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乾いた土地に流れるナイル川 – Khartoum / Karima / Dongola, Sudan

今日はハルツームを離れて、カリマという町まで向かう。バスは6時半集合7時発なので、それに合わせてミニバスをつかまえてターミナルに向かう。

数台バスが停車できる程度のターミナルに、Wodkaboush社のカリマ行きバスが停車している。

バスの周りには、シャイやコーヒーを淹れる女性たちが数名セットを構えて、揚げパンも置かれている。他の乗客に倣って、ミルクティーをすすりながら、発車を待つ。

立派なバスで、冷房完備、座席も小さなフットレストがつき、窓は大きく開かない構造、クッションも一般的な柔らかさをもち、右側に2席、左側に2席のふつうの造り。

車内は、シルキーな赤の生地にオレンジ色のフリンジや金色のスパンコールのついた布で装飾され、天井は赤いもこもこの布で覆われ、ピンクのシャンデリアがいくつか揺れている。

荷物は、バスの下の荷物入れに収納することができるから、どこからともなく現れて勝手に荷物をバスの上に運びチップを要求する人々もいなければ、かばんが落ちたり雨にぬれたりすることもない。

座席だって、口頭ではあるが、指定された座席を言い渡される。ここには雨漏りの心配も、砂埃が入ってくる心配もないのである。

出発時間も7時だから、4時に起きてまだ日の上がらないうちに宿を出て暗いターミナルでバスを探す必要もないのである。

しかも発車して2時間ほどでフルーツキャンディーと水のサービスまでつく。さらに10時ころには、包装された、パンと豆のフライ、Ta’amiyaにスポンジケーキやウエハースのセットまで、無愛想な添乗員の男性によって無言のうちに配られる。

ハルツームの街をぬけると、葉のない乾いた低木がぽつりぽつりとたつ砂漠を走っていくことになる。

殺風景な砂漠の中で、道路は舗装されている。

テレビから流れるトーク番組に、乗客は手をたたいて、大笑いする。

スーダン大型バス、極楽だ。

ROAD MONITORED BY RADARと書かれた看板がたち、銃を構えて座る軍人がいる。ろばが歩き、くずれた煉瓦造りの建物があるかと思えば、ふいに新しいコンクリートの建物が佇んだりしている。

そのうちに、外気の暑さで車内の冷房の効きが弱まってくる。

屋根もなくまるで朽ち果てた遺跡のような建物が並ぶ、ただ広く乾ききった土地に、人々が一人二人と歩いていく。

ろばの荷台に乗って通り過ぎる人がいて、トヨタのピックアップトラックが停まっていたりする。そのうえ不釣り合いな具合のアスファルト道がすっと伸びていたりする。

それから、突然に上部が平らな乾いたJebel Barkal山が現れる。18王朝ファラオの時代にエジプト人にとって聖なる土地であった場所である。

その近くには、小ぶりではあるものの、すらりとした輪郭を残したピラミッドがオレンジ色の大地の上で天に向かっている。

13時半前には、カリマの町へ到着する。人の住んでいるのかいないのか分からない乾いた家が立ち並んでいた中、ようやく人が実際に行き来している場所にたどり着いた。

快適だったバスから、むわりと暑いカリマの町に降り立つやいなや、シャイを飲んでいきなさい、とごちそうになってしまう。スパイスのさほど入っていないあっさりとしたシャイだ。

カリマからドンゴラという町までミニバンがまだ出ているというので、その乗り場である場所を探して向かう。

すると、ついてきなさいと、案内役を買って出てくれる人に出会う。案内をしてくれたり、ごちそうをしてくれたりするのは、ハルツームを出ても、変わらなかった。

バンは、満席になるまで出発しないと言うので、近くの食堂に入り、昼食をいただくことにする。

パンをちぎったものに肉のはしきれやスパイスをごちゃまぜにした、見た目には素敵とは言えない、それでも暑い中ぱくぱくと食べれる食事をいただく。

気温は容赦なく上がり続け、空気は乾燥を極めている。そこで、やはりオレンジが食べたいと、フルーツをぶらさげた店に立ち寄り、オレンジ、2つください、と言う。すると、オレンジをもう一つ、それにバナナやグアバまでビニールにほいと入れて、どうぞと言われる。

カリマ付近ではBallahaが名物だということで、乾燥Ballahaをいただこうと店に立ち寄ると、今度は支払いはいりませんよ、と差し出された。

Ballahaはキャラメルのようにねっとりとしていて甘いドライフルーツだ。ともにDongola行きバンの発車を待つスーダン人乗客たちと、いただいたBallahaを分かち合う。

乗客たちは、その後も携帯電話をかちかちいじりながら、出発を待つ。そのうちに、わたしたちに次の行き先を尋ねてきた男性がいた。

どうやら、わたしたちの乗るバンの会社の商売敵だったようで、罵りあいが始まり、やがてバンの会社の男性は棒を持ち出し、もう一人の男性はナタを持ち出す始末である。

ただぽかんとするばかりだ。

カリマからドンゴラまでは、ただ平らな赤い土の砂漠が続く。二度ほど検問があり、運転手がバンを降りてなにやら手続きを済ませる。

ナイル川が見えてくれば、ドンゴラの町も近い。

ドンゴラのバスターミナルからトゥクトゥクに乗って、殺伐とした砂漠の道を抜け、町の中心地へと向かう。数本の道に食堂や商店、宿が並んでいる。

商店の前では大勢の男性が集まり、商店の方向に向けて祈りが捧げられている。

宿の前に屋台ふうの店が並んでいたので、そのうちの一軒で豆を煮たフールをオーダーする。ルッコラやたまねぎ、トマトといったサラダといつものパンがついてくるメニューである。

ナイル川も近く、魚がとれるようで、魚のフライが大量に積まれている。屋台の男性が身のたっぷりついた二匹の魚にライムとパンをつけて、新聞紙にくるんで持たせてくれた。

魚は、不自然なほどにぼってりと柔らかい身がつき、脂がのっている。それがかりっと揚げられているのである。

乾燥したこの土地は、ナイル川の恩恵で、魚を食べることもできれば、飲む水もシャワーの水もある。

店のそばで、珍しく男性がシャイを淹れていた。ムスリムの白い服を着たその男性に淹れてもらうことにする。大きな身体でおおらかに茶を淹れて、そこにミントの葉を浮かべる。そこには、いつも入れられているスパイスもなく、ただ、茶とミントの味がした。

スーダンの宿は、一部屋に3つか4つのベッドが並べられていることが少なくない。スーダン版ドミトリーである。わたしたち外国人を見ると、その3つか4つのベッドの部屋を貸し切り状態にして勧められる。

スーダン人たちは、暑い部屋のなかよりも、ベッドを外に出して、寝ることがお気に入りのようだ。こうして、宿の外のスペースは、男性スーダン人たちの寝床と化していく。