乗客ガイドさん。 – Bahir Dar / Gashema / Lalibela, Ethiopia
今日も朝の5時半発のバスに乗ってバハルダールからGashema経由でラリベラへと向かう。朝早いうちからバスはほとんど満席で、バスの上に荷物をのせることと、座席を確保するという作業をみな同時に行っていく。
わたしたちが乗り込むと、周りにいた乗客たちがこっちに座れ座れとわさわさと指し示してくれる。
乗客どうしで、手を握って肩を3回触れさせる挨拶が交わされる。荷台には、バハルダールのコーヒーセレモニーで使われる草を、土産ものにと家へ持ち帰る客がいる。
4時間半ほど走ったところで朝食の休憩となる。カフェ兼レストランの奥に、ベッドと椅子が置かれただけの部屋が並ぶ宿泊所のある、ブンナベッド形式のレストランである。
中庭では女性が赤ちゃんにミルクをあげ、二人の男性がインジェラを食べている。床にはチリが広げ干されている。男性に手招きをされて近づいていくと、チリを指して「これが何だか分かりますか。ブルーベリーです。」と言う。そしてインジェラを勧められる。
日差しの暖かな朝だ。
グラスに砂糖のたまったコーヒーとパンをオーダーして席に着くと、バスが同じ乗客の男性が、一緒に羊肉のインジェラを食べましょうと勧めてくれる。エチオピアの習慣では、こうして同じインジェラを分け合うんです、そしてこれも習慣です、と言って、インジェラを手でつかみ、わたしたちの口元まで持ってくる。
スーツを着たその男性は、小学校でアムハラ語と環境問題を教えているという。しまいには、ごちそうになってしまった。
バスの中でも、大麦などを煎ったコロを配られたり、名所を案内してくれたりと、乗客たちがわたしたちをもてなしてくれる。
バスは、両端をすぱっと切り立った崖の上を走る。乾いた茶色の山にかけられた「自然の橋」と呼ばれているのだそう。
男性の修行僧が洞窟に住む修道院、Checheho修道院や、天井が開いているものの雨が入り込まない造りになっているAbune arong修道院を、説明を受けながら、通り過ぎていく。
乗客の一人の男性は、このAbune arong修道院に奥さんと共に7日間滞在し、聖なる水を飲み続けた結果、脚の持病が治ったという。
12時半にはGashemaに到着する。ここまではアスファルト道。
ここから乗り換えて、ラリベラまでは未舗装の道が続く。
茶けた山々に、藁ぶき屋根の家が点々と見える。ラリベラに近付くにつれ、砂埃の道を歩く人が増えていく。今日の市場を終えて帰宅する人々らしい。
ろばや連れながらものを運ぶ人、山羊をつれている人、長い木の棒を担ぐ人、日傘をさす人、さまざまである。
満席だったので、運転席の横のスペースに腰をかけること3時間、ラリベラに到着する。
宿にほど近いユニーク・レストランで、トマトソースのスパゲティをオーダーする。エチオピアの人たちは、インジェラ、パン、ご飯にスパゲティやマカロニも日常的に食べているというから、豊かな食文化をもつ国なのである。
先日のアディスアベバ、Castelliでいただいたイタリアンは、洗練された都会の本格イタリアンだとすると、このレストランのパスタは、家庭料理ふう。
味付けもやわらかく、まろやかで、パスタものんびりとしている。
同じレストランにいた、旅行会社を2店舗経営しているBelaynewくんは、日本のことにとても詳しい。大学在学中はアディスアベバにいたものの、再びラリベラに戻ってきて、今は会社を経営している。
アディスは、欧米化してしまって、エチオピアらしい文化をなくしている。人も冷たいし、空気汚染もひどいから、住んでいてもおもしろくない、と言った。
中国の人々が最近特に増えてきていて、エチオピアには80をこえる民族がいるけれど、最近はそれに中国人が加わりそうなくらい、と笑った。
このラリベラという町は、歩いていると「ようこそラリベラ」と日本語で話しかけられることが多い。フー太郎の森基金(FFF)という日本の団体が活躍されていることもあってか、日本が大好きと断言する人々も多い。「ハロー/ユー・マニー」や「ハロー/ユー・ワンブル(1 Birr)」も、ほんのわずかな子どもたちにしか言われない。
町によって流行の言葉というのが変わるのである。
そんなわけで、居心地の良い。
夜に、ハチミツ酒であるTajを飲みに、地元の飲み屋、トルピードへと向かう。いつもは夜にライブがあるというが、オーナーのお父さんが亡くなったといい、今日はライブがあるか分からない。エチオピアでは、親族が亡くなってから半年は踊りや音楽を控え、黒い服を着ることが多いのだという。
Tejは寝かせた期間でアルコール度数が変わるという。店では、アルコールの強さを選んでオーダーすることができる。
ソフトは、ハチミツとお湯を混ぜるだけで、確かに甘い。アルコールが加わってくると、ハチミツの甘さの中にお酢のような酸っぱさが出てくる。
ライブは、あった。
Macinkoという、馬のしっぽと山羊の革で覆った木からできたバイオリンの演奏が始まる。アムハラ語の歌がうたわれ、客がTajやビールを飲みながら、手拍子をする。そのうちに客たちは肩をくるくる動かしながら、身体を使った踊りを踊り始める。
隣の席に座ったMesfinさんという男性が、明日は彼がオフィスをもつセブン・オリーブス・ホテルに良かったら遊びに来てください、と言う。
そしてそのうちに停電で店内は真っ暗になる。誰も驚くことなく、音楽は続けられ、客はお酒と音楽を楽しみ続ける。しばらくすれば電気が戻ることをみな知っているようすだ。
暑かった昼とは変わり、夜は涼しく、強い風が吹いている。
星が瞬いている。
2012/05/19 23:25 | カテゴリー:Ethiopia