Top > ブログ

イランのカップルと宮殿散歩とおいしい夕飯 – Tehran, Iran

ラマダンは今日からだと聞いてきたものの、イランに入ってから、どうやら明日、21日から始まると耳にするようになった。月の様子を見て決めるそうで、国によってスタート日が違うという。

ラマダンに入ると、日の出から日没まで飲食が禁じられる。今年はラマダンが夏の暑い時期にあたり、日の出が朝の5時ころ、日没が21時ころと、日が長くてきつい年なのだとイランの人から聞いていた。昨日書店で会ったマリアンさんは、ラマダンは大変だけれど色々な思い出がより強く残るから好きなんです、と言う。

そんなマリアンさんが彼とともに、テヘランの北にあるかつてのパフラヴィー王家の夏の離宮、サアダーバード宮殿博物館に案内してくれるというので、メトロに乗って待ち合わせのGhods広場へと向かう。

二人は、彼の運転する車で広場まで迎えに来てくれた。1年ほど前に友だちを介して知り合ったという二人は、とてもお似合いだった。マリアンさんは美しく、2カ月後には大学院への入学が決まっている。彼は宇宙工学技術者として働いていて、その分野に強い米国で働きたいのだという。そして2年後のマリアンさんの卒業を待って、二人は米国に移住を計画している。お金がないのだけど、と付け加えた。

ただイラン人の米国移住はやはり難しいようだった。米国とイランは政府間で仲が悪いが、人の間は仲も良いのだとイランの人は口を揃える。米国の映画も見るし、米国への移住に憧れ、店には「オリジナル」とわざわざ書かれた本物そっくりのメイド・イン・イランのコーラもファンタも置かれている。

商店で買い求めたヨーグルトをほおばった後、そんな二人とともにサアダーバード宮殿博物館に入る。敷地内には緑の生い茂る中にいくつもの宮殿、博物館が点在している。

まずは、かつて王と王妃の夏の離宮だったメラット宮殿に入ってみる。建物内には20名のゲスト用の長テーブルが置かれたダイニングホールや待ち合い室、王のオフィスや行事のためのホール、それに音楽室といった部屋がある。室内にはチェコでしつらえられたクリスタルのシャンデリアが輝き、ドイツやフランスなどの食器や家具が並べられている。

美術館ではサファヴィー朝やガージャール朝の絵画もあり、王様の肖像画や若い女性や、ペルシア調のドレスを着る人々などが描かれている。だいたいの人が、眉毛が濃くてつながりかけている。

外に腰かけてマリアンさんが家から持ってきたナッツやキャンディーをほおばりながら、のんびりとする。マリアンさんは休日には書道と英語を学んでいると言い、俳句にもとても興味を持っていた。わたしたちは昨日買った俳句の本を取り出して読み上げる。彼が詩をつくってマリアンさんに捧げることもあるといい、イランでは恋人に詩を送るのは普通のことなのよと笑った。

マリアンさんたちが職場に戻ると言うので、別れを告げた後、緑の宮殿を回る。もともと大地主の建物であったものをシャーに売却したという宮殿。中は絢爛豪華、ぎらんと輝く儀式の間、ミラー・ホール、ダイニング・ルームにはイタリア製の革の天井に埋め込み式スピーカーが備え付けられている。米国のサクラ材を使ったテーブルや椅子、ドイツHeinrich社の食器、大理石からできた洗面所、目もさめるようなぎんぎらのシャーの寝室。     

建物を出れば、芝生では地元の人々がピクニックを楽しんでいる。

近くの食堂でチキンケバブやひき肉のケバブ、キャバーベ・クービーデに野菜のグリルとパンなどをほおばった後、近くのダーバンの丘まで歩く。エレベーターに乗って崖の上まであがり、そこからリフトに乗って、脚をぶらりと下げて揺られていく。

日本に17年住んでいたという、リフトの係員のイラン人男性に話しかけられ、日本で働いていたときに支払っていた保険料が戻ってこないのかと相談をされる。そして最近の日本の音楽を聴きたいんですとその男性は言い加えた。

リフトには地元の男性が一人で乗りに来ていたり、家族連れなどもいて、往復のリフトがすれ違うものだから向かいの乗客たちと陽気な挨拶が交わされる。

眼下には、くねりくねりとした山道に沿うようにチャイハネ屋や商店が並んでいる。頂上にもまたチャイハネ屋があり、若者たちが水たばこを楽しんでいる。射的場もあって、小さな子どもたちが親に教わりながら大きな銃を発射してみる。リフト係員さんたちの好意でリフトに乗ってニ往復した後、ファンタ・オレンジをぐびぐびとしながら、ヒッチハイクをしてTajrishの地下鉄駅に到着する。

今日はラマダン前最後の食事をしに、宿の近くのスイーツ屋で大きなシュークリームをまずほおばる。中は甘すぎないたっぷりのクリームがつまっている。

地下鉄に乗って、フェルドウスィー駅からほど近いレストラン、アヤーラーンに入る。ドーム状の天井の下、絨毯の上に座ると、食事を置くためのビニールが敷かれる。イランはアルコールが禁止されているので、近くの商店でざくろジュースを買ってきて、それに揚げたマス、マーヒー・グズルアーラーや、茄子のペースト、Halim Badmgan、それにソラマメを炊きこんだご飯、バーゲラー・ボロウをオーダーし、パンとともにいただく。最後には温かいチャイでしめる。イランでは、まず角砂糖を口に含めつつ、チャイを飲む。

店員が日本で仕事を探したいと言った。明日のラマザンからは、日の入り後の夜9時から11時までの2時間営業になるという。店を出るころには11時を過ぎていて、地下鉄の終電もなくなっていた。人気のない夜のテヘランのフェルドウスィー道をずっと歩いていく。明日からのラマザンがどうなるかと想像をしながら、今夜はお腹いっぱいにいただいた。