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唇や耳たぶにお皿をはめる人たち – Arba Minch / Jinka, Ethiopia

最終目的地に向かうための2日目。今日も朝は早い。5時には集合し、荷物をバスの上にあげて(もらい)、出発となる。

8時前に、コンソ族が多く住むコンソという小さな町で休憩となる。小さな喫茶店に入り、チャイをオーダーする。これも甘い砂糖がたっぷりと入れられている。

更に先に進んだ、川を渡ってすぐのところに一部舗装されていない道がある。

そこに、過搭載をしていた大型トラックが瓦礫の坂道で立ち往生していた。トラックのわきにはわずかなスペースしかなく、このままではバスが進めない。

誰からともなく、乗客みなバスを降りていき、男性たちはどこからか手に入れてきた金属の棒でわきの岩を叩き始めた。

トラックが動き出すのを待たずに、岩を叩き壊して道をあけるのだ。汗をかきながら、順番に無言の助け合いが発生しながら、岩が叩かれていく。時には大きな石をもってきてコテの原理を使ったりしている。

外は太陽ががんがんと照り輝き、みなシャツが濡れていく。

UNやSave the Childrenと車体に書いた車が、通り過ぎていく。

川の向こうに住んでいるというコンソ族の人々が、それぞれ鶏や野菜を手にもち、あるいは背中の籠におさめて、隣町の市場に向かっていく。

1時間ほど大男たちが岩削りに励んだ結果、ようやくバスが通れるだけのスペースができた。ぶつかってもおかしくないすれすれの道を、男性たちが手招きをしながら、通っていく。

無事に通り過ぎたときには、拍手と歓声が起こった。それでも、またみなすぐに黙々とバスに戻り、各自の席につく。

その後も2度故障し、バスはしゅーっと音をたてる。乗客が一度降り、修理をして進むもまた故障するといった具合でも、みな文句ひとつ言わずにただ助け合っている。

Fiat社のバスらしい。もう20年も使っているというから、ガタがきていてもおかしくないのだ。

畑に並んで腰をかがめ、手で作業をしている人々を眺めながら、2日目の14時前にようやくジンカの町へと到着した。

ジンカの土曜マーケットには、オモ川流域の少数民族の人々が集まってきている。
植物油から、にんにくや野菜、バナナやマンゴーといった果物に芋、香辛料、料理用の壺やコーヒーポットなどが地面に並べられて売られている。

マーケットに来ている人々の多くはアリ族という。男性は髪をととのえ、短いスカートをはいていることもあり、手には小さな木のヘッドレストをもっていることもある。これは、寝たり、眠ったり、喧嘩をするときに使ったりするらしい。

女性も、鮮やかな緑や青に、腰にビーズのベルトを巻いたりしている。

ムルシ族という、女性は唇や耳たぶに土器や木器で作った皿をはめ込んでいる民族も、近くの村から訪ねてきている。えんじや水色などの格子の布を身体に巻いて、買い物にいそしんでいる。

穴を開け始めるのは、デコレーションであり、15歳ころから始めるという。ただ、唇に穴をあけるという習慣は、政府によって良くないものと教育されるようで、学校に通う生徒たちは穴をあけない子どももいるのだそう。ただ、政府の教育にムルシの人たちは耳を傾けたりはしないんだという話も聞いた。

スティック・ファイツといって、力の強い男性を決める戦いがあるらしい。勝った男性は好きな女性と付き合うことができるというのだから、大事な試合なのである。結婚には、牛を貢ぐこともあるらしい。

ムルシ族、外国人を見つけては遠くからもやって来て、写真を撮って、とポーズをとる。それで写真撮影代をもらう、ということである。

口には穴を開けずに、耳にだけ大きな穴を開ける人も少なくない。身体に点々と模様をつけた人も、腕や脚、首にアクセサリーをつけた人も、胸をあらわにして見せてポーズをとる女性もいる。

子どもたちも、ユー(You)、マニ―(Money)と言ってくる。あるいは、サッカーボールを買いたいから100ブルちょうだい、と口を揃える子どもが周りをぐるりと囲む。

この地域の子どもたちもほとんどが無料の高校に進学を果たすのだという。学校ではアムハラ語、英語、数学、生物学、公民、物理学、化学、歴史、地理を学ぶと言った。

そのうちに大雨が降ってくる。それぞれに雨宿りをしたり、案外に傘をさしたりする人々がちらほらいる。

小さなバーでは、地ビールやアレケというお酒などを飲む若い男女で溢れている。

雨があがっても、町の道は泥だらけでぬかるんでいる。

宿のそばの食堂で、Bedeleビールと、いり卵と牛肉と玉ねぎを炒めたそぼろのようなものにインジェラを合わせる。

こうして、賑やかマーケットの土曜日の夜も、更けていった。