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2012年03月

世界で最も南にある都市 – Ushuaia, Argentina

朝も変わらずにぽかぽかと暖かい宿で、パンにバターやジャムをぬり、温かいコーヒーミルクと合わせていただく。

宿から外に出てみると冷たい風が吹きつけてくる。昨晩は暗くて見えなかった雪をかぶった山々が、坂の上に見えてくる。

灰色の雲が空を覆っていて、日曜日の今日はほとんどの店が閉まり、街は静かだ。道ばたには、まる焦げに焼かれた車が停まっている。

海軍基地敷地内では元監獄の建物が公開されている。淡いオレンジ色の2階建ての建物には小さな窓が設置されている。その前には海軍病院がある。港には海軍基地があり、アルゼンチンの水色の国旗を掲げた黒い軍船が、軍服を着た男性たちを乗せて、海を走っていく。

港沿いの道、マイプー通りを歩いているうちに、空に徐々に晴れ間が見えてくる。

壁に「ウシュアイアはマルビナス諸島(英名:フォークランド諸島)のキャピタルです」と書かれた前を、タンクトップの男性や半袖の女性がゼッケンをつけて走っていく。そのそばで、ペンギンの着ぐるみをかぶった男性がガイドブックを旅行者に配っている。海には1957年に役目を終えたというセント・クリストファー号がじっと浮かんでいる。

インフォメーション・センターに行き、ブエノス・アイレスまでバスで行く方法を尋ねると、経由地点であるリオ・ガジェゴスまでバスを出している2社のうち1社は今日は休み、もう1社Taqsa社は17時半から20時半まで窓口を開けるという。

ここではレストランも20時から営業を開始するところも少なくない。寒いウシュアイアでも、人々は夜も活発に活動をするのである。

バリローチェにもあったチョコレート店Turistaがこの街でも店を出していて、日曜日というのに営業をしていたので、中に入ってチョコレートをつまんでいくことにする。

ガラスケースから、名物だという枝のチョコレートに、コニャックのチョコレート、それにピンクのチェリーをはさんだホワイトチョコレートもいただいていくことにする。

2492年まで開けないと書かれた真面目なタイムカプセルを通り、海沿いを再び歩いていく。大規模なカジノ店や、鄙びたサーカスのテントもある。

テントのチケット窓口には幾人かがチケットを求めに列をつくっている。開演時間までまだある会場は、誰も人がおらず、ただずらりとプラスチックの椅子が並べられ、ポップコーンの機械だけが明かりをつけてぶんぶんと機械音を発しているだけだ。

そこから日曜日も夜まで開いているというスーパーマーケット、La Anonimaに行って、パンやチーズ、キャラメル味のペーストDulce de lecheやラビオリなど、バスの中などでもつまめるような食材を買っていくことにする。

17時半を過ぎて、バス会社Taqsaのオフィスへ出向き、ブエノス・アイレスまでのチケットを購入する。途中、再度チリに入国し、また出国をして、リオ・ガジェゴスで乗り換えをして、向かっていくことになる。

ゆっくりと日が暮れていき、空の色が変わっていく。

子どもたちは屋内の遊技場で遊びまわり、空には飛行機が飛んでいく。名物のタラバガニ、セントージャを提供する店や焼き肉の店などが営業している。

Fratelloという店に入っているMc Bartoloという名の24時間開いているファーストフード店で、バスの発車時間である朝の5時まで過ごすことにする。

テレビではアルゼンチンサッカーチームのボカ・ジュニアーズとLanusの試合が流れている。店員の男性は、テレビからナレーターの叫び声が聞こえると、キッチンからタタタと走ってきて、テレビにくぎ付けになる。ボカがやられるとしょんぼりとして、てくてくとまたキッチンに戻っていく。

ハンバーガーとフライドポテトをオーダーする。ハンバーガーには牛肉やハム、チーズに卵、それにレタスやトマトがはさまって分厚い。夜の23時ころになっても、若い女性客や中年の男性たちが入ってくる。0時を過ぎれば、さらに店は繁盛をしていく。

外は寒く、中は暖かい街 – Ushuaia, Argentina

再びバスに乗り込んで、牛が草を食む平坦な大地を走ること20分ほど、アルゼンチン側のイミグレーション・オフィスに到着する。

行方不明者のポスターが貼られ、ここでもテレビではサッカーの試合を映し出している。荷物検査に関するポスターが貼り出され、中国製の荷物検査台が置かれているもののチリ入国のときのような荷物検査はない。バスの中で記しておいた入国書類を提出すれば「ハロー」と言われるだけである。

再びバスに乗り込む。ウシュアイアまで303kmと表示がある。

子どもたちは紙飛行機を使って遊び始め、隣の座席の男性はサングラスを頭の上にのっけて、持ってきたスピーカーでバラードを聞きながら、窓の外を眺めている。バスのテレビからはのりのりの音楽が流れている。

17時半ころ、リオ・グランデのターミナルで別のバスに乗り換え、またウシュアイアに向けて出発する。

南大西洋に面したリオ・グランデの町には工場が立ち並び、車のディーラーが軒を連ねている。車やトラックが行き交っているものの、人々の姿はあまり見かけない。

黄色く染まった短い草の生えるばかりの大地を走り、左手に海を眺めながら、やがて紅葉した木々が道ばたに植わり、雪をかぶった山々や湖が見えるようになってくる。

20時も過ぎ、すっかり日の暮れた山道を走っていくと、ふいに前方に灯りのともされたガントリークレーンや船、MAERSK社やHAMBURG SUD社のコンテナが見えてくる。

こうして最南端の都市ウシュアイアに21時前に到着する。降りた途端に冷たい風が吹きつけ、ターミナルに集まっていた宿の女性に連れられて、そのまま部屋を確保することにする。

宿の女性は3人とも、ブエノス・アイレス出身だといい、治安の良さや仕事の豊富さに魅せられてウシュアイアにやってきたという。皆、ウシュアイアを心底気に入っているふうで、ウシュアイアは素晴らしいと明るい声で繰り返す。

夕食の食材を買いに、宿から歩いてすぐの小さな商店に行く。宿も、周りの家々も、山小屋ふうの木造であたたかい。

この地方では羊の肉がよく食べられているというので、羊の肉がないかを尋ねると、冷蔵庫から一頭の羊の肉を取り出し、電動カッターで細かく切って包んでくれる。

宿に戻り、羊の肉を焼いて玉ねぎのワイン煮を添え、トマトのスープにパンをつけていただく。そして、アルゼンチンメンドーサの赤ワインCria de Cosechasと紅茶を合わせていただく。羊の肉はミルキーで、それでもたいしてくせがない。

セントラルヒーティングも熱湯のシャワーも完備する山小屋ふうの宿は、いかにもパタゴニアらしく、居心地が良い。

チリ―アルゼンチン国境情報(プンタ・アレーナス~ウシュアイア)

チリのプンタ・アレーナスからアルゼンチンのウシュアイアへのルートです。

1.プンタ・アレーナスからウシュアイアに行く国際バスは、2社あります。
①TECNI AUSTRAL社 C$25,000- AM9:15発
②PACHECO社     C$30,000- AM9:00発
※出発する曜日が違うようです。現地にて確認してください。
 バスは、各会社のオフィスの前から出発します。
2.プエルト・ナターレス行きのバスに乗車。
3.アルゼンチン側の国境で、パスポート及び入国の際に受け取ったツーリストカードを提出。
(バスは手続が終わるまで待っていてくれます。)
4.チリ側国境で、パスポート及びバスの中で受け取ったツーリストカードを提出。
5.4と同じ建物内で荷物検査
(バスの中に預けてある荷物も、一度バスから降ろしてX線に通します。
 ※チリへは、牛乳・果物等は持ち込めないので、事前に食べてしまってください。
  バスの中に置いておいても、バスの中も調べられてしまいます。)
6.プエルト・ナターレスへ到着

◎両替
 国境付近には、両替する場所はありません。
 プエルト・ナターレスに到着後、両替する必要があります。

最南端の町に向けて、海を渡る。 -Punta Arenas to the border with Argentina, Chile

今日は大陸の中では最南端にある都市プンタ・アレーナスから、フエゴ島にある世界最南端の町、ウシュアイアへ向かうことにする。

ウシュアイア行きのバスは混雑しているから予約をしていないと座席を取るのが難しいと昨晩宿のオーナーにおどされ、朝は8時過ぎに2社あるウシュアイア行きバス会社の一つ、Tecni Austral社のオフィスへ向かう。

街の坂を下がったところにあるマゼラン海峡は朝日に照らされている。ほとんどの店が朝の9時から開くので、まだシャッターを閉じた店舗がひっそりと朝を迎えているばかりだ。

ウシュアイア行きバスは、聞いていたよりもずっとがらんどうだった。ぽつりぽつりと乗客を乗せただけで、出発をする。

朝食として、砂糖の入った甘いコーヒーと、ウエハースが配られる。昨日も通った海沿いの海軍基地を過ぎ、ぐっと東のほうまで走っていく。風車がぐるぐると回っている。

12時前ふいに合図がなり、バスごと大きなフェリーに乗り上げた。30分ほど海に揺られ、フエゴ島へと渡る。フェリーにはバスが2台と乗用車が数台載っており、カウンターや乗客用の座席も完備している。強い風が吹きつける。フェリーは時折がたがたと大きな音を立てて、高い壁の向こうから海の水しぶきをかぶる。

フェリーから降りたバスは、黄色く短い草の生えた大地の広がる、舗装のされていない道をゆらりゆらりと進んでいく。昼食用にソーダ水とハムとチーズをはさんだ食パンが配られる。鞄に入れてきた青リンゴを合わせてかじる。

15時過ぎにはチリ側のイミグレーション・オフィスにたどり着く。風はあるが、日に照らされてさして寒くはない。

チリ入国時の書類を提出して、氏名をつぶやかれると、無事に出国する手続きが終了する。ここにも荷物検査に関するポスター、大統領のポスターなどが貼りだされ、テレビにはサッカーのスペインリーグが映し出されている。

いくらか小銭が余ったので、オフィスのとなりにぽつんと構えられた売店でクッキーやウエハースを買い求める。

ペンギンとアシカとカモメとイルカ – Punta Arenas / Islas Magdalena & Marta, Chile

今朝は、宿でテーブルに並べられた食パンや丸パンにバターやスモモのジャムをたっぷりとつけて、ミルクコーヒーとともにいただく。

朝の10時に出るプンタ・アレーナス行きのBus Sur社のバスに乗り込む。さすがチリのバス会社、遅れることなく定刻に発車する。グレーの雲に覆われた平坦な大地で牛や馬、羊がのんびりとしている。枯れ木が積まれている大地、高い緑の木々が生えた大地、あるいは幹にまで黄緑色の草を生やした木々を眺めながら、バスは更に南へと進んでいく。

車内では、日本語で聖闘士星矢のナレーションが流れている。そして赤と白の風力発電がくるくると回っている。

空港を通り、13時15分ころにはマゼラン海峡に面したプンタ・アレーナスに到着する。夏の短いこの町は、人々が歩いているのにもかかわらず、ひっそりともの静かで、どこかさみしげに見える。聞いたところによると2週間前に大きな洪水があり、町の中心が破壊されて、いまだ閉まっている店も多いというから、それが理由の一つなのかもしれない。ところどころ工事中の場所がある。

アルマス広場にあったインフォメーション・センターも、若者の放火によってパソコンや書類が燃やされ、別の建物に最近移転をしたという。

こうして、グレーがかったこの町は、かつてマゼラン海峡が発見されて繁栄したものの、パナマ運河の開通に伴ってまた静かな町に戻ったのだそう。プンタ・アレーナスが州都であるマガジャネス州は、チリから独立したいと願う人々も一部にいるとも聞く。

それでも、町の中心のアルマス広場の中心にはマゼラン像が立ち、その足元にいる先住民族のアラカルフ族の足は「無事に航海を終えられる=幸福になる」と言い伝えられ、数多くの人々が集まり、次々と既に色の変わった足の先を触っていく。

この町の近くには、野生のペンギンやアシカなどが数多く住んでいるMagdalena島とMarta島があるというので、今日船を出しているというSolo Expedicionesのオフィスへ行き、島へと向かうことにする。

バンに乗り込み、マゼラン海峡の港へと向かう。30分走ると、海軍基地や物流の港が見えてくる。潮の香りのする海岸には、チリの国旗を掲げた錆びれたボートが置かれている。

小さなボートに乗り込んで、黄色のライフジャケットを羽織る。クラッカーをかじりながら、勢いよく揺れるボートが進むこと40分ほど、ペンギンが住むMagdalena島に到着する。今の時期、既に子どものペンギンは北のほうへと移動していて、ここに残っているのは大人のペンギンだけだというが、それでもおよそ100,000頭のペンギンが島中に生活をしている。島はぴぴぴ、ぐわぐわとペンギンの鳴く声で包まれている。

あちらこちらに穴を掘り、あるペンギンは羽をばたつかせ、あるペンギンは対で寄り添いあい、あるペンギンは喉を大きく震わせて、口を空高く向けて、くわくわくわと鳴く。

てくてくと歩きまわるペンギンもいれば、寝そべっているペンギンも、嘴でつつきあうペンギンもいる。
地面にはトウゾクカモメが食い散らかした鳥の死骸が残されている。

島の頂上にはペンギンに関する小さな博物館があり、十字架と、現大統領の額縁が併せて飾られている。

そこから近くのMarta島へ向かう間に、いるかが海面に次々と飛び跳ねる。時にボートの下をくぐり、深い海の上につるりとした黒い背中をのぞかせる。

Marta島には上陸することはできない。そこにはペンギンと似た姿をしたウミウがぎっしりと立っており、島の反対側の岸には、ぐあぐあと無数のオタリア(アシカ科)が鳴き、その上をまた果てしない数のかもめがぴーぴーと空を舞っている。島中から鳴き声が響き渡り、かもめの影が島に黒い点を作りだしている。

こうして、人間の降りることのできない島は、数えきれない野生の動物の鳴き声で包まれ、独自の世界を作っていた。

ガタンガタンとスピードを上げて進むボートは19時過ぎにプンタ・アレーナスに戻ってくる。日がとっぷりと暮れた町は、数店舗のレストランや商店、バー、ビリヤード場や女性のいるナイトクラブ以外は閉まり、ひっそりとしている。

商店を2軒立ち寄って夕食の食材を買う。1軒目は開業30年目という商店で、さして愛想のない初老の女性が、それでもクリスマスのイルミネーションがほどこされた店内で食材を売っている。もう1軒は男性二人が店頭にたち、飴をくれると差し出された。

宿に戻って、ツナとじゃがいもとたまねぎを炒め、こんがりと焼いたパンと紅茶と合わせていただくことにする。身体が芯から冷える夜だ。