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尖ったフィッツ・ロイ山 – El Chalten / Monte Fitz Roy, Argentina

朝起きて宿を出ると、町からフィッツ・ロイ山の尖峰が見える。今日は往復8時間と言われる、フィッツ・ロイ直下のロス・トレス湖までトレッキングに行く。

18時半に次の目的地、エル・カラファテ行きのバスがターミナルから出るので、それに間に合わせたい。

朝の8時30分頃、トマトとパンをかじりながら歩き始める。空も晴れ、朝のきりりとした空気が町を包んでいる。

サン・マルティン通りを歩き、登山口に入る。馬が草を食むのを眺めながら、丘陵地帯を川沿いに歩いていく。

森の中を歩き、展望台までたどり着くと、雪をかぶった険しいフィッツ・ロイの峰を見渡すことができる。強い気流がぶつかり、山頂から白い煙をはいているように見えたことから、先住民の人々はこの山を「エル・チャルテン(煙をはく山)」と呼んでいたのだそう。

穀物の入ったビスケットをかじりながら、さらに奥へと入っていく。フィッツ・ロイや、ぴたりと動きが止まっているように思える氷河を眺めながら、進む。

山々が池に映し出されている。黄色く色を染めた草が辺り一面に広がり、風に揺れている。川は冷たく、澄んでいる。

ここもまた、低い木が生えるエリアを抜ければ、緑あふれる森に入り、そうかと思えば、砂利の広がる日本庭園ふうエリアに、湿地に草の生えた尾瀬ふうエリアといった具合に、場所ごとに全く違った景色が広がっている。

キャンプ場を過ぎてしばらく歩くと、そこから一気に、時折水の流れる砂利道を上まで上がっていくことになる。そのきつい上がり道からは、目的地であるフィッツ・ロイが、見えない。

1時間で上がれるところを1時間半ほどかけて、一歩一歩上がっていく。大きな丘を登りつめていくと、やがてフィッツ・ロイの峰がひょっこりと見えてくる。

上がりきると、目の前に、淡い緑の色をしたロス・トレス湖、その向こうに氷河と切り立った山々がそびえ立つ。湖のほとりをくるりと回ると、はるか下に、スシア湖も見えてくる。

パンを食べたりクッキーを食べたりとのんびりしていたら、時刻はもう14時半になろうとしていた。バスの時刻まであと4時間しかない。行きは4時間半かかっている。帰りは下りが多いとはいえ、一度宿に戻って荷造りなどもしなければならない。

急いで帰る。

1時間半かけて上がった山の上からは、右手にマドレ湖、イーハ湖、カプリ湖が青く水を湛えているのが見える。

砂利道をぽんぽんと下がり、前のめりになって歩き進める。帰りは、カプリ湖のほとりを通ることにする。澄んだ水面がゆらりゆらりと風に揺れる湖の向こうに、フィッツ・ロイの山が小さくなっていく。

それからも速度を緩めることなく、てくてくと歩いていく。息を切らしながら、やがてエル・チャルテンの町が突然に視界に入れば、思わず声をあげる。

気がついてみれば、町に戻ってきたのはまだ17時だった。2時間半で帰ってこれたことになる。

そんなわけで、町に着いたら、途端にくったりとしてしまう。アスファルトが固く、脚がじんじんと痛む。よたよたとスーパーまで歩き、パンや林檎、チーズと牛乳や水を買い求める。パタゴニア地方へは、ブエノス・アイレスから飛行機で物資が運ばれることも多く、3割ほど値の高い商品も少なくない。

こうしてバスの出発時間に間に合い、チーズとパン、林檎をかじりながら、次の町、エル・カラファテへと向かう。バスの窓から、遥か遠くにフィッツ・ロイが見える。やがて夕日が丘をオレンジ色に照らしながら、バスは3時間ほど走る。

エル・カラファテの町は、先ほどのエル・チャルテンよりも少し大きく、有名ブランドのスポーツ用品店も並び、カジノもある。既に23時になろうとする頃にもレストランに客が入っている。

寒い夜、ろうそくのともった屋外で、お洒落をしてワインを片手に語らう人々もいる町だ。