Top > ブログ

ラクダ・マーケットとイスラムの歌と踊り – Khartoum / Omdurman, Sudan

今日は、金曜日で、休みの日である。

朝の街はまだ静まり返っているが、ぽつりぽつりと道ばたでは女性たちがコーヒーとシャイを淹れるセットを整えている。

スーダンで朝食によく食べられている揚げパン、ゼラビアにたっぷりと砂糖をふりかけたものを買い求め、近くの女性のところでコーヒーを淹れてもらう。

手際良く、3種類のスパイスや、グラスの下に溜まるほどの砂糖をスプーンにのせてコーヒーの中に入れる。

今日は、ハルツーム近郊のオムドゥルマンという地域で開かれているラクダ・マーケットと、夕方からのHamed el-Nilモスクでのセレモニーを見に行くことにする。

オムドゥルマンへ行くバス乗り場が分からずに行ったり来たりしていると、男性二人が乗り場まで連れて行ってくれると言って、歩きだした。乗り場まで歩くにも既に暑い。途中に道ばたでよく売られているジュース屋で、冷たいハイビスカスティーと、シャイールというとうもろこしからできたジュースをごちそうしてくれる。

男性二人は、それから噛むための葉っぱを購入しただけで、わたしたちを見送り、そのまま来た道を戻っていく。

バスはブルー・ナイルを越えて、オムドゥルマン地区へと進む。スーク・リビヤというマーケットでバスを降り、トゥクトゥクに乗り換えてキャメル・マーケットに向かう必要があったものの、ここでもまた任せろ、といった具合のおじさんがふいに現れて、ぼくが支払いをしたからこのトゥクトゥクに乗りなさい、と手配を済ませてくれたのであった。

トゥクトゥクに乗って、乾ききった茶色い煉瓦の積まれた家々が点在する道を走ること10分ほど、ラクダ・マーケットに到着する。

そこにはラクダの他にも山羊やロバが何頭もいる。あるラクダは口に口枷をはめられ、あるラクダは手荒く水で洗われ、子ラクダは母ラクダのミルクを吸い、あるラクダは男性をのせて颯爽と駆け抜け、あるラクダは柱に身体を擦りつけて身体を掻き、ある男性はプラスチックの紐でラクダの口枷を作っている。

子どもも大人も集まってくる。

ラクダは一頭100ポンドから200ポンドほどで売買されているらしい。

近くには、ばっさりと切り落とされた山羊の頭が並べられている。道には干し草や炭が積まれ、人々はろばのひく荷台やドラム缶にのっかり、走っていく。

近くには山羊の肉を使った料理屋が並んでいる。休みの日の今日はゆったりとしたイスラムの服装を着た男性たちが豆や肉料理などを平らげた後、のんびりとベッドの上に寝そべり、昼寝をしている。

店のママ、アハーナさんが、山羊の肉を焼いたものに、トマトやきゅうり、ルッコラ、辛くないたまねぎなどの生の野菜を盛った皿、それにフールを銀のトレイに載せてもってきてくれる。

すると、隣の席に座っていた家族が、セブンアップとヨーグルトを混ぜた飲み物をわたしたちにどうぞと運んでくれた。最後に、ママが濃厚なハイビスカスティーを自らの手で作ってくれる。

しまいには、わたしはあなたたちのママなんだから支払いは要らないのだとアハーナさんは、言った。別れ際、彼女はずっと目を細めて笑顔でこちらを向いていた。

トゥクトゥクに再び乗って、スーク・リビヤへと戻る。運転手は、この国の交通は、問題が多いと何度も繰り返した。

トゥクトゥクから降りるとまもなく、再び声をかけられ、近くのジュース屋のハイビスカスティーやアラディップ・ジュースをごちそうするから飲んでいきなさいという男性に声をかけられた。

マーケットには、携帯電話や日用品、文房具に洋服や靴、野菜や魚のフライなどが並んでいる。アーケードにはでかでかとSAMSUNGやLGの広告が掲げられている。

朝には涼しい日も、午後になるとぐんぐんと着実に気温が上がってくる。扇風機が何台もまわる、涼しいモスクで一休みする。

室内では、幾人もの男性たちがあちらこちらでおしゃべりを楽しみ、多くの男性が、寝そべり、昼寝を楽しんでいる。

うとうととしていると、ある信者がどこからか買ってきた水のボトルとペプシのペットボトルをビニール袋にいれて、どうぞと手渡される。

ぼんやりとするほどの猛暑と乾燥した土地で、溢れるほどの飲み物をごちそうになっている。

そこからバスでまた20分ほどいったHamed el-Nilモスクで、金曜日の夕方からセレモニーが行われている。

多くのイスラム教徒信者が白い布を身体にまとっているところ、彼らは白だけではなく、緑に赤や黄色、黒といったカラフルな色の服も身につける。

到着した16時半ころ、モスク内の、メッカを模した中央をはさみ、片方で男性が杖を持って歌い、踊り始める。メッカをはさんだもう片方には、女性たちが集まっている。

しばらくすると一度モスクを出て、中休憩となる。男性たちは、茶をすすり、赤豆がふるまわれる。

17時半を過ぎると、モスクの前の広場で多くの男性が旗を持って歌い踊りながら入場をしてくる。マイクを通して歌が歌われ、緑や黄色、赤に塗られた太鼓を鳴らす。シンバルがそれにリズムをつける。

やがて、お香をもった男性が広場を取り巻く観客を回り、人々はそのお香を身体にふりまく。

ドレッド頭の教育係らしい男性が、広場を取り巻く若者たちに靴を脱がせ、裸足にさせる。棒でときどき小突く。ちゃんと踊りなさい、ということだ。

村長のような威厳のある男性たちが耳に手をかざし、あるいはこぶしや杖を振り上げ、音頭をとる。広場を緑の服をひらりと揺らしながら、ゆったりゆったりと回る。

数珠を身体に巻きつける男性、ヒョウ柄のような服を着た男性、抱擁をして挨拶をしあう男性、それぞれが身体に熱をもっていく。

まわりを囲む男性たちが、手を前後にふって身体を大きく揺らしながら、汗をかきつつ歌いあげ踊り続ける。あるいは、輪から出て、一人視線を宙に浮かべて、ひたすらにぐるぐると回転する男性や、杖をふりかざして輪に突進していく男性も現れる。

ラーエラーレエラッラ。アッラー。
ラー・イラーハ・イッラッラー、ムハンマドッラスールッラー。
ソーラン節のように聞こえてくる。

そのうちに香水が一人一人に振りかけられる。

やがてセレモニーが終盤を迎え、熱狂的に男性たちは踊り狂い、砂嵐がどこからともなく呼ばれてくる。

辺りは砂で霞む。

セレモニーが終わると、そのままばたりと倒れる人、手を前にかざして祈りを始める人、家路に急ぐ人と散っていく。

モスクも、隣の墓も、道路も、すっかりと砂嵐に包まれ、視界は遮られる。外食もままならない。今日はバナナとオレンジを買い、ゆっくりと夜を過ごすことにする。