Top > ブログ

ラマダン初日。 – Tehran, Iran

イランではインターネットに制限がかかり、Yahoo!やfacebook、ツイッターなどは通常開くことができない。だから現地の人も普通にVPNを使っている。イラン人はVPNを駆使して他の国よりネットを使いこなしていると豪語する人すらいる。

今日からラマダンが始まる。ラマダン中は食堂が閉まるばかりではなく、仕事をしない人もいるとか、仕事をする時間を短くするとか聞いていたものの、ラマダンだからといって、町がとたんにひっそりとするのではなかった。道路には、変わらず車が走り、その合間に多くのバイクが危なっかしいくらいに疾走し、歩道にもまたバイクが走っていく。水路には、メイド・イン・イランのコカコーラのペットボトルが捨てられてぷかぷかと流れていく。

イスラム教徒のパキスタン人だって、今日は体調が優れないといって、ラマダンは明日から。今日は宿でカレーをつくってノープロブレム。

スイーツ屋だって、魚屋、八百屋に肉屋、キャンディー屋にドライフルーツ屋だって元気に営業中。それでも、食堂は、その扉をかたく閉ざしている。

一軒のスイーツ屋に入って、植物の種が浮いているハークシールのジュースを注文すると、店の奥の隙間を指差して、そこで隠れて飲んで良い、と言う。

だから、黒い服着て、黒いヒジャブを頭にかぶり、身体がぎりぎり入る隙間に身をいれて、壁に向かってジュースを飲む。

ふと後ろを振り返れば、地元の男性二人もジュースを飲みに来ていた。二人は、わたしたちが身を寄せた隙間に入ることもなく、ただ道路に背を向けるだけで、ジュースをぐびぐび飲んでいる。

大きくて派手な黄色い蛍光色の暖簾をかけた店を覗けば、中には発砲の弁当箱が山積みになっている。聞けば、白米とスープのセット。シンプルなものしかもう売られていない。

こうして宿に戻り、昨日買っておいたシュークリームの残りをぱくりとほおばり、紅茶をすする。旅人の間では、韓国の即席ラーメンである辛ラーメンが売られていた店舗の位置情報さえあっという間に貴重な情報として出回る。

ラマダンは本当に始まってしまった。

こうしてイスラム教の色濃い国ではあるものの、街角で布を広げて祈る人がほとんどいない。女性も髪を出してはいけないものの、よく見てみると、髪を半分ほど出したり、あるいは後ろの盛ったところにちょこりとスカーフをひっかけているだけだったり、髪を染めていたり、ヴィトン柄の鞄をもっていたりと、遊び心が垣間見える。男性のファッションも、半袖ぎりぎりのラインがあると聞く。でも、スーダンのようなイスラムの白服を着る男性はテヘランにほとんどいない。

夕暮れ時のバザールは、店側は日没を待つかのようにそわそわと閉店の準備を始める。細い路地では店が続々とシャッターを閉めだし、道はごみで溢れ返る。スイーツやドライフルーツ屋の前には人だかりができている。

そんな様子をよそに、バザールの一角にある、ガージャール朝の寺院マスジェデ・エマーム・ホメイニは、静けさに包まれていた。

いよいよ日も暮れようとしているころ、道のわきでチャイを飲み始める人、ではそろそろ、というかんじで店に入って飲んで良いよと言いだすジューススタンド屋もある。

ずらりとイラン国旗の並ぶゴレスターン宮殿や、定番のホメイニ師とアリ・ハメネイ師のセットの肖像画の飾られた官公庁を歩く。

ひっそりとしていてほとんど人気がない中、開店の準備をする食堂がぽつりと灯りをつけている。20時半ころ、テレビや街に日没の合図が流れる。昼間はひっそりとシャッターを閉めていた食堂が開店し、続々と人々が入っていく。

道ばたでは、地元のコミュニティの人々によってチャイと角砂糖、それに甘いお菓子、Zoolbiaが配られていた。わたしたちもあちらこちらから手招きされる。ラマダン中は毎日日没後にこれを行っているんです、と街の人は言った。「政府はどうしようもないんだけど、人々がこうしてラマダンを自主的に祝うんです。」

政府はダメだけど、ヒトはとても良い。スーダンと同じようにイランでもこう人々が口にする。ロンリープラネットにも載っているというドライバーのおじさんは、イラン政府はテロリストで、人身売買だってやってるんだよと皮肉めいていた。

ラマダンが終わる日にちも月を見て決めるからはっきりとは決まっていないです、という人もいる。

お気に入りだった食堂はラマダン中は日没後もぴしゃりとシャッターを閉めていた。ようやく20時から22時まで開けているという食堂を見つけて、中に入る。塩味のヨーグルトドリンク、ドゥーグやひき肉のキャバーベ・クービーデと焼きトマト、生たまねぎのセットをオーダーする。ラマダン中はどの食堂もお祭り騒ぎのようになるかと思っていたものの、客はわたしたち以外に一組、ひっそりとしたままだ。

従業員も隣のテーブルで食事をすれば、とんとんと電灯を消していき、もう閉店です、と言った。