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暑いし、良くない国だとスーダン人が口を揃える国、スーダン。 – Khartoum, Sudan

朝起きてテントから顔を出すと、昨晩まわりにたくさん寝ていた人たちは、一人だけとなって、ベッドも撤収され、残っていたのは、風で飛ばされたごみ袋と、ただ一人だけだった。

砂埃で空気は茶色く霞んでいる。

道ばたのあちらこちらでスパイスや茶葉を並べてシャイ(茶)を淹れる女性たちがいる。そのうちの一つに腰掛けて、あたたかいミルクティーをいただく。粉ミルクをたっぷりといれて、スパイスと茶葉をいれる。スーダンでは朝にミルクティーを飲み、その後は、ミルクなしのスパイス入りシャイを飲む人が多い言う。

ミントや薬にもなるスパイスをスプーンにすくって入れるのだが、これが格別に美味しく、喉の渇きを潤す。

街の中心にあるホテルに向かおうと、今いる場所や街の中心までの行き方を聞いても、看板はアラビア語で読めず、聞く人々はだれも英語が分からない。

そのうちに人だかりができるばかりだ。

やがて英語が少しでき、かつコミュニケーションがとれる稀有な男性が現れ、街の中心へと向かうバス停まで連れて行ってもらうことにする。

男性はわたしたちに聞く。「コーヒーでも飲みますか。」

遠慮していると、するりと売店に入り、水のペットボトルを2本買って、わたしたちに差し出した。

暑さと乾燥でひたすらに喉がかわく中、ありがたく水をぐびぐびと飲む。夏だという今のハルツームは40度を越すというから、ひたすらに気温が高いのである。スーダン人も暑い暑いと忍んでいる。

教えてもらったバスに乗り込み、街の中心へと向かう。乗客は指をぱちりと鳴らして、降りる場所を合図し、車掌はクススススと口を鳴らす。この国では、指ぱちりが合図に使われている。口のきけない人でも、指を使えば良いから、便利なのだという。

街にはHyundaiの車が溢れ、LGやSAMSUNGの看板が立ち並んでいる。バスの電光掲示板には、韓国語が流れている。今まで、中古ミニバンといえば、日本語が車体におどる車ばかりが多かったけれど、この国では韓国語が書かれていることのほうが多い。

宿をとり、街を歩いていると、ある男性が中国語で話しかけてくる。彼は中国とビジネスをしていて、中国に行ったこともあるという。

中国人は、石油関連の仕事をしている人中心に、スーダンにたくさんいますよ。中国の品物は安いけれど、品質があまり良くないんです。それに日本や韓国製品をコピーしているものが多すぎます。でもなにしろ安いから、中国に行けば、ぼくもコピー製品を買って帰りますけどね。

スーダンは、暑いし、良くないです。特に政府が良くない。中国はスーダンに比べて女性もきれいです。もしぼくが日本に住めるのなら、もうスーダンになど帰ってきたくありません。

その男性は、すぐそばの食堂へと入って、しぼりたてのさとうきびジュースをごちそうしますよ、どうぞ、とわたしたちに差し出す。またありがたく、ぐびぐびと飲む。冷たくて、甘くて、身体にしみわたる。

そのうちに、ぼくのオフィスへどうぞ、と誘われる。雑居ビルに入った彼らのオフィスには、テレビが一台、書類の積み重なった机が一つ置かれ、扇風機がぐるりぐるりと回っている。

男性は、葉のかたまりを口にほおばりながら、事務所の人たちをわたしたちに紹介する。彼らは、スーダンで違法のお酒もどこからか手にいれて少し嗜むと言う。ビールだけじゃなくて、ブラック・レーベルなんかもね、と言った。途中、いかにも裕福そうな若い男性が一人室内へと入ってきて挨拶をし、またそっと出て行く。

街のあちらこちらで床にシートを広げ、祈りを捧げる男性がいる。それが、ある広場の一角であることもあれば、ホテルの一角であることもあれば、店の前であることもある。

砂埃に霞む灼熱の街を歩いていくと、政府機関の近代的な建物の集まる地区へと入っていく。ここでは更に警察の数が増える。

3日以内に必要だとされる滞在届を申請するオフィスへと到着する。すると「オフィスはここではありません。」と言う。

どこに移転したのか、そこまでどうやって行けばよいのか、それがなかなかに通じ合わない。言葉の問題以外にも、さきほどYesと言ったことが直後にNoという答えに翻るものだから、埒があかないのである。

そのうちに警察だという男性が現れ、僕が新しいオフィスを教えます、とわたしたちを連れだした。そして「警察に友だちがいるから、彼に頼めばスムーズにできます」と正規料金の1.5倍くらいの値段を伝えてくる。

そもそも正規料金がいくらなのか、警察であっても聞く人それぞれ違う答えを言うので、なにが正規なのか知る由もない。

とにもかくにも、どうやら移転したらしいオフィスへ行かないことには話が進まないようだということだけが分かった。

ツーリスト・インフォメーション・センターを訪ねれば、もしかすると英語を話せて、しかもコミュニケーション能力がある人に出会えるかもしれないと淡い期待をもちながら、地図を片手に進む。

途中、肉にピーマンやトマト、たまねぎなどをパンにはさんだシュワルマをほおばる。

暑さと乾燥でどうにもこうにも喉がかわくので、大きな水のペットボトルに加えてRich Cherryの炭酸飲料を買って、ごくごくと飲む。喉が渇くのはスーダンの人たちも同じらしく、道ばたにはあちらこちらに無料の水タンクが置かれ、みなそこに置かれたアルミのコップを使って、冷えたその水をごくごくとやっているのである。

たとえアラビア語ができなくとも、スーダンでは「水」だけはアラビア語で言えなきゃだめ、と言われるゆえんである。

インフォメーション・センターにたどり着くと、そこにはもうインフォメーション・センターはなくなっていた。隣のダンダス・インターナショナル・ホテルという名の、頼りがいのありそうなホテルに駆け込み、インフォメーション・センターはどこにあるのか尋ねる。すると、これも空港近くのどこかへ移転したのだという。

やれやれ、どこにもたどり着けない。

そのホテルは、灼熱の中がんがんと冷房をかけているホテルで、ロビーにはたくさんの中国人ビジネスマンたちが座りこんでいる。

仕事でスーダンに来ているという中国人たちは煙草を吸い、パソコンで中国語の映画を見ている。スーダンは、政府も難しい部分があるので短期的に見ればビジネスには難しい国ですが、長期的にみればビジネスに適した国なんです、と中国人男性は言った。

日が暮れていく。

街をまた歩いていると、道ばたでコーヒーを飲んでいた男性が、わたしたちを手招きする。腰をかけてスパイスの入ったシャイをいただくことにする。

彼は、煙草工場で機械工をしているという。ハルツーム生まれのハルツーム育ち、アフリカ系のイスラム教徒である。

今のスーダンで起こっている問題を、声をひそめながら、語る。

スーダンはダメ、政府がダメ、と切り出す。

誰も政府に満足していない。

ぼくたち個人間には宗教は関係ない、問題は政府だけなんです、と言った。ぼくには南スーダンからの友だちもたくさんいます。

南のスーダンはキリスト教徒が多く、緑が生い茂り、クラブやディスコもあって、自由がそこにはあるんです。南や東西のスーダンでは、今もアフリカ固有の言葉が話されています。でも北はイスラム教徒で、自由が全然ない。

スーダン政府は、アラブ系でイスラム教徒。キリスト教徒や、僕のような黒人系のイスラム教徒のことを、認めないんです。

投資する先もアラブ系イスラム教徒の多い北の地域ばかり。首相だって北からの出身。だから、スーダンの北の地域はいたって平和で、夜に道ばたで寝ていたって問題ないんです。

でも、南が独立して、大きかったスーダンの国は小さくなって、国民は怒っているんです。でも政府はそれが分からない。スーダン人のほとんどが、政府を嫌っています。

反対運動を起こしたら、捕まります。ここには民主主義は存在しないんです。

南スーダンの人々がハルツームにたどり着いて仕事をし、南にまた戻りたいとなっても、戻るお金がない。彼らは事務仕事ではなく、誰もが厳しい仕事をしている。政府は、それでも、彼らに対して無関心なんです。

わたしたちにお茶を淹れてくれた女性も、エチオピアからの難民だという。

エチオピアやエリトリアから、多くの女性が単身で難民や不法労働者としてスーダンに来て、共に住んで働き、母国へ仕送りをしています。特に道ばたでお茶やコーヒーを淹れる女性や食堂でウェイトレスをしている女性に多いんです。

エチオピアは、小さな国土に対して過密な人口を抱え、かつ干ばつの問題もあって、食糧不足に陥ったりするんです。対してスーダンは国も大きいし、人口も少ない。それにエチオピアよりも通貨が強いんです。だから、彼女たちはスーダンに来て仕事をして、エチオピアにいる家族に仕送りをするんです。コーヒーは2ポンド、お茶は1ポンド、これでもエチオピアにとっては大きなお金なんです。
そういった人々に対して、スーダンの国民は寛容に受け入れているのだという。

若い女性たちはスーダンに仕事があるものの、エチオピアの男性たちはスーダンに来ても仕事がないのだという。

エチオピア人は自分たちの国を大好きだと口々に言っていた。
でも、スーダンでは、自分たちの国をダメな国だと口を揃えて言う。

メディアは比較的自由だと言い、Eメールやfacebookのアカウントを持つ人も少なくない。彼もその一人だ。

またごちそうになってしまった。
これほどおもてなしされる国も、とてもまれだ。

夕食は、男性客で賑わう道沿いの食堂でいただく。わたしたちも卵と玉葱とトマトを炒めたものにパンを手でくるんでほおばる。その後、近くのミルクティー屋でミルクティーとパンをいただく。

この時間、女性は道ばたでお茶を淹れつづけ、男性はご飯を食べて、祈りをささげ、お茶を飲む。