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夜まで元気な街 – Urumqi / Tulufan, China

バスは長いこと停車をして時間調整をしながらウルムチへと進む。朝に目を覚ますと、既に高層ビルの建つウルムチに入ってきていた。時折古びた建物を見かければ、そこには壊すことを意味する「拆」の文字が書かれている。

外には長袖を着た人が大半で、バスから降りると肌寒かった。再びぷんとご飯の匂いがしてくる。道ばたでは包子やスープが売られ、それを人々は路上で食べていく。これからトルファンに向かって、列車のチケットを取るといった作業が残っていて、特に列車のチケット取りは少しでも早く買いに向かったほうが良いのだと思うが、そのご飯の匂いと人々が路上で食事をしていく風景にそそられて、思わず路上でちょこりと席につく。

元気なおばちゃんが包子と白玉スープよと出してくれる。白玉には甘くて砂糖のじゃりじゃり感が残るほどの餡が入っていて、もっちりとしている。それが白い実とともにまた甘いスープに入っている。人々は包子を、唐辛子をたっぷりと入れた醤油と酢を混ぜたものに入れてほおばっている。食事に改めて感動する。中華料理は、旨いのだ。

聞くと、この包子の中には野菜と、それから豚肉を使っている。このウルムチは、豚肉を食べないムスリム教が多く住む新疆ウイグル自治区にある。

51番のバスに乗って、トルファン行きのバスが出ている南バスターミナルへと向かう。街には、「今の不便は、明日の便利のためである」「困難に立ち向かえば、良いことが待っている」「世界に新疆を解らせよう、そして、新疆を世界に向かわせよう」といった勇ましい言葉が並んでいる。

遊園地がたち、あちらこちらで工事が行われているなかで、路上では、おばさんが唐辛子を広げて作業をしている。

建物には、ウイグル文字と漢字が併記されているか、もしくは漢字だけが書かれている。ロシア語はほんのときどきに交じる程度だ。

キルギスとカザフスタンを行き来するアリくんは、ウイグル人の住むところは汚い、漢族が住むところは綺麗だ、と暗にウイグル人を批判するように言っていた。

バスターミナルに入るのに荷物検査があり、水は持ち込めないと言われて、持ち歩いてきた大きくて重い水やペプシのペットボトルも回収されてします。お腹に入るだけ、ぐびぐびと飲んでみる。

ターミナルに着けば、トルファンへのバスチケットがすぐに購入できた。中国で列車のチケットをとることは難しいものの、バスならまだ大丈夫だった。

バスターミナル裏のバスに乗り込んで、しばらくすればバスは出発となる。荒れ地の広がる中をバスは進む。風力発電の風車がぐるぐると回っている。

2時間半ほど走ったところで、トルファンへ到着する。早速に安宿を探す。かつては泊まれていたと思う安宿も、今は規制が厳しくなったのか、どこも外国人は泊まれない、と言う。いつからそんな規則になったのかと尋ねても、昔からだと答えられるばかりだ。

外国人も泊まられるという安くはない宿を見つけて、そこに荷物を置く。

トルファンは盆地に位置していて、一番低いところは標高-154メートル、火州ともいわれる街であるものの、さして暑くない。宿で休んだ後、ほどなくして外に散歩に出てみると、8月の終わりに開催されているという葡萄祭りが開かれていた。

葡萄祭りといっても、葡萄は一粒も売られていなかった。代わりに、洋服やら玩具、身体に良い茸やドライフルーツ、お茶などの健康食品などが売られ、フライパンの実地販売も行われていて、人を集めている。輪投げやボール投げの純朴なアトラクションも大賑わいだ。

イスラム教徒の多い新疆ウイグル自治区のトルファンであっても、わずかにスカーフを頭に巻く女性がいる程度だ。

あちらこちらで話しかけられる。人によっては日本語の、よし、を知っているようで、それを連発する。

郵便局前の広場には噴水がイルミネーションとともに派手に噴きあげられ、ゆらりゆらりと揺れ、水は時折豪快に外に飛び出し、人々を濡らしていく。ウイグル人の男性に話しかけられ、干し葡萄をどうぞと手にのせられる。

そのわきの夜の広場にはたくさんの屋台が豆電球を照らしている。

鳥蘇ビールという名の、ウルムチのビールが売られていたので、それを買い求める。店員は、最近は北京の燕京ビールのほうが美味しいからそっちを飲む人のほうが多いけれど、良いのかと念押しをしてくる。

冷えたビール瓶を片手に、屋台にずらりと並ぶ串を指差し、焼いてもらう。羊肉とレバーの串、それにいんげんに茸や豆腐、ソーセージに茄子を炭火で焼いて唐辛子の効いた旨いタレをかけたものをほおばる。

これで十分にお腹は満たされていたものの、〆にラグマンを食べに行く。中華、新疆料理の美味しさに食欲はおさまらない。

22時半だというのに、葡萄祭りの勢いもまだ衰えるようすはなく、多くの人が行き交っている。子どもたちだって元気だ。

一軒の食堂に入り、ラグマンをオーダーする。もっちりとした麺に、別のお椀に入れられたインゲンや玉葱、ペッパーの炒め物をたっぷりと盛って、その上にぼとぼととお酢をかけていただく。やかんのお茶をばかばかと飲みながら、お腹いっぱいの一日だ。