは2時間。

十字路でバハルダールに向かう車を待つ間、子どもたちの売っている揚げパン、ボンボリーノやこの辺りでよく売られている柔らかいマンゴー、小さなとうもろこしを炭で焼いたものなどをつまむ。

子どもたちも、ときおり喧嘩をしたりしながら、それでもボンボリーノがたっぷり入った容器を片手によく売り歩く。

しばらく道ばたで待っていると、日産車、パトロールがやってきた。それでバハルダールまで向かってもらうことにする。

車は快適極まりなく、舗装道をぐんぐんと飛ばしていく。同乗者は、エチオピアの保険会社で農家を対象とした保険事業を行っている男性3人と大学で哲学を教えているカナダ人の男性だ。

この辺りの道は日本政府の援助もあって、造られているんです、とエチオピア人の男性は言う。

エチオピアのあちらこちらで繰り返し流れ、さんざん聞いてきたテディ・アフロの音楽がここでも流れている。

ゴンダールとバハルダールとの分岐点Weretaでバスを乗り換えることはせずに、便数の多いバハルダールに一度行ってバスを探す。

バハルダールまで到着すると、すぐにゴンダール行きのミニバスは見つかった。やはりぎゅうぎゅうづめになって小さく身体を寄せるかたちで5時間耐えれば、ゴンダールに到着だ。

夜も遅くなったので、まだ営業をしていたゴンダール・ホテルのレストランに入り、ミート・フルフルをオーダーし、St.Georgeビールを合わせる。

ある程度の規模をもち、洒落た店やホテルもあるこの街も、ある一角には街灯がなく真っ暗な場所があるものだから、そんなときには懐中電灯を手にゆるりと歩いてみる。