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トルコの古民家と職人 – Ankara / Safranbolu, Turkey

ターミナルに到着したネヴシェヒル社のバスは、夜中の1時にアンカラに向けて出発する。ほどなくすると夜中であっても蝶ネクタイの男性添乗員によって、コーヒーやバナナケーキが配られる。

朝の5時半には朝日に照らされたアンカラの街へ到着した。アンカラという街は、トルコの首都であり、古い歴史を備えつつ近代都市として発展してきたにもかかわらず、トルコの人たちにことごとく嫌われてしまう街だった。

あの街は何もない、あの街は良くない、あの街は一番嫌いだ。なんで行くの。アンカラなんかに行く時間があったら、他の場所に時間を使った方が良い。

ツーリスト・インフォメーションのお兄さんまでそう言う始末だから、おとなしく乗り換えだけにして、そのままサフランボルの町へ向かうことにする。

定刻の6時を10分ほど過ぎてターミナルを出発したメトロ社のバスは、霧に包まれたいくつかの高層ビルや住宅街、ジャーミーに建築現場や工場などを眺めながら、進んでいく。コーヒーや水パックのサービスがありつつ9時過ぎにはサフランボルのターミナルへと到着する。そこからメトロ社のシャトルバスがサフランボルの中心、クランキョイまで連れて行ってくれる。

この街は、Safran Tatなど、砂糖やデンプンにナッツを加えてつくるロクムというお菓子の名店が並んでいる。ピスタチオ、ローストピスタチオ、ヘーゼルナッツ、サフランとピスタチオ。もっちりとしていて、ヘーゼルナッツ、サフランとピスタチオあたりはとても美味しい。

ローカルバスに乗ってサフランボルの旧市街へと坂を下っていく。バスの到着したチャルシュ広場には、丸いいくつものドームに赤い煉瓦が重ねられたジンジ・ハマムがあって、街自体が明るい。

かつてトルコでは夏の家、冬の家とが分けていて、夏の家のほうが、家や庭、共に大きかったのだという。旧市街に残っているのは冬の家だ。

そんな町の一角に、1645年に建てられた隊商宿、ジンジ・ハンがある。中庭を囲むように小部屋が並び、背丈の低い扉がとりつけられている。隊商宿は当時も尊い存在であり、かがんでお辞儀をする格好で部屋に入るよう、扉の背丈が低くおさえられているという。ラクダは1階の大広間にまとめて泊まっていたのだそう。

古い民家のカイマカムラル・エヴィは、19世紀に建てられたというわれている。白い壁に、木の屋根や窓がアクセントを加え、ニ階部分がせり出している。中には、かつて使われていた時計や馬蹄、ランプ、壺や刀や銃が展示されている。

台所や大広間、女性専用で男性が入れないサロンHaremや、男性専用のサロンで公的なスペースとして使われたSelamlik、趣向をこらした客室、家具を自在に動かせる新婦の部屋などが設けられている。大広間とハレムの間に設置された食器棚は回転するようにつくられ、女性がSelamlikにいる男性に食事を提供するのを見られないように工夫がこらされている。

フドゥルルックの丘までてくてくと歩いていくと、白い壁にオレンジ色の煉瓦の並ぶサフランボルの家々に木々の植わっているのが見渡せる。

Izzet Mehmet Pasaジャーミーはこじんまりとしたジャーミーながらも、美しい装飾がほどこされ、地元の男性が集まり、祈りを捧げている。そばにはDemirciler Carsisiという鍛冶屋職人の一画があり、ウイーンと火花を散らしながら、職人たちが火花を散らしている。

Yemeniciler Arastasiバザールは1661年からの歴史をもち、古い木造の家が残っている。ぶどうが天井からぶら下がり、その日陰に座って刺繍に励む女性たちや音楽を奏でる男性たちがいる。靴職人の男性もいて、牛とバファローの革を手で縫い合わせて靴をつくっている。

Koprulu Mehmet Pasaジャーミーにある日時計を眺めながら、ジンジ・ハマムへ戻り、サフランボルから11キロほど離れた小さな村、ヨリュク村に立ち寄ってみる。バスを降りても、そこには古い民家が並ぶばかりで誰ひとりとして歩いていない。静かにすぎる。ジャーミーには木造のミナレットがそえられて、ピンク色の花が咲いている。

道には歩く人もなく、地図もないので、てくてくと街を歩いてみる。すると一軒のカフェに少しの人が見えた。すぐ近くにはスィパーヒオウル・エヴィという古民家もあるというので立ち寄ってみる。天井や窓枠には、オレンジや緑、黄色の鮮やかな色で、草花や壺や時計、それにブドウやスイカなどの果物の絵が描かれている。装飾にはトルコの神秘主義教団、ベクターシュに影響されたものもあるという。

ヨリュクからサフランボルまでは、バスが1日に数本しかないということで、次の便をとりましょう、とスィパーヒオウル・エヴィの大将が携帯でバス会社に連絡を取り、バスにヨリュク村に立ち寄るように言う。こうしてひょっこりと古民家を見学させてもらって、再びサフランボルの街へと帰ることにする。

サフランボルの街に戻って、昼食をとりに郷土料理店、カドゥオウルに入る。サフランボルの名物料理だというクユ・ケバブをオーダーする。羊肉を地面にあいた穴でかりっと焼き上げる料理だ。ミルキーな羊肉に生のトマトとたまねぎ、それにペッパー、パンが添えられている。

150年前の家、もともと家であった建物を改装してブティックホテルに改装したというイムレン・ロクム・コナウを訪ねてみる。サフランボルはその古い街並みが世界遺産に登録されていて、外に冷房機を出すことはできない。だからうまく部屋の中におさめたつくりになっている。随所にかつての邸宅の装飾が残されている。

サフランボル付近の地域にはサフランの花が群生していたという。イムレン・ロクムの系列店で、そのサフランティーをオーダーする。味のしないその茶に、トルコに入ってから突然よく出現するようになった角砂糖を入れてかき混ぜる。

次の目的地トラブゾン行きバスのターミナルへは、クランキョイからバス会社がセルヴィスを出してくれるので、クランキョイまで、バスで向かう。      

まだ少しの時間があったので、スイーツ屋、Murat Pastanesiに入り、テル・カダイフをオーダーする。細い麺状の生地を焼き上げて、はちみつがたっぷりとかけられてる。だから喉が痛くなるほどに甘い。一つがわりあいに大きめなポーションに分けられているのに、それがよく出る。甘いものがみな大好きなのだ。

Ulusoy社のセルヴィスに乗ってターミナルへ、そこから大きなバスに乗り換えてトラブゾンに向かう。発車するとまもなく水が配られる。そしてコーヒーにチョコパンケーキ。いつだってトルコのバスは快適だ。