Top > ブログ

ボリビアの特別支援学校 - Santa Cruz, Bolivia

今回サンタ・クルスで宿泊している宿は創業60年といい、一見こわい白髪のおじさんが門番をしている。泊まりはじめてから何度も「あとでカメを見ないか」と、その外見には似合わず、フレンドリーに話しかけられていた。

今朝はカメが既に起きているようで、おじさんは「カメを見て行きなさい」と手招きする。宿の一室から大きなカメがのっそりと出てくる。15歳のカメの名前は「Juan Evo」といって、今の大統領の名前なんだ、とおじさんはがははと笑った。

子どもたちが街角で、鶏肉やじゃがいもの入った温かいエンパナーダを売っていたので、それを買い求めて、もそもそと食べながら、歩く。

今日もメルカド・オキナワの近くでは露店などが出ており、その中の1軒の靴屋でサンダルを買い求めたり、薬局屋で高山病の薬を買い足したりする。

喉がかわいたので、屋台で売られていた白トウモロコシをベースにしたSomo Chichaを1杯買い求め、ぐびぐびと飲み干す。少し甘くて、冷たい。

そこから宿へ戻るとき、さきほどの子どもたちがまだエンパナーダを売っていて、わたしたちを見て、挨拶をする。

今日は、JICAの海外青年協力隊として友だちであるともみちゃんが働いている特別支援学校を見せてもらうことにする。毎日2時から5時半まで授業があるというので、12時前にカテドラルで待ち合わせをして、再びLa Cuisine De Los Chefで昼食をいただく。

今日のメニューは、乾燥じゃがいものチューニョや肉や野菜を煮込んだスープ、チャイロ、メインには牛肉のチャルケが入った炊き込みご飯に刻んだトマトや目玉焼きののったマハディート、そしてバナナフライとユカ芋がついてくる。デザートにはフランカ・セロがついてきて、ドリンクには冷えたレモネードを注文する。

食事をしながら、再び仕事の話を聞く。ボリビアでは自国で研究するというよりも他国からの文献や研究資料を借りてくることが多いのだという。

そして、こちらの学校には備品を買うお金さえなくて困ることが少なくないのだという。たとえば、壊れた時計や棚を買うお金が政府からも出ずに、学校も支払えない。

学校には遠い場所からさまざまな家庭環境の子どもたちが登校をしてきているので、1年に1度は先生が家庭訪問をして、その家庭をみながら保護者と話をすることが大切なことだが、先生の交通費が出ない。

備品は1年のはじめに、紙やのりなどのリストを渡して保護者が各自用意するものの、その経済的負担もある。

間食の時間があり、これは政府から費用が出るものの、保護者がそれ以上の間食をもたせる生徒もいて、生徒間に、家庭の経済格差があらわれてしまう問題があるのだという。

また学校を休む生徒に対するフォローもまだまだなのだという。ここでは大雨が降ると道路が閉鎖して通えなくなる生徒たちもいるというが、無断欠席の生徒たちへのフォローがまだ足りないという。

先生たちも今までの慣習から何か変化を起こすということは大変なことであり、なかなかに提案が受け入れられることが難しい。

今日は月曜日で学校の全校朝礼があるというので、友だちも紺に白のストライプの入った制服を着てきている。

昼食を終えてから、タクシーで、特別支援学校Preefaに向かう。学校は中庭を囲んでぐるりと校舎が建っている。壁には「みんな平等だけど、みんな違う」といった言葉が掲げられている。

大勢の生徒や先生たちががやがやと学校に入っていく。友だちはあちらこちらで挨拶を交わしながら、ときに子どもたちに抱きつかれながら、学校に入っていく。校長先生は、若くて綺麗に髪を束ね、グレーのマニキュアをした女性で、ご挨拶をする。

校長秘書の女性が朝礼開始の合図を鐘でからんころんとならす。この鐘も、今は一つしかないため、対象者別に使い分けができず、また鐘を鳴らす担当が常にいなければならないという問題があるのだという。だから、近いうちにパソコンを使って制御できるチャイムに変えようと検討中なのだという。

朝礼が始まる。
ピアニカに合わせて歌を歌い、その後、子どもたちが国旗をもって国歌を斉唱する。それから校長先生の話があり、再びピアニカに合わせて歌を歌う。

学校には2階建てで、現在JICAも一部資金を出して増築中なのだという。8年生のクラスでは生徒が10人ほど、先生がギターを取り出して一人一人に向けて歌ったり、みなで教室の後ろのマリア様に祈りをささげたり、先週何をしたかを前で発表させる。

他校で受け入れを拒否されたという生徒に対しても先生はゆっくりと落ち着かせる。

他に職業訓練として27歳まで通える木工班、裁縫班、料理班などもある。そのほか体育のクラスや音楽のクラスもある。

木工班を見学させてもらう。障害の程度によって、作業の進む生徒となかなか進まない生徒がいる。27歳で学校を出てもなかなか就職先を見つけるのは難しいのだという。他の職業訓練の班を経験して、進路を変更して木工班に入っている生徒もいるのだそう。

隣ではパン工房班がチーズ入りエンパナーダを作っている。ルーラーを使いながら、器用にくるりと生地を切っていく。作ったパンは、3時過ぎに各クラスの先生たちに売りに行くのだというが、いずれ校外でも売れるようにしたいと友だちは言った。

特別に、そのエンパナーダをいただいた。揚げたてのエンパナーダはさくさくとして、中はもっちりとしたチーズが入っていて、どうにも旨い。

スクレ行きのバスの時間が近づいてきたので、タクシーに乗り、ターミナルへと向かう。友だちも忙しい中見送りに来てくれる。

30分ほど遅れてバスは出発する。ぴしりと紺色の制服を着たともみちゃんは、そのまま学校へと戻る。どんどんと、ともみちゃんの姿が小さくなっていく。

サンタ・クルス近郊では緑の中に、別荘がぽつりぽつりと建っている。さわやかな風が窓から入り込む。そのうちに日は暮れていき、暗闇の中に連なる山とぽっかりと浮かぶ月を眺める。

ただひたすらに、この地で頑張って働いているともみちゃんのことを、想う。