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屋根の上を歩く街 – Rasht / Masule, Iran

今日はラシュトから伝統的な家々の残るマース―レまで向かうことにする。朝の町のジューススタンドに、布が張られながらも、ぐるぐると機械の動いている店があった。早速その店に入りジュースをオーダーすると、地元の男性も入ってきて、オーダーしたジュースを店の奥で隠れながらごくりごくりとやっている。

近くのパン屋でクリームのはさまったパンやパウンドケーキを買い求めると、どうぞと揚げパンやらクッキーまでごちそうになる。

ショハダー広場の近くからバスに乗ってターミナルへ行き、そこからバスを乗り換えてパンを食べながら1時間ほど、経由のフーマンという町に到着する。

フーマンは、スパイスの効いたウォルナッツのペーストをはさんで、型を押し、オーブンで焼いたコルーチェというお菓子が有名だ。街のあちらこちらに、そのぽつぽつとぐるぐる巻きの型を押したパンの看板がぶらさがっている。アツアツに焼かれたその一つをほおばりながら、マース―レまでのバスのターミナルへと歩く。

ラマダンを感じさせないほど、フーマンの町の市場は活気に溢れている。ひん曲がった茄子が売られ、大きなすいかがごろりとして、いんげんが山積みになっている。オリーブや桃やすももに魚。牛が皮をはがされぶら下がり、鶏が脚をくくられぐったりとしあひるが車にひかれそうになりながら元気に歩きまわっている。人間は鶏やあひるを脚で蹴りながら、動かしていく。

ラシュトにいるときには日本から来たのか、とまず聞かれることが多く、日本に行ったことがある、と言う人もいたが、フーマンまで来ると、中国人か、チン・チャン・チョンと言われることが増える。

洋服やら香水、布などが売られる道をてくてくと歩き、ターミナルへと到着する。すっかり暑いので、バスに乗り込んだ人々もこそこそとアイスや食べもの、飲み物を口にしている。そして、食べ終えた空き缶や袋をぽいと窓の外に捨てていく。

田んぼの中をバスは進み、そのうちに山道をあがって、海抜1050メートルのマース―レへと向かう。

到着すると、店先で人々がラマダンらしからずに飲食をしていたので、わたしたちも一軒の店に入り、絨毯の上で、アゼルバイジャンのStarというコーヒー味のノンアルコールビールを飲む。ノンアルコールビールといっても、これも材料にあるモルトの味がしなくて、コーヒー味もなかなか悪くない。

この町は、家が山の斜面にはりつくように建てられていて、家の平らな屋根がそのまま人々の歩く道になっている。屋根づたいに人々が次の家の屋根へと歩いていき、人の家の屋根の上で洗濯をし、果物を干し、他人の家の屋根の上でのんびり山を望む。歩いていれば、洗濯をしていた上の階の水がぽとりと頭の上にしたたってくる。

モスクでは人々は祈りを捧げ、商店では緑茶や焼きたてのパン、Halva、土産物の人形などが売られている。

ある一人の男性が、弟がそこに家を建てるからそれを手伝っているのだと言いながら、鍬で地面を砕いていた。その男性は、ここ2年ほどイランに来る外国人観光客は減っていると言う。「ナイスな」政府のおかげでね、と皮肉めいて笑った。

民泊できるところも少なくないようで、窓から泊まっていかないかと声をかけられることもある。そのうちの一軒にお邪魔をする。靴を脱いで階段を上がると、絨毯の広がる部屋があり、キッチンやバストイレがついている。ベランダの窓の上にはコーランが彫られた木の板がはられている。

フーマンに戻ってきてラシュト行きのバスを探す。18時を過ぎた町からは、どこからともなくぷんとご飯の炊かれる匂いがする。

帰りは人の集まらないと出発しないバスになかなか乗客が集まらないので、ヒッチハイクをして帰ることにする。ヒッチハイクを試みてわずか1分ほど、ちょうどラシュトに帰るという男性が車に乗せてくれるという。ほとんど英語を話さないその男性も、ナカタ、とか、キャプテン翼の「ワカシズマ(たぶん若島津のこと)」とかぽつぽつと口に出す。

宿では21時をまわるころ、日没を知らせる合図が流れるときには、既にスタッフたちは夕食を囲む準備ができている。外に出てみると、さきほどまでとは違って、ジュース屋が堂々とジュースを見せ、人々がそこに群がっている。行き交う人々もどこか楽しげだ。

夜は昨日と同じ食堂に入り、じゃがいもと豆を香草とともに煮込んであるバーゲラー・ガートグ、それにきゅうりやバターライス、それにヨーグルトとパンをオーダーする。オーナーらしきおじさんは、いつもでっかいそろばんを前にどでんと座っている。

街からタクシーに乗ってテヘランへ戻るためのターミナルへ向かう。タクシードライバーはしょっぱなからずっと大声で笑いっぱなしだった。なにが可笑しいのか分からないけれど、いひひひ、がはははとずっと笑っている。イランでときどきこういったおじさんに遭遇するが、これでアルコールが入っていないというのだから、大したものだ。

23時半ころ、バスはテヘランに向けて出発した。