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パタゴニアをぬけて、北へ進む。 - Rio Gallegos to Buenos Aires

朝起きてみると、草むらの大地の向こうの空がほんのりと赤く染まっている。

朝食にと、キャラメルをはさんだ砂糖のパイケーキと、コーヒーや紅茶のセットが手渡される。コーヒーにミルクを入れて、ケーキをほおばる。

コロラド川を境にほぼ南緯40度以南をパタゴニアというので、ここもまだパタゴニア地域だ。

買っておいたウエハースもかじりながら、バスはそのまま北へと上がっていく。やがて、12時ころ、空港もあるトレレウという町のターミナルに着く。町には、新しい建物も多く、人通りはあまりない。ターミナルで、半分ほどしかいなかった乗客が次々と降りて行き、バスは一層がらんどうになる。

がらりとしたバスは、海を右手に見ながらペンギンやオタリアなどの生息するバルデス半島を通過していく。大地は背丈の低い草でおおわれた高原、パンパがひろがり、道ばたには黄色の花がほそぼそと咲いている。

14時も過ぎたころ、昼食が配られる。
スパイシーなサラミをはさんだサンドイッチ、ハムをはさんだパイ、ドリンクにはペプシが配られる。サンドイッチもパイも塩味の効いた肉がはさまっていて味が似ている。

15時にはSierra Grandeという町を経由する。がれきを運ぶトラックが勢いよく走っていく。道ばたでは時折工事があって、風に吹かれて砂埃が舞っている。

ネグロ川を渡り、それでもパンパが続いていく17時半を過ぎたころ、突然Bingo Andesmarと書かれた紙がそれぞれに配られる。

そしてぴしっと決めた添乗員男性のアナウンスにより「21」、「にじゅういち」「に、いち、にじゅういち」…と始まる。アルゼンチン人の抑揚あるスペイン語のせいか、アナウンスそのものがプロらしい。しばらくしてビンゴを決めた女性には、豪華白ワインが贈呈される。

ゲームが終わるとすかさずDVDで引き続きエンターテイメントが流される。テレビの中の司会者も、バスの添乗員と同じ抑揚のある話し方をしている。

18時を過ぎたころ、パタゴニアとの境目であるコロラド川を渡る。草の広がる平原から川を渡り、一度砂地が広がった後、再びまた草の広がる高原へと戻る。これで、パタゴニアから離れることになる。

その頃、バスの中ではどんどんと香水が強くなる添乗員男性が、軽食を配り始める。コーヒーや紅茶、マテ茶に、クッキーとパンケーキ、桃のジャムのセットである。

19時になろうとしている時間に、夕食の前の軽食というのは、20時ころから夕食のために店が開きはじめるという、いかにもアルゼンチンふうなのである。

窓の外には太陽が夕日に向けて沈みかけている。

19時半になるころ、太陽はぐんぐんと吸い込まれるように平坦な大地の向こうに沈んでいった、と思うのもつかの間、太陽は地平線の向こうから、またほんの少しだけ顔をひょこりと出して強い光を放ち、それからまた再び沈んでいった。

その後にはより赤みを増していく空と、ほっそりと浮かぶ月が残された。

22時を過ぎたころ、Bahia Blancaという町のターミナルに到着する。高い建物も洒落たホテルもある町である。この時間でも窓の外ではサッカーをしている男性たちがいて、窓の中のテレビからは、ブラッド・ピット主演の「マネー・ボール」が流れている。

どかりと倒れるリクライニング・シートから、たくさんの星を頭上に見る。