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洗練された、肉とキャラメルの街 – Buenos Aires, Argentina

今朝は宿でトーストしたフランスパンにちぎったチーズや苺ジャムをのせて、紅茶とともにいただく。ぽかぽかと陽があたり、洗濯物がひらひらと風に揺れている。

アフリカ行きチケットについて尋ねるために、宿からほど近い南アフリカ航空やTAM航空のオフィスへ立ち寄る。窓口の女性は美人で、仕事が的確だ。

世界一幅が広いといわれている7月9日大通りには、何車線にも車が走り、その先に白いオベリスコがにょきりと立っている。

フロリダ通りからViamonte通りを曲がり、新しい港、プエルト・マデーロ地区へと向かう。ここは保税倉庫街を再開発したところで、ドックに面してレンガ造りの旧保税倉庫がたっている。洗練されていること、はなはだしい。

ドックを渡ったところにモダンなヒルトン・ブエノス・アイレスがあり、その裏に、パンにチョリソーをのっけたチョリパンを売る屋台がずらりと並んでいる。

それはまるで、高層ビルと緑が隣接する皇居近くを通り、臨海の再開発地区である東京の天王洲アイルにたどり着き、橙色の灯をともす歴史的建造物、横浜の赤レンガ倉庫をぬけて、都会の中にある明治神宮外苑にチョリパン通りがある、といった趣だ。どうにも既視感がある。

静かなドックには何棟ものオフィスビルが立ち並び、ボートが停泊している。夕暮れに向かうにつれて、空は徐々に淡いピンク色に染まり、ヨットクラブには一艇のヨットが着いて一人の男性を降ろしていく。

旧保税倉庫を改装したレンガ造りの建物には、アルゼンチン料理やイタリアンレストラン、T.G.I. Friday’sが軒をつらねている。どこもあたたかい灯がともり、爽やかな風のふくテラス席にはビールやワインを飲みながら、会話を楽しむ人々がいる。

身体にフィットした紺のスーツに赤いネクタイをした男性が携帯を片手に歩いていく。
仕事帰りふうのカップルが手をつなぎながら、歩いていく。
ジョギングをしている人もいれば、ローラーブレードを脚につけて集まる若者もいる。

大層な高層オフィスビルの裏手に並ぶチョリパン屋台の中で、お勧めをしてもらったLa Parrilla de Amparitoを目当てに、ぐんぐん進む。

黄色い店構えがほとんどのチョリパン屋の中で、ここは店が青く塗られているので、よく目立つ。24時間開いているというその店にたどり着いたときには、さばさばとした中に可愛らしさのある短髪の女性から、たっぷりとした身体つきの陽気な男性に、ちょうど交代する時間だった。

黒いエプロンをかけた男性は、大きなチョリソーとパンを網にのせる。もくもくと煙が立ち上がる。焼きあがると、パンにチョリソーをぽんとのせて、渡してくれる。

それを手に持ち、手前の冷蔵のガラスケースに入った惣菜から好きなものを選んで、チョリソーの上に盛る。

マヨネーズのかかったコーンや野菜、たまねぎやナスのマリネ、レタスやトマト、フライドチップをこんもりとのっけて、上からマヨネーズやケチャップ、チーズやマスタード、サルサ・ゴルフなどをぶっかける。

それを口をいっぱいに開けて、もぐもぐとかじる。

すぐそばには、高層ビルが立ち並び、反対の側には、野生の動植物の自然保護地区が広がっている。

今夜22時15分にコルドバへと発つバスに乗るため、すっかり満たされたお腹を抱えて、ターミナルへと急ぐ。左半分を光らせた月がぽかりと浮かび、その下を、新しい造りの電車が通っていく。

街では、昨晩と変わらない場所で、今日もタンゴが踊られている。ターミナルの裏手にはスラムがあって治安が良くないというので、レティーロ駅を抜けて、慎重にターミナルへと歩く。

El Practico社でチケットを購入し、Capilla del Monte行きのバスに乗り込む。MAERSK社のコンテナが並ぶ道や空港をぬけ、バスはコルドバへと向かう。

15分ほどすると、22時半という時間にもめげずに、添乗員の男性が夕食を配り始めた。ハムとチーズをはさんだサンドイッチに、キャラメル味のパイに飴、そしてマヨネーズがついている。ドリンクはコカコーラ。

密封包装されたプレートの上で、サンドイッチは二つ並べてぽんと置いてあり、唯一の違いはパンの素材だけである。前回のバスでもじゃがいものソテーに、じゃがいものグラタンがついていた。

二つのサンドイッチ。なぜ、ハムとチーズという全く同じ食材をはさんでいるのか。それなら、なぜ同じパンを使わず、違うパンを使うのか。気配り、なのか。

知る由もない。

さきほどのチョリパンですっかり満腹な22時半、配られた夕食はしまっておくことにして、眠りにつくことにする。周りの乗客もみなほとんど夕食に手をつけていない。

こうしてアルゼンチンでは、肉とキャラメルの日々が続く。

高速道路に乗って、バスは月とともに走っていく。