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ヒトの道とウマの道 – Parque Nacional Torres del Paine, Chile

寒い中朝起きると、テントは結露をしていた。テントの入り口から顔をひょこりと出してみると、目の前の雪をかぶったAlmirante Nieto山が朝日に照らされている。濡れたテントを片しているうちに、手がかじかんでいく。

Hosteria Las Torresで朝食をとりにいく。マテ茶をつくり、パンとチーズ、それに青リンゴをかじる。

今日は、食料やテントなどを担いで11km離れたレフヒオ、Cuernosを通過し、その5.5km先のイタリアーノ・キャンプ場まで向かう。

馬のいるゆったりとした丘を上がる。道には馬のふんもあちらこちらに仕掛けられている。丘を上がりきると、右手に湖が見え、見えていなかった山々が先のほうに見えてくる。

馬に乗った人々と時折すれ違う。道ばたには、ヒト用の道はこちら、ウマ用はこちらと矢印が分かれている。

昨日大きな荷物をホテルに置いてトレッキングに出かけた時とは違って、今日は全ての荷物を背負っているものだから、動きも遅い。てくてくとロバのように歩き、時折岩を見つけては座って休み、クラッカーをかじる。

飛行機がまっすぐな雲をつくって、山の中へと線を描いていく。

ノルデンフェールド湖に沿って歩くCuernoまでの11kmが思いのほか遠く感じられたものだから、小屋が見えたときには足取りも思わず軽快になる。

この避難所もまた快適な山小屋で、靴を脱いで上がる。予定よりもずいぶんと遅い16時半ころになっていたものの、遅めの昼食をここでとることにする。小屋はピスコ・サワーもワインも提供しているところだったけれど、とりあえずの我慢をして、いつものパンにチーズとソーセージを皿に広げる。空いたお腹に、食事がじっくりと入っていく。

そこから今日テントを張るイタリアーノ・キャンプ場まではあと2時間ほど、日の沈む前になんとか辿り着きたい。夏のパタゴニアは日が長いのがありがたい。夜は20時半ころまで日が沈まない。

道を進んでいくと、土を掘り返して石を埋めるスタッフの男性たちがいたので、何をしているのか尋ねると「貧しいから、金を探しているんだ」と真顔で答える。

湖畔の砂利道を歩く。白い木が横たわっている。キャラメルを口にほおりいれながら、湖にに沿って多少のアップダウンを繰り返しながら歩いていくと、前方に氷河をたたえた大きなパイネ・グランデ山と、角のかたちをした「パイネの角」Cuernos del Paineが見えてくる。

徐々に暗くなりつつある中、草原を通り抜け、川を渡ると、ようやくイタリアーノ・キャンプ場にたどり着いた。20時になるころだった。

イタリアーノ・キャンプ場は、園内にあるいくつかの無料のキャンプ場の一つである。昨晩のようなホテルやレフヒオは併設されておらず、ただキャンプ場があるだけ、というからどれほどの場所だろうと思っていたら、管理棟も、キッチンという名の木造の小屋も、清潔なお手洗いも、川からパイプでひいてきた水のタンクもある、立派なキャンプ場だった。

こうして、日の暮れる直前によたよたと辿り着くと、管理棟の前にいた男性があたたかく迎え入れてくれ、キャンプ場について丁寧に説明をしてくれ、氏名と国籍、職業をノートに書くように言われる。緊急のときのために医者や看護婦がいるか記しておくのだという。

夕食は、テントの中でツナの缶詰をあけてマヨネーズと和え、丸パンとチーズとソーセージとともにつまむ。

テントの外から時折、雷のなるようなごーん、ごろごろと氷河の崩落する音がする。