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2012年03月

パタゴニアをぬけて、北へ進む。 - Rio Gallegos to Buenos Aires

朝起きてみると、草むらの大地の向こうの空がほんのりと赤く染まっている。

朝食にと、キャラメルをはさんだ砂糖のパイケーキと、コーヒーや紅茶のセットが手渡される。コーヒーにミルクを入れて、ケーキをほおばる。

コロラド川を境にほぼ南緯40度以南をパタゴニアというので、ここもまだパタゴニア地域だ。

買っておいたウエハースもかじりながら、バスはそのまま北へと上がっていく。やがて、12時ころ、空港もあるトレレウという町のターミナルに着く。町には、新しい建物も多く、人通りはあまりない。ターミナルで、半分ほどしかいなかった乗客が次々と降りて行き、バスは一層がらんどうになる。

がらりとしたバスは、海を右手に見ながらペンギンやオタリアなどの生息するバルデス半島を通過していく。大地は背丈の低い草でおおわれた高原、パンパがひろがり、道ばたには黄色の花がほそぼそと咲いている。

14時も過ぎたころ、昼食が配られる。
スパイシーなサラミをはさんだサンドイッチ、ハムをはさんだパイ、ドリンクにはペプシが配られる。サンドイッチもパイも塩味の効いた肉がはさまっていて味が似ている。

15時にはSierra Grandeという町を経由する。がれきを運ぶトラックが勢いよく走っていく。道ばたでは時折工事があって、風に吹かれて砂埃が舞っている。

ネグロ川を渡り、それでもパンパが続いていく17時半を過ぎたころ、突然Bingo Andesmarと書かれた紙がそれぞれに配られる。

そしてぴしっと決めた添乗員男性のアナウンスにより「21」、「にじゅういち」「に、いち、にじゅういち」…と始まる。アルゼンチン人の抑揚あるスペイン語のせいか、アナウンスそのものがプロらしい。しばらくしてビンゴを決めた女性には、豪華白ワインが贈呈される。

ゲームが終わるとすかさずDVDで引き続きエンターテイメントが流される。テレビの中の司会者も、バスの添乗員と同じ抑揚のある話し方をしている。

18時を過ぎたころ、パタゴニアとの境目であるコロラド川を渡る。草の広がる平原から川を渡り、一度砂地が広がった後、再びまた草の広がる高原へと戻る。これで、パタゴニアから離れることになる。

その頃、バスの中ではどんどんと香水が強くなる添乗員男性が、軽食を配り始める。コーヒーや紅茶、マテ茶に、クッキーとパンケーキ、桃のジャムのセットである。

19時になろうとしている時間に、夕食の前の軽食というのは、20時ころから夕食のために店が開きはじめるという、いかにもアルゼンチンふうなのである。

窓の外には太陽が夕日に向けて沈みかけている。

19時半になるころ、太陽はぐんぐんと吸い込まれるように平坦な大地の向こうに沈んでいった、と思うのもつかの間、太陽は地平線の向こうから、またほんの少しだけ顔をひょこりと出して強い光を放ち、それからまた再び沈んでいった。

その後にはより赤みを増していく空と、ほっそりと浮かぶ月が残された。

22時を過ぎたころ、Bahia Blancaという町のターミナルに到着する。高い建物も洒落たホテルもある町である。この時間でも窓の外ではサッカーをしている男性たちがいて、窓の中のテレビからは、ブラッド・ピット主演の「マネー・ボール」が流れている。

どかりと倒れるリクライニング・シートから、たくさんの星を頭上に見る。
 

パタゴニア、リオ・ガジェゴス経由ブエノス・アイレス行き - Border with Chile / Rio Gallegos to Buenos Aires, Argentina

チリを出国した後、すぐにアルゼンチンのイミグレーション・オフィスで再度入国審査をするのかと思っているうちに、またうとうとと眠りにつく。

気づけばアルゼンチンのリオ・ガジェゴスに着いたという。チリの出国スタンプが押されてパスポートがバスの添乗員から戻ってきたときには、既にアルゼンチンのスタンプも押されていたのだった。

こうして気がつかないうちにアルゼンチンへの入国も無事に果たし、リオ・ガジェゴスのターミナルで20時発のブエノス・アイレス行きのバスを待つことにする。

テレビからはまたサッカーの「ゴォール」の叫び声が聞こえてくる。WiFiを完備したカフェには幾人もの人々がパソコンを片手にのんびりとしている。

発車時刻の20時になり、バスのほうへと向かう。2階建ての新しいバスだ。ウシュアイアで、ブエノス・アイレスまでバスで行くと人々に言うと、「3日かかる。遠すぎる。飛行機よりもかえって高くつくかもしれない。飛行機で行ったほうが良い。」と口をそろえて言われていた。

それを反映してか、バスは半分の席も埋まっていない。

静かなバスは、ブエノス・アイレスまで36時間ほどの旅に出発する。出発後まもなく夕食が配られる。

鶏肉と野菜、じゃがいものソテーにじゃがいものグラタン、パンとチーズとハムにスティックパン、プリン、飲み物はスプライトが配られる。

プレートにのった食事をテレビから流れる映画とともにいただいていると、ふいにバスの全ての電気とエンジンが消えた。

真っ暗な道で、車内は暗闇、音もなくなった。それでも誰も何も言わずに、しんとしている。1分ほど経過し、電気がぽつぽつと復活し、エンジンもかかった。それでもまた誰も何も言わない。

髪をムースで立て、ぱりっと白いシャツを着こなしているバスの添乗員の男性は、変わらずに黙々と動き回っている。

夜が、更けていく。

アルゼンチン―チリ国境情報(ウシュアイア~リオ・ガジェゴス)

ウシュアイアからリオ・ガジェゴスへのルートです。

※ウシュアイア、リオ・ガジェゴス共にアルゼンチンの都市ですが、陸路では一度チリに入国し、再度アルゼンチンに入国する必要があります。
※ウシュアイアからブエノスアイレスへの直行のバスはありません。一度リオ・ガジェゴスで乗り換える必要があります。

1.ウシュアイアからリオ・ガジェゴスに行く国際バスは、早朝5:00発。
※2社あり、2社とも早朝5:00発です。A$445.00 海沿いのバスターミナルから出発。
2.チリ国境が近くなると、バスの車掌がパスポートを回収に来る。
  国境近くのアルゼンチンのイミグレで、出国と再入国のスタンプが押される。
  ※バスを降りる必要はありません。バス会社の人が手続をしてくれます。
3.アルゼンチン側の国境で、荷物検査(X線を通す)。
  ※初めてアルゼンチン側で荷物検査がありました。麻薬を調べるためと思われます。
  荷物を全て機械に通します。
4.チリ側の国境で入国審査。パスポート及びバス会社で配られたツーリストカードを提出。
  ※チリに入国する際は、必ず荷物検査があります。
   果物・野菜・牛乳等は、事前に処分した方がいいです。
5.マゼラン海峡をフェリーで渡る。
  ※マゼラン海峡を渡る道路がないため、一度バスごとフェリーに乗ります。
   バスを降りる必要はありませんが、バスを降りて、フェリーの中を自由に
   歩きまわることができます。
6.チリ側国境で出国手続き。
  ※バスを降りる必要はありません。バスの車掌さんがパスポートを回収し、手続してくれます。
7.アルゼンチン入国手続は不要。リオ・ガジェゴスへ。
  ※2で、手続は終了しているようです。

◎両替
 国境付近には、両替する場所はありません。

あっという間のチリ – Chile on the way from Ushuaia to Rio Gallegos

牛や馬がのんびりしている大地をバスは30分ほど走り、チリ側のイミグレーション・オフィスへと向かう。

その間に、記入をしておいたチリ税関用の書類もまた提出が求められる。このチリのイミグレーション・オフィスもまた、ウシュアイアに入ったときと同じ場所である。

腕にタトゥーをほどこし、黒ぶちの眼鏡をかけ、髭を生やした若い男性が、入国審査をする。何の問題もなく、入国し、向かいの建物にある荷物検査台へと移動する。

ほっそりとした眼鏡をかけた厳格そうな見た目の荷物検査担当の男性が、荷物検査に関する説明を簡単にし、乗客7人はそれを神妙に聞く。

とにもかくにもチリにまた入り、バスは北へと向かっていく。

朝食用に、茹でて鞄につめておいたラビオリを取りだし、箸でつまんでいると、バスの添乗員の男性が、どうやって使うんだと興味しんしんの様子だ。ウシュアイアは、バスの職員まで、なにやら親切だ。

しばらくすると、グレープフルーツジュースとピザやチキンのエンパナーダ、クロワッサンやキャラメルパンの入ったセットが配られる。ぱくぱくと食べていると、そのうちにマゼラン海峡に到着する。海の向こうから赤い色をしたフェリーが近づいてきて、岸に到着するときにパカリと前方の壁を開けて、それを陸にかける。

「フエゴ島へようこそ」とかかれた看板から離れ、バスに腰かけたまま、フェリーに乗り込む。

バスや乗用車がフェリーに載った後、羊が3段ぎゅうぎゅうと押し込められたトラックも2台載る。ある羊は空を見上げ、ある羊は別の羊に乗り上げる。そんな羊たちが運ばれる一方、フェリーのカウンターではホットドッグが売れていく。

海峡を渡り、更に1時間ほど走ると、またパスポートをバスの添乗員に手渡す。チリを出国する手続きをする。もうバスを降りる必要はなく、添乗員の男性が、皆のパスポートを抱えて出国の手続きをしてくれる。

チリの、簡単すぎる出国だった。

静かな夜のウシュアイアから、再び一度チリに入る。 – Ushuaia to the border with Chile, Argentina

バス出発時間の朝5時が近づいてきたので、店を出て、ターミナルへと向かう。港はぽつりぽつりと灯りをつけているが、街はまだ静かに眠っている。冷たい風の吹く中、7人の乗客が集まり、バスは出発する。

アルゼンチンのウシュアイアからブエノス・アイレスに行くためには、一度チリに戻ってマゼラン海峡をフェリーで越え、またアルゼンチンに入国しなおし、リオ・ガジェゴスで一度バスを乗り換えていくことになる。

7時を過ぎると、窓の外の空が赤く染まってくる。深い眠りについていた8時半ころ、バスの添乗員の男性からパスポートと必要書類を提出するように言われる。

バスの席についたまま、パスポートと、チケット購入の際に手渡されて記入をしておいた書類を手渡す。しばらくしてからアルゼンチンの出国スタンプが押されて、戻ってくる。

再び1時間ほどうとうととしていると、ウシュアイアに向かう際に一度通ったアルゼンチン側のイミグレーション・オフィスに到着する。

既にパスポートにアルゼンチンの出国スタンプが押されているので、出国審査は必要ない。その代わりに、鞄を中国製荷物検査台に通してチェックを受ける。検査台の先には、茶色い麻薬探知犬が待ち構えている。

無事に検査が終わると、短い草の生えた大地をバスが再び進み始める。