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エチオピアの湖にある修道院 – Bahir Dar, Ethiopia

夜中の2時前に、食堂の前にバンが停まり、夜食休憩になる。この時間でもインジェラを食べ、コカコーラを飲む人々がいるものだ。

子どもたちもスナックやチューインガムを売って働いている。

夜中の1時か2時に到着すると聞いていたミニバスは、日が昇ってもまだバハルダールにはいなかった。それでもマンダジを食べていれば、8時前にはバスがバハルダールに到着する。

この町は、ナイル川の2大支流ブルーナイルの源流、タナ湖に面している。そして、この湖の島や岸には13~17世紀に建てられた修道院がいくつも点在している。湖畔のギオンホテルからボートに乗って、いくつかの修道院を訪ねることにする。

湖では、男性たちがカヤツリ草の一種パピルスから作られた舟をあちらこちらで漕いでいる。

毎週金曜日にバハルダールで開かれるマーケットに向けて、火をおこすための乾燥木材をゼゲ半島から運んでいるのだそう。

金曜日に朝から5時間ほどかけてパピルス舟を漕いで木材を運び、バハルダールで一泊して土曜日に自宅へ帰るのだという。わたしたちのモーターボートを操縦していた男性も、かつてはお父さんとともに4年間ほど毎週金曜パピルス舟を手で漕いでいたといい、その日は学校も休んでいたという。

湖にはかばもいて、水中から勢いよく近づいてきて、舟を転覆させることもあるから危ないんだと言った。

とても大変な作業だったようで、今はモーターボートに乗れるから楽で良い、と笑った。

最初に訪ねたのは、小さな島に建てられたEntos Eyesu修道院。ここは13世紀に建てられた基本的に女性の修道院で、25人の修道女が住んでいる。

修道女は島から出ることはない。マンゴやパパイヤ、バナナなどを育て、コットンから衣服をつくっている。ただ、果物は猿に食べられることも多いというから育てるのは大変な作業らしい。

1年に2、3度食べるという牛や羊、山羊の肉、それからとうもろこしやコットンなどの必要なものは、男性の修道士がパピルス舟に乗って陸の市場まで買い出しに行く。ただ男性の修道士もその1か所の市場以外に出向くことはない。

島には、16世紀に、タナ湖で罪を犯した修道士を収めていた刑務所もある。

再び舟に乗って、次にゼゲ半島にあるBetre Mariam修道院を訪ねる。

藁ぶき屋根をかぶったその修道院は14世紀に建てられた。天井は雨による傷みで替えられているが、そのほかは当時のままだという。

泥と石と草でできた壁を境に、その外は司祭や修道士が太鼓を叩いて踊るスペース、中は、地元の信者に聖なる水を与えるスペース、そしてフレスコ画に囲まれた中は、アクスムにあるアークのコピーが置かれ、司祭、修道士しか入ることが許されていないスペース。

修道院付近の住民はみなキリスト教徒だといい、日曜日のミサにはここに多くの人々が集まるという。

靴を脱いで中に入ると、そこには16世紀の色鮮やかなフレスコ画が壁一面に描かれている。

聖母マリア、イエス・キリスト、聖ガブリエル、聖ジョージ、聖マイケル。首を刀で切る人、血を流す人、顔の横に羽がはえたエチオピアの天使、花、刀。

天井は赤、青、黄色といった色に塗られ、ここにも聖ヨハネを象徴している、身体のないエチオピアの天使たちが飛んでいる。

そばには、博物館という名の小さな部屋がある。羊皮紙に色鮮やかな挿絵が描かれ、アムハラ語が赤と黒のインクでつづられた聖書が置かれている。他にも、金をあしらった帽子、銀や木でできたドラムなどもある。

そこからまたボートに乗って、ほど近いUra Kidane Mihret修道院を訪ねる。修道院のそばに、修道士やその見習いが住む家や食堂がある。

司祭がぎいっと食堂の扉を開けてくれる。中には古びた木のテーブルと椅子が置かれている。鳥が木材を傷めるのを防ぐために、お香を焚く。ミサの後に司祭たちはここで地ビールを飲み、インジェラを食べたりするのだという。

薄暗くお香の煙の立ち込めるその食堂の片隅には、色のあせた三位一体と呼ばれる、かつてアークを置いた棚がほられている。

修道院の屋根の上には、7つのがちょうの卵が生贄の象徴としてたてられ、前には大きな石の鐘が二つ、置かれている。修道院の壁面には、首を切る絵や、乳飲み子の絵などが描かれている。

司祭たちは階級によって素材の違う、金や銀、木でできた十字架をもちながら歩いている。そしてまた銃をもって警備にあたる地元の男性たちも同じように見かけるのである。

地面に炭を置いて火をおこし、シチューを作っていた修道士見習いの男の子に、住んでいる部屋をみせてもらう。2人で住んでいるという一部屋には、簡単なベッドが置かれ、壁にはキリスト像のポスター、そのわきには洋服が提げられている。

タナ湖に再びボートを走らせながら、バハルダールの町に戻ってくる。湖岸では、人々が洗濯をしている。

バハルダールの町には、他の町ではあまり見かけなかった新しいカフェや、ロールケーキやチョコドーナツなどの甘いお菓子なども見かける。H&MやGAP、ZARAやD&Gといったロゴを掲げた店もあれば、男の人同士がよく手をつないでいる。

若者が男女交じって食事をしにきていて、ビールジョッキを何杯も空けている店がある。どうやら都会的な雰囲気である。

道ばたで揚げられていた揚げたてのボンボリーノをいただく。かりっと揚げられて中はもっちりのそのパンを大量にビニール袋に入れて買っていく人々がいた。

夕食は、Abyssiniaバー&レストランでいただく。

ライスにキャベツとじゃがいもとにんじんのサラダ、それにタナ湖で釣れた魚のフライが2匹置かれている。魚は、やや水の匂いがするものの、かりっと揚げられている。Dashenビールを合わせていただく。

この町にもまた蚊が飛んでいる。話をした地元男性は、マラリアで妹を亡くしたという。5年ほど前はマラリアに対する知識のない人も多く、多くの人が亡くなったと聞いた。雨期の前の今の時期はまだ大丈夫だとその男性は言った。

それでも、エチオピアでは虫との戦いは欠かせないのである。