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2012年01月

知らなかったコロンビア - Cartagena, Colombia

朝目覚めて、世界が揺れていないことに、ほっとする。宿のテラスで、昨夜買ってきたオールブランとミルクにレーズンを入れて、食べる。

今日は旧市街のEl Centroを中心に歩くことにする。その主な入口となるのが、センテナリオ公園の先に位置する、1875年に建てられた時計台である。

時計台をくぐるかたちで城壁に入ると、かつて奴隷市場が開かれていたPlaza de los Cochesがある。桃色や黄色、えんじ色といった家々の窓には白や緑や茶色のバルコニーがしつらえてある。

アーケードでは、コロンビアの伝統菓子を売る店がずらりと並んでおり、どの店もほぼ同じものを売っている。タマリンドを砂糖菓子で包んだボール、白いコンチータ、ピンク色のグアバのココナツ菓子を、それぞれ透明の大きな瓶から取り出してもらう。

パレードやセレモニーが行われていた、現在工事中のPlaza de la Aduanaを抜けて、サン・ペドロ・クラベール教会に向かう。この教会は17世紀にイエズス会によって建てられたものがもととなっており、修道院を併設している。緑の木でできた透かし扉からは、携帯電話をいじる修道女が見える。

そこからカリブ海のほうへと進むと、城壁にぶつかる。カリブ海を横目に少年たちがサッカーをしており、国内有数のビーチであるボカグランデの高層ビルが背景に見える。

城壁に上にあるCafe del Marというバーはこの時間には閉まっており、海を眺めるテーブルと椅子だけが並べられている。地元の人たちはビニール袋にビールなどを入れてどこからかここに集まってくる。バーが閉まっていることに便乗して、全身ボブ・マーリーグッズに身をつつんだ男性が、がらがらとビールや冷たい飲み物を引いて、売りに来る。

コロンビアとカルタヘナの旗が大きくはためいている。
壁を黄色く塗った家々の間を黄色いタクシーが通る。

サント・ドミンゴ教会の前に広がるサント・ドミンゴ広場には、カフェのテラス席が並び、人々が団欒を楽しんでいる。広場には、Fernando BoteroによるFigura Reclinada 92と名付けられたふくよかな女性像が寝そべっている。

町を歩いていると、ボートに乗っていた仲間や船長、クラウディアとすれ違う。それほどまでのこじんまりとした旧市街、El Centroである。

すっかりと暑いので、San Lorenzo GalateriaでチョコレートとクリームのStracciatellaとティラミスのアイスクリームをオーダーする。この店はガラス張りのショーウィンドウから好きなアイスクリームを選ぶことができる。次々と客が入っていく。

外は暑く、どんどんとアイスクリームがとけていく。カテドラルを通り、ボリバール広場へと出る。黄色と青、赤の衣装を着た女性が、金属の器に入れた西瓜やマンゴー、パイナップルなどを路上で売っている。

17時に船長、クラウディアやみなと待ち合わせをする。

みなは待ち合わせ場所へ向かう道のりすがら、商店に立ち寄りビール瓶を買って歩きながら、飲んでくる。船酔いしても、ビール。飲むための待ち合わせ道中にもビール。みな、よく、飲む。

パスポートには1月15日付のコロンビアの入国スタンプが押されている。Salsa Donde Fidelのテラス席に座り、Club Colombiaを2瓶あける。

昨日わたしたちが食事をしたところにみなが行きたいとなり、El Coroncoroに連れて行く。今日はモツの入ったモンドンゴ・スープをオーダーする。昨日と変わらず店内はむわりと暑い。

みなと別れてから、再び、踊りが繰り広げられ、ライトアップされたEl Centroに行く。城壁手前のNH Galeriaの出窓に、村上隆の「お花」グッズがたてかけられていた。

村上隆はコロンビアで美術に関心をもつ人の間では知られた存在だといい、グッズもよく売れている。
南米の現代アート市場は好調のようで、特にブラジルの市場は良いという。もともとコロンビア人であったオーナーのNohra Haimeさんがニューヨークに画廊を出し、後にこのコロンビアの地に画廊を出したのだという。

世界各地の作家を扱っているといい、旧市街のあちらこちらに作品が置かれているギリシア人作家Sophia Variの彫像も政府の依頼を受けて、NHギャラリーがコーディネーションをしたのだという。

夜のCafe del Marにたどり着く。昼間は椅子が並べられているだけだった空間に、人々が集まり、洒落た音楽が流れている。

遠くにはボカグランデの高層ビルのイルミネーションが並び、海の部分は暗闇に沈んでいる。

砲台に座り、風に吹かれながら、それを眺める。
コロンビアは思っていたよりもずっとキラキラとして明るかった。

コロンビアという国に降り立つ。 – Cartagena, Colombia

夜中の3時30分ころ、錨を降ろすガラガラという音で目が覚める。あれほどの揺れは収まり、ちゃぷりちゃぷりと水の音がするだけだ。

ベッドの上にある窓をガチャリと開けて顔を出してみると、目の前に眩く光る豪華客船と海岸に並ぶビルが輝き、夜も働き続けるガントリークレーンがコンテナを動かしている。

ボートに乗った日には満月だった月も、右半分を黒く埋めている。

こうして、南米、コロンビアのカルタヘナに到着した。もう揺れずにすむ。

朝の8時半ころまで再び休んでから、みな揃って朝食をいただくことにする。ハムにチーズ、きゅうりとトマト、パンにコーヒーとパイナップル。ようやくみな揃ってゆっくりとおいしく食事をいただくことができる。

船長は一人、ゴムボートに乗り換えて、カルタヘナへのイミグレーションオフィスへ向かう。

Silver Spiritと書かれた客船がゆったりと沖へ出ていく。
岸には第七光洋丸と書かれた日本船籍の船も泊まっている。
港の海の色は茶色く濁っている。もう食器を海で洗うことも、できない。

2時間ほどして戻ってきた船長は、パスポートは明日にならないと戻ってこないから、明日17時に待ち合わせをしよう、そこでパスポートを返します、と言った。そして、パスポートのコピーが手渡される。

ティムが言う。
「この2週間、パナマでのボートの予約手配から始まって、ずっとボートに乗ることばかりを考えていたから、また旅に戻るのが不思議な感じがするよ。」

12時半過ぎ、船長がわたしたちをゴムボートに乗せてカルタヘナ、マンガ地区の桟橋へと送っていく。

桟橋に荷物を置いて、沖に泊まっているCleo’s Angelを眺める。
もう足元は揺れない。大きな荷物をしょって、南米の旅が始まる。

濁っている海でも、少年たちは発泡スチロールによじ登ってはまた海に飛び込んで、遊んでいる。その横では、髪を逆立ててジーンズにボーダーのシャツを着た二人のお洒落男子が、音楽を聴きながらやれやれと少年たちを眺めている。

桟橋の近くに座っていたダイビングが仕事だというおじちゃんたちにカルタヘナの中心を聞き、宿の多いGetsemani地区へ橋を渡って向かう。

カルタヘナは1533年にペドロ・デ・エレディアが上陸してから南米各地からの物資を運ぶ港として栄えたが、16、17世紀にかけて海賊に悩まされたことから、城壁が町を囲み、要塞が構えられた。

4kmにも及ぶ城壁の内側に位置するGetemaniは今も植民地時代の面影が残されている。

狭い路地には、両端から白いビニール袋がずらりと並べられ、クリスマスを祝っているのだという。ブーゲンビリアがところどころに見られる路地をじぐざぐと進み、Santisima Trinidad教会を通る。

メディア・ルナ通りは宿が数多く並んでいるものの、満室のところも少なくない。乾季の今はコロンビアもまたハイシーズンなのであった。

Hostel Holidayにようやく部屋をとり、夜になって宿の近くのレストランEl Coroncoroへ向かう。地元の人で賑わうその店は、キッチンの暑さがそのままむわりと部屋を満たしている。

パナマからボートに持ち込んだ4本のビール瓶を一本も飲むことができずにコロンビアに辿り着いたものだから、ここで飲んだ、きりりと冷えたAguilaビールはまた格別なのであった。あわせてPescado Guisadoという、モハラという魚をココナッツで焼いたものにポテトフライとライスのセットを注文する。

コロンビアはとても良い国で、人々がフレンドリーだ、とコロンビアを旅した人々は口を揃えて言う。

その国に、やって来た。

パナマ―コロンビア国境情報

ボートでパナマからコロンビアのカルタヘナへ入国する国境情報です。

①ボートの船長にパスポートを預ける。
②船長がサンブラス諸島で、パナマの出国手続。
③船長がカルタヘナでコロンビアの入国手続。
(90日滞在の入国許可にしてもらうよう、船長に確認してください。)
④船長からパスポートを返してもらう。
(手続上、翌日に返してもらうことがあります。)

いるかとよたりよたり。 - Sailing to Colombia, Panama

夜中の2時から6時はわたしたちのシフトである。ふらふらと操縦席につき、4時間。

大きな波とともに、ボートは上へ下へとゆらりゆらりと進んでいく。帆がぎしぎしと音を立て、波はガタンゴトンと船底にあたりつづける。

眠気とたたかいながら、他の船が視界にないか確認をしながら、風の向きをみて、時折舵の向きを変える。

朝の6時にシフトを終えるころ、前方の東の空がほんのりと明るくなっていった。
同時に暗い海の色にもほんの少し明るい青色がさしこんでくる。

そして、あちらこちらに、いるかがぴょんぴょんと飛び出した。
多くのいるかがあちらこちらで頭を出し、円を描いて海面にまた潜る。2頭、3頭が横並びに泳いでいるものもいれば、縦に並んで次々と頭を出すものもいる。

そして、それでも、また眠りにつく、しかない。

16時過ぎによたりよたりとデッキに出る。風が強く、常時5ノット以上出ている。
用意されていたシーチキンとコーンをパンに乗せて口に入れる。

「あと10時間くらいでカルタヘナに着きます。」

18時ころ再びシフトにつくものの、30分ほど経ったころに船長が言う。
「ここからは運転が難しいから、わたしが代わります。もっと運転したいですか?大丈夫ですか?」

わたしたちがシフトで回している間は足を投げ出してそれを見ている船長も、一番大変なときに操縦をするのだ。

酔い止め薬を飲まなければ酔ってしまうこともあるという、がはがは笑う、大きなお腹の船長。

こうしてまた船長が操縦席につく。
デッキには操縦席の船長と、煙草をくゆらせているクラウディアとわたしたちしかいない。
暗い海をざぶりざぶりとボートは大きな曲線を描きながら、前へ前へと進んでいく。

揺れるノンストップ航海 - Coco Bandero Cays / Sailing to Colombia, Panama

夜中に雨がぱらりと降って船内の窓を閉めたものの、朝になれば目の前に白い砂浜の島と幾層にも青い色の重なる海が目の前に広がっていた。

船の後ろ側のテーブルで、スクランブルエッグやチーズとハム、トマトにパン、そしてコーヒーとパパイヤをいただく。

今朝もいつもの朝と同じように、タンクに水を入れて、砂糖とタマリンドの塊を入れてかき混ぜ、ライムを切って絞ったものを入れる。それから海水に塩をのぞいて凍らせておいたものを入れて、ドリンクとする。

クラウディアがいつものようにボートの前に移動して錨を見ながら、手で合図をして船長とそれを巻き上げる。

「これから、コロンビアのカルタヘナに向けて40時間のノンストップ航海を始めます。」

白にオレンジ色のふちのついた大きな帆がバサリバサリと音を立てながら二つ立てられた。

小さな砂の島が徐々に遠く小さく消えて行き、次第に海は深い青色へと色を変えていく。

決められたシフト制で操縦席に座り、監視をする。
時折別の船が視界に見えると、船長を呼びに行き、指示を仰ぐ。

操縦席には深度や風向き、速度、航海時間などを表示するメーターがあり、その下にエンジン機器が並んでいる。シフト担当者は風の向きを表示する数字を見て、舵の角度を変えるボタンを「+1」を押してみたり「-1」と押したりする。

速度はおよそ5ノットで進むが、あまりに遅くなったときには風だけに頼らずエンジンをかけて進む。

お昼には、じゃがいもや卵にバジルをかけたもの、夜にはそれは美味しいローストチキンがふるまわれるが、そのころにはボートはどこかをつかまらなければ席を立てないほどになっていて、食事をするのもままならない。

それぞれが酔い止め薬がきれる時間を気にかけ、キャビンから外へ出るのも、キャビンへ入っていくのも大変な状態だ。

外の風に吹かれたり、操縦席にいて水平線を見ているとまだ気持ちは楽だが、キャビンの部屋の戻ろうとすると、ヨタヨタとして途端に酔ってしまう。ベッドになだれ込むようにたどり着き、ぴょんぴょんと動くものとともに、とりあえず眠ってみる。

というより、眠るしか、ない。

船底が波にあたり、下から突き上げるようにガタンゴトンと爆音をたてる。
こわれるんじゃないかと思うほどだ。